人型の妖怪一覧|鬼・鬼女・小人・現代の怪人までを見わたす
日本の妖怪でいちばん多いのは、人のかたちをしたものです。
獣でも、道具でも、火でもない。人に似ていて、人ではない。
この図鑑に収めているうちでも、人型がもっとも大きな束になります。人に似ているからこそ怖いという、単純だが強い理由がそこにあります。
このページでは、収録している人型の妖怪を横に並べて見わたします。
人型の妖怪とは
人の姿、または人に近い姿をとる妖怪です。
中身は一つではありません。大きく分けると次の四つになります。
① 鬼 ─ 角と牙を持ち、人に害をなす
② 人だったもの ─ 恨みや嫉妬で人が変わった
③ 人ではないもの ─ 小人・巨人・山に住むもの
④ 現代の怪人 ─ 昭和以降に噂として生まれた
ひとくくりにすると見誤ります。 鬼と口裂け女は、どちらも人の姿ですが、生まれ方も語られ方もまったく違います。前者は千年語られ、後者は数年で全国へ広がりました。
鬼|人型でもっとも数が多い 14体
鬼は、人型のなかで最大の一群です。
意外に思われますが、
もともとの鬼に、角はありません。
平安時代の辞書『和名類聚抄』は、鬼を「物に隠れて姿を現そうとしないもの」と説明しています。「おに」は隠(おん)から転じたとする説が古くからあり、本来は目に見えない何かでした。
角と虎の皮という姿が固まったのは、鬼が北東の丑寅(うしとら)の方角から来るとされたためと説明されます。丑は牛の角、寅は虎の皮にあたります。北東を鬼門と呼ぶのも同じ考え方です。
もうひとつの特徴は、名を持つ鬼が個別の物語を負うことです。酒呑童子・茨木童子・温羅・大嶽丸のように、一体ごとに討たれる話がついています。討った側の名も残ります。源頼光、渡辺綱、坂上田村麻呂、吉備津彦命。
鬼の物語は、たいてい討伐の物語である。
討たれる側が朝廷に従わなかった人々を指す、という読み方も繰り返し示されてきました。温羅と両面宿儺は、その代表として挙げられます。
鬼
ONI 人型の妖怪 京都府 よく知られた妖怪酒呑童子
SHUTENDOJI 人型の妖怪 京都府茨木童子
IBARAKIDOJI 人型の妖怪 京都府温羅
URA 人型の妖怪 岡山県大嶽丸
OTAKEMARU 人型の妖怪 三重県悪路王
AKUROO 人型の妖怪 岩手県紅葉
MOMIJI 人型の妖怪 長野県黒塚
KUROZUKA 人型の妖怪 福島県前鬼・後鬼
ZENKIGOKI 人型の妖怪 奈良県 よく知られた妖怪両面宿儺
RYOMENSUKUNA 人型の妖怪 岐阜県 よく知られた妖怪天邪鬼
AMANOJAKU 人型の妖怪 全国に伝わるもの奪衣婆
DATSUEBA 人型の妖怪 東京都百々目鬼
DODOMEKI 人型の妖怪 全国に伝わるもの一本だたら
IPPONDATARA 人型の妖怪 和歌山県人だったもの|恨みと嫉妬が姿を変える 12体
人型のもう一つの束は、もとは人だったものです。
般若は、嫉妬と恨みによって鬼になった女を表す能面です。上半分は悲しみ、下半分は怒りを表すと説明されます。
恐ろしい顔の上半分が、泣いている。
橋姫は橋を守る女であり、同時に嫉妬から鬼になった女でもあります。ひとつの名に、守る側と祟る側の両方が入っています。
二口女は後頭部にもう一つの口を持つ女で、継子を餓死させた報いとされます。産女は難産で死んだ女の霊です。
この一群には、女の姿をとるものが目立ちます。理由として、家の外へ出にくかった立場の者の不満が、こうした形で語られたという見方が示されてきました。ただしそう決めつけられるほど資料はそろっていません。
山姥は、旅人を食う恐ろしい姿と、富をもたらす姿の両方で語られます。長壁姫は姫路城の天守に隠れ住み、年に一度だけ城主と会うとされます。
山姥
YAMAUBA 人型の妖怪 神奈川県 よく知られた妖怪般若
HANNYA 人型の妖怪 全国に伝わるもの橋姫
HASHIHIME 人型の妖怪 京都府二口女
FUTAKUCHIONNA 人型の妖怪 全国に伝わるもの よく知られた妖怪ろくろ首
ROKUROKUBI 人型の妖怪 全国に伝わるもの産女
UBUME 人型の妖怪 幽霊と霊 全国に伝わるもの長壁姫
OSAKABEHIME 人型の妖怪 兵庫県鈴鹿御前
SUZUKAGOZEN 人型の妖怪 三重県絡新婦
JOROGUMO 人型の妖怪 獣の妖怪 静岡県 よく知られた妖怪雪女
YUKIONNA 人型の妖怪 水の妖怪 全国に伝わるもの よく知られた妖怪玉藻前
TAMAMONOMAE 人型の妖怪 狐と狸 栃木県 よく知られた妖怪葛の葉
KUZUNOHA 人型の妖怪 狐と狸 大阪府人ではないもの|小人・巨人・山に住むもの 8体
はじめから人ではない人型もいます。
コロポックルは蕗の葉の下に住むという小人で、アイヌの伝えに語られます。明治期には、この小人を日本の先住者と結びつける論争まで起きました。キジムナーは沖縄のガジュマルの古木に住む赤い姿のもので、仲良くなると漁を助けてくれます。
反対にダイダラボッチは山を作り湖を掘った巨人で、
足跡が沼になったと語る土地が、全国にある。
天狗は赤い顔と高い鼻を持つ山のもので、修験道と深く結びつきました。
