黒い坊主姿で現れ、寝ている女の息を吸うという。

月岡芳年 「郵便報知新聞 黒坊主」 1875年 / パブリックドメイン 出典
黒坊主とはどんな妖怪か
黒坊主は、明治時代の話として伝わる妖怪です。
黒い坊主のような姿をしており、寝ている女性のもとに現れて息を吸うといいます。
もとは、新聞記事です。
東京の芝のある家に、夜な夜な黒い坊主姿のものが現れ、寝ている妻の顔を舐めたといいます。
そして、妻は病に伏せりました。
夫が待ち構えても、正体はつかめませんでした。
その姿は煙のようで、掴もうとしても手ごたえがないといいます。
煙です。
そして、臭いがしたとも伝わります。
黒坊主の漢字表記と読み方
読みは「くろぼうず」です。
黒い坊主。 姿がそのまま名になっています。
「坊主」は、江戸から明治の妖怪によくつく呼び方です。
海坊主、高坊主、野寺坊、黒坊主。 どれも、丸くて黒い影を指します。
そして、この妖怪には土地の混乱があります。
藤沢衛彦の著書の解説文から、東北地方の妖怪とされることがありますが、これも誤解と指摘されています。
もとの記事は、東京の芝の話です。
熊野(現・和歌山県)にも、別の黒坊主が伝わります。
背丈が3倍に伸びるといい、高坊主の一種とされます。
黒坊主(くろぼうず)
もっとも一般的な表記。
黒坊(くろぼう)
短く言う形。
クロボウズ(くろぼうず)
カタカナで書くこともある。
黒坊主の姿と特徴
黒坊主の姿は、次のように伝わります。
色 … 黒い。
形 … 坊主のよう。
手ごたえ … 煙のようで、掴もうとしても手ごたえがない。
臭い … 臭いがした。
掴めません。
熊野の黒坊主は、別です。
背丈が3倍に伸びるといい、高坊主の一種とされます。
高坊主は、見上げれば伸び、見下ろせば小さくなる妖怪です。
そして、明治の黒坊主は、寝ている間に来ます。
起きているときには現れません。
黒坊主の伝承物語
芝の家の話
黒坊主のもとになった話は、明治時代の新聞記事です。
東京の芝のある家に、夜な夜な黒い坊主姿のものが現れました。
そして、寝ている妻の顔を舐めました。
妻は、病に伏せりました。
夫は、待ち構えました。
しかし、その姿は煙のようで、掴もうとしても手ごたえがありませんでした。
臭いだけがしました。
祈祷師を呼んでも、効きませんでした。
結局、家を引き払って引っ越すことで、怪異は止んだといいます。
場所を変えて、終わりました。
この形は、明治の怪談によくあります。
家に何かが出て、祈祷が効かず、引っ越して終わる。
東北ではなく東京
黒坊主には、土地の誤解があります。
藤沢衛彦の著書の解説文から、東北地方の妖怪とされることがあります。
しかし、これは誤解と指摘されています。
もとの新聞記事は、東京の芝の話です。
似た誤りは、他にもあります。
高知のタテクリカエシは、書籍『民間伝承』に新潟の人物が文書を寄稿したため、新潟の妖怪とされることが多くなりました。
一目入道は、『大語園』が読みを「いちもくにゅうどう」として50音配列の「い」に入れたため、読みの錯誤が広がりました。
本が一冊間違えると、その後の本がすべて引き継ぎます。
妖怪の資料は、孫引きが重なっています。
もとの記事まで戻ると、話が変わることがあります。
熊野の黒坊主
熊野(現・和歌山県)には、別の黒坊主が伝わります。
背丈が3倍に伸びるといい、高坊主の一種とされます。
明治の黒坊主とは、別のものです。
高坊主は、主に四国や近畿地方に伝わる妖怪です。
路上に現われて人を脅かし、見下ろせば小さくなるといいます。
熊野の黒坊主も、その仲間です。
そして、正体はタヌキとされることが多いものです。
高坊主の正体は主にタヌキが化けたものとされ、徳島市新浜本町の高坊主狸は現在高坊主大明神として祀られています。
同じ「黒坊主」という名で、二つの別の妖怪が伝わっています。
東京の煙のようなものと、熊野の伸びるもの。
黒坊主の伝承地域
黒坊主に関わる場所としては、次の記録があります。
東京都港区・芝 … 明治時代の新聞記事にある話で、ある家に夜な夜な黒い坊主姿のものが現れ、寝ている妻の顔を舐めたとされます。 家を引き払って引っ越すことで怪異は止んだといいます。
和歌山県・熊野 … 背丈が3倍に伸びる黒坊主が伝わり、高坊主の一種とされます。
藤沢衛彦の著書の解説文から東北地方の妖怪とされることがありますが、これは誤解と指摘されています。
いずれも家や路上の話であり、碑や祠は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
黒坊主の正体と考えられているもの
黒坊主については、次のように整理できます。
一つめは、明治の新聞記事です。東京の芝のある家に、夜な夜な黒い坊主姿のものが現れ、寝ている妻の顔を舐めたといいます。妻は病に伏せりました。
二つめは、煙です。夫が待ち構えても、その姿は煙のようで、掴もうとしても手ごたえがないといい、臭いだけがしました。
三つめは、土地の誤解です。藤沢衛彦の著書の解説文から東北地方の妖怪とされることがありますが、これは誤解と指摘されています。 もとの記事は東京の話です。
四つめは、熊野の高坊主です。熊野(現・和歌山県)の黒坊主は背丈が3倍に伸びるといい、高坊主の一種とされます。 明治の黒坊主とは別のものです。
黒坊主が何であったかは、わかっていません。 ただ、引っ越したら止んだという結末は、その家に起きた出来事だったことを示しています。
黒坊主をめぐる妖怪のつながり
黒坊主が登場する作品
黒坊主は、明治の新聞から生まれた妖怪です。
東京の芝の家に出た話が記事になり、後の本に引き継がれました。 その過程で、土地が東北に移り変わりました。
資料は明治の新聞と、後年の妖怪研究に分かれます。
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黒坊主についてよくある質問
黒坊主は何をするのですか。
寝ている女性のもとに現れて息を吸うといいます。明治の新聞記事では、夜な夜な黒い坊主姿のものが現れ、寝ている妻の顔を舐め、妻は病に伏せったとされます。
捕まえられるのですか。
捕まえられません。 その姿は煙のようで、掴もうとしても手ごたえがないといいます。臭いだけがしたと伝わります。
東北の妖怪ではないのですか。
東京の話です。 藤沢衛彦の著書の解説文から東北地方の妖怪とされることがありますが、これは誤解と指摘されています。 もとの新聞記事は東京の芝の話です。
熊野の黒坊主とは何ですか。
背丈が3倍に伸びるといい、高坊主の一種とされます。 明治の黒坊主とは別のもので、高坊主の正体は主にタヌキが化けたものとされます。
黒坊主と併せて覚えたい言葉・用語
芝(しば)
東京都港区の地名。明治の黒坊主の話が伝わる。
藤沢衛彦(ふじさわもりひこ)
伝説研究者。その解説文が黒坊主の土地の誤解のもとになった。
熊野(くまの)
現在の和歌山県南部。背丈が伸びる黒坊主が伝わる。