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三重県

トモカヅキとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

トモカヅキ  / トモカヅキ

水の妖怪 各地の伝説

三重県の海に現れ、潜っている海女と瓜二つの姿で現れるという妖怪。

トモカヅキの姿を描いた図

Saigen Jiro 「横山展望台から望む英虞湾(三重県志摩市)」 2019年 / CC0 出典

トモカヅキとはどんな妖怪か

トモカヅキは、海の中のもう一人の自分です。

三重県鳥羽市志摩市に伝わる海の妖怪です。

名は「同じく潜る者」の意味です。「かづく」は潜ること、潜って魚介類を採ることを意味する古い言葉であり、この土地の言葉でもあります。

トモカヅキは、海に潜る者にそっくりに化けるといいます。

つまり、海には自分ひとりだけのはずなのに、自分とそっくりの身なりの人がそこにいる、ということになります。

遭遇するのは曇りの日といわれます。ほかの海女と違って鉢巻の尻尾が長く伸びているので、トモカヅキだと分かるともいいます。

人を暗い場所へ誘ったり、アワビを差し出したりします。この誘いに乗ってしまうと、命が奪われると恐れられました。

トモカヅキの漢字表記と読み方

読みは「ともかづき」です。

名は二つの言葉からできています。

トモ」は「共」、つまり同じという意味。
カヅキ」は「潜き」、潜ることです。

つまり「同じく潜る者」が、そのまま名前になっています。

「かづく」は潜ること、潜って魚介類を採ることを意味する古語であり、この土地の言葉でもあります。

海女の仕事そのものを表す言葉が、そのまま妖怪の名の一部になっています。

海に潜る人々の暮らしの中から生まれた名であることが、この一語から分かります。

福井県坂井郡雄島村安島、現在の坂井市の海では、よく似た妖怪を「海海女」と呼びます。

トモカヅキ(ともかづき)

もっとも一般的な書き方。

ともかずき(ともかずき)

仮名遣いを改めた書き方。

海海女(うみあま)

福井県で伝わる、よく似た妖怪の呼び名。

トモカヅキの姿と特徴

トモカヅキの姿は、遭った本人とそっくりです。

姿 … 海に潜っている当人と同じ身なり。
見分け方 … 鉢巻の尻尾が長く伸びている。
現れる日 … 曇りの日。
する事 … 暗い場所へ誘う。アワビを差し出す。
危うさ … 誘いに乗ると命が奪われる。

自分とそっくりであることが、この妖怪の恐ろしさのすべてです。

海の中は視界が限られ、音も届きにくい場所です。そこに自分と同じ姿のものが浮かんでいる。

見分ける手がかりは、鉢巻の尻尾がふつうより長いという、たったそれだけです。

なお、トモカヅキがアワビを差し出したとき、どうしても受け取りたい場合の作法が伝わっています。

後ろ手にして受け取ればよいというものです。

ただし、その言い伝えを聞いていた海女が実際にそうしたところ、蚊帳のようなものを被せられて苦しみ出し、無我夢中で持っていた鑿でそれを破って助かったという話もあります。

トモカヅキの伝承物語

  1. 海の中に、もう一人の自分がいる
  2. 誘いに乗ると命を奪われる
  3. セーマンドーマンという魔除け
  4. 二人の名が魔除けになった経緯
  5. 亡霊なのか、体の変調なのか
  6. 二つの見方は同じ現象を指す