なまはげは秋田県男鹿の来訪神です。大晦日に家々を回り、怠け者を戒めます。妖怪と神の境目が、ここではほとんど消えています。
ぬらりひょんは、伝えがほとんど残っていない珍しい例です。
絵のほうが先にあり、話は後から作られた。
顔と体が変わったもの|驚かせるだけの妖怪 11体
人型には、何もしない妖怪という一群があります。
のっぺらぼうは顔に目も鼻も口もありませんが、驚かせる以上のことはほとんどしません。一つ目小僧も同じです。垢嘗は風呂桶の垢を嘗めるだけ、豆腐小僧は盆に豆腐を載せて立っているだけです。
危害を加えない妖怪が、これだけの数いる。
怖がらせるためではなく、笑うために作られたものが混じっています。豆腐小僧は江戸の草双紙で生まれたもので、はじめから読み物の登場人物でした。
べとべとさんは夜道で後をつけてくる足音で、「お先にお越し」と唱えると離れます。塗壁は行く手をふさぐ見えない壁です。どちらも、夜道で起きるちょっとした異変に名を与えたものと読めます。
覚だけは性格が違い、人の心を読んで思ったことを次々に言い当てます。
のっぺらぼう
NOPPERABO 人型の妖怪 全国に伝わるものぬっぺふほふ
NUPPEPPO 人型の妖怪 全国に伝わるもの よく知られた妖怪一つ目小僧
HITOTSUMEKOZO 人型の妖怪 全国に伝わるもの覚
SATORI 人型の妖怪 獣の妖怪 全国に伝わるもの垢嘗
AKANAME 人型の妖怪 全国に伝わるもの豆腐小僧
TOFUKOZO 人型の妖怪 全国に伝わるもの よく知られた妖怪子泣き爺
KONAKIJIJI 人型の妖怪 徳島県 よく知られた妖怪塗壁
NURIKABE 人型の妖怪 全国に伝わるもの枕返し
MAKURAGAESHI 人型の妖怪 幽霊と霊 全国に伝わるものべとべとさん
BETOBETOSAN 人型の妖怪 全国に伝わるもの釣瓶落とし
TSURUBEOTOSHI 人型の妖怪 器物と草木 全国に伝わるもの現代の怪人|昭和と平成に生まれた人型 4体
人型の妖怪を種類ごとに並べる
同じ人型でも、生まれ方が違います。
| 種類 | 代表 | 生まれ方 | いつから |
|---|---|---|---|
| 鬼 | 酒呑童子・温羅 | 討たれる側として語られた | 平安時代より前 |
| 人だったもの | 般若・橋姫・産女 | 恨み・嫉妬・難産から変わった | 中世 |
| 人でないもの | コロポックル・ダイダラボッチ | 土地のかたちや暮らしを説く | 土地ごと。不明 |
| 驚かすだけ | のっぺらぼう・豆腐小僧 | 絵と読み物から生まれたものを含む | 江戸時代 |
| 現代の怪人 | 口裂け女・八尺様 | 噂として広まった | 昭和以降。年がわかる |
並べると、新しいものほど出どころがはっきりするとわかります。
古い妖怪ほど、誰が言い出したのかわからない。
これは当たり前のようで、読むときに効いてきます。酒呑童子の話に「本当にあったこと」を探すのは筋が違いますが、口裂け女ならいつ、どこから広まったかを追えるからです。
もうひとつ。江戸時代に絵が先にできた妖怪がまとまって現れます。鳥山石燕の画集がその中心で、ぬらりひょんのように絵だけがあって話がないものが残りました。
姿が先で、物語が後。
現代の人型は逆で、話が先にあり、姿は語る人ごとに違います。
人型の妖怪についてよくある質問
人型の妖怪にはどんなものがいますか。
鬼、山姥や般若などの鬼女、コロポックルやダイダラボッチのような小人と巨人、のっぺらぼうのように驚かせるだけのもの、口裂け女のような現代の怪人まで含まれます。日本の妖怪のなかでもっとも数が多い姿です。
鬼にはなぜ角があるのですか。
鬼が北東の丑寅の方角から来るとされたためと説明されます。丑は牛の角、寅は虎の皮にあたります。ただし平安時代の『和名類聚抄』が説く本来の鬼は姿の見えないもので、角のある大男ではありませんでした。
人が妖怪になることはあるのですか。
語りのうえでは多くあります。般若は嫉妬と恨みで鬼になった女、二口女は継子を餓死させた報い、産女は難産で死んだ女の霊です。もとは人だったという筋立ては、人型に特に多く見られます。
危害を加えない妖怪もいるのですか。
います。のっぺらぼう、一つ目小僧、垢嘗、豆腐小僧は驚かせる以上のことをほとんどしません。豆腐小僧のように、はじめから読み物の登場人物として作られたものもあります。
現代にも新しい妖怪は生まれていますか。
生まれています。口裂け女は1979年、赤マントは昭和初期、八尺様と小さいおじさんは2000年代に広まりました。古い妖怪と違い、いつどこから広まったかを追えるのが特徴です。
人型の妖怪でいちばん有名なのは何ですか。
鬼です。名を持つ鬼としては、大江山の酒呑童子がもっとも大きな物語を残しています。源頼光の一行に酒で酔わされ、斬られた首が宙を飛んで兜に食らいついたと語られます。
人型の妖怪の一覧(収録しているすべての妖怪) 218体
本文で取り上げなかったものも含めて、この種別に属する妖怪をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。