人頭亀身の海の魚。捕らえると手を合わせて命乞いをする。

王圻・王思義 「三才図会 和尚魚」 1609年 / パブリックドメイン 出典
和尚魚とはどんな妖怪か
和尚魚は、東洋の海の妖怪です。
人頭亀身で紅赤色とされます。
中国の書物が出どころです。
明代の類書『三才図会』(1609年刊)の記載によれば、東洋の大海の生物とされます。
鱉(スッポン)のようで、紅赤色をしており、潮に乗ってやってくるといいます。
日本の本が、それを引きました。
貝原益軒『大和本草』(1709年)もこれを引用しており、日本で言う坊主魚(ぼうずうお)と同じとしています。
ただし後者の性質や味などは未詳だといいます。
和尚魚の漢字表記と読み方
読みは「おしょううお」です。
『和漢三才図会』では「おしょういお」と読ませています。
「和尚」は、僧のことです。
頭に毛がないから、この名です。
頭部は名前通り頭髪がない坊主頭の人間とあります。
そして、日本の妖怪と結びつけられました。
寺島良安『和漢三才図会』(1712年)は、俗に言う「海坊主」と同定しています。
貝原益軒『大和本草』は、日本で言う坊主魚(ぼうずうお