海の中に、もう一人の自分がいる

トモカヅキに遭うのは、海女が一人で潜っているときです。

海には自分ひとりだけのはずでした。ところが、目の前に自分とそっくりの身なりの人がいます。

遭遇するのは曇天の日といわれます。日の光が差し込まない、暗い海の中です。

見分ける手がかりは一つだけあります。

ほかの海女と違って、鉢巻の尻尾が長く伸びているのでトモカヅキだと分かる、というものです。

トモカヅキは、人を暗い場所へと誘ったり、アワビを差し出したりします。

誘いに乗ると命を奪われる

この誘いに乗ってしまうと、命が奪われると恐れられました。

暗い場所へ誘われれば、深みへ引き込まれます。アワビを受け取ろうとすれば、手が塞がります。

海女にとって、どちらも命に関わる事態です。

なお、どうしてもアワビを手に入れたい場合には作法がありました。

後ろ手にして受け取ればよいというものです。相手に体の正面を向けない、という意味になります。

ただし、その通りにしたのに助からなかった話も伝わっています。

セーマンドーマンという魔除け

海女たちは、この怪異から逃れるために魔除けを身につけました。

セーマンドーマン、あるいはドーマンセーマンと呼ばれるものです。

セーマン … 五芒星、つまり一筆書きの星形。
ドーマン … 格子の模様。

この二つの模様を、服や手ぬぐいに描きます。

陰陽道で知られる安倍晴明や蘆屋道満に由来するともいわれますが、トモカヅキとの関連性はよくわかっていません。

「セーマン」が晴明、「ドーマン」が道満に対応するという読み方です。

二人の名が魔除けになった経緯

しかし、なぜ海女がこの二人の名を魔除けに用いるようになったのかは、はっきりしていません。

五芒星は一筆書きで元の点に戻る形です。格子は縦横に交わる線です。どちらも「戻ってくる」「通さない」という意味に読むことができますが、確かなことは分かっていません。

この魔除けは、いまも鳥羽・志摩の海女文化を代表するものとして知られています。

妖怪への恐れが、目に見える形で残っている例といえます。

亡霊なのか、体の変調なのか

トモカヅキの正体については、二つの見方があります。

一つは、海女の亡霊とする見方です。一般にはこう説明されます。海で命を落とした海女が、生きている海女の前に、その人と同じ姿で現れるというものです。

もう一つは、体の変調とする見方です。

実際には、過酷な長時間の海中作業を原因とする譫妄症状ではないかとも言われています。

譫妄とは、意識が混濁して幻覚などが起きる状態のことです。

素潜りの漁は、息を止めて何度も深く潜る作業です。長時間続ければ体に大きな負担がかかります。

そうしたなかで見えるものが、トモカヅキだったのではないか、という説明です。

二つの見方は同じ現象を指す

この二つの見方は、どちらも同じ現象を指しています。

そして、恐れの大きさは記録に残っています。

トモカヅキに遭った海女は、それ以降、恐怖のあまりほとんど海に潜る仕事ができなくなったといいます。

それどころか、その話を聞いただけの近隣の村の海女ですら、日待ちといって二、三日は海に潜らなくなるほど、海女たちは大変恐れていたそうです。

静岡県賀茂郡南崎村、現在の南伊豆町でも同じような怪異があったといい、ある海女が似た現象に遭って船上の夫に話したところ、「バカなことを言うな」と否定されたうえにまた潜らされ、そのまま絶命したという話もあります。

トモカヅキの伝承地域

トモカヅキの伝承地は、三重県鳥羽市と志摩市の海です。

古くから海女による素潜りの漁が盛んな地域で、いまも仕事が続いています。魔除けのセーマンドーマンもこの土地のものです。

特定の岩場や湾に限られた話ではなく、海女が一人で潜る場所ならどこでも起こりうるものとして語られてきました。

よく似た話は、福井県坂井市の海に「海海女」として、静岡県南伊豆町にも伝わります。

祀られている場所は確かめられませんでした。

鳥羽・志摩の海(とば・しまのうみ)

トモカヅキが現れる海

地図で開く

鳥羽・志摩の海の所在地:三重県鳥羽市・志摩市

トモカヅキが伝わる海です。

古くから海女による素潜りの漁が盛んな地域で、いまも多くの海女が仕事を続けています。

海女たちが身につける魔除け「セーマンドーマン」も、この土地のものです。

トモカヅキに遭うのは曇りの日、一人で潜っているときとされます。

伝承は志摩の海女の一帯に広がります。

トモカヅキの正体と考えられているもの

トモカヅキの正体については、次のように考えられています。

海女の亡霊とする見方が、一般に行われているものです。海で命を落とした海女が、生きている海女の前に同じ姿で現れるとされます。

体の変調とする見方もあります。過酷な長時間の海中作業を原因とする譫妄症状ではないかというものです。 素潜りの漁は体に大きな負担をかける作業です。

同じものが二人いることへの恐れとする見方も成り立ちます。自分と同じ姿のものに出会うという話は、海の外にもあります。

海の危険を伝える話とする見方も重要です。暗い場所へ誘われる、アワビに気を取られる。どちらも海女にとって命に関わる事態です。一人で潜るときに起きるとされる点も、この読みを支えます。

福井の海海女との違いも参考になります。あちらは海女が潜ると妖怪は上がり、海女が上がると妖怪は潜るため、姿をはっきり捉えられません。また大勢で作業しているときには一切現れず、単独作業のときだけ現れるといいます。

恐れの大きさは記録に残っています。 遭った海女は仕事ができなくなり、話を聞いただけの近隣の海女も二、三日は潜らなくなったといいます。

トモカヅキをめぐる妖怪のつながり

トモカヅキが登場する作品

トモカヅキは、海女の仕事と切り離せない妖怪です。

魔除けのセーマンドーマンは、いまも鳥羽・志摩の海女文化を代表するものとして知られています。

妖怪への恐れが、目に見える形で現在まで残っている珍しい例です。

作品では、自分と同じ姿のものに出会うという場面として描かれます。姿かたちに特徴がないぶん、状況そのものが恐ろしさを担います。

トモカヅキが登場する書物

綜合日本民俗語彙

民俗学研究所が編み、柳田國男が監修した語彙集。トモカヅキを収めます。

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日本怪談集 妖怪篇

今野圓輔の編。海の怪異としてこの話を扱っています。

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現代民話考

松谷みよ子の著。海女たちの語りを収めています。

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トモカヅキが登場するそのほか

セーマンドーマン

海女が身につける魔除け。五芒星と格子の模様からなります。

トモカヅキが登場する漫画・アニメ

海の怪異を扱う各種の作品

自分とそっくりのものに出会うという形で描かれます。

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トモカヅキについてよくある質問

トモカヅキとは何ですか。

三重県鳥羽市や志摩市に伝わる海の妖怪です。海に潜る者にそっくりに化けるとされ、海には自分ひとりだけのはずなのに、自分とそっくりの身なりの人がいる、という形で現れます。

どうやって見分けるのですか。

ほかの海女と違って、鉢巻の尻尾が長く伸びているのでトモカヅキだと分かるといいます。遭遇するのは曇りの日とされます。

何をしてくるのですか。

人を暗い場所へと誘ったり、アワビを差し出したりします。この誘いに乗ってしまうと命が奪われると恐れられました。どうしても受け取りたい場合は後ろ手にしてもらえばよいとされます。

魔除けはありますか。

あります。五芒星と格子の模様を描いた「セーマンドーマン」を、服や手ぬぐいに描いて身につけます。安倍晴明や蘆屋道満に由来するともいわれますが、トモカヅキとの関連性はよく分かっていません。

正体は何だと考えられていますか。

一般には海女の亡霊とされますが、過酷な長時間の海中作業を原因とする譫妄症状ではないかとも言われています。

トモカヅキと併せて覚えたい言葉・用語

かづく(かづく)

潜ること、潜って魚介類を採ることを意味する古語であり方言。

セーマンドーマン(せーまんどーまん)

五芒星と格子の模様からなる海女の魔除け。

日待ち(ひまち)

海に出るのを控えること。話を聞いただけでも二、三日は潜らなかった。

海海女(うみあま)

福井県坂井市の海に伝わる、トモカヅキによく似た妖怪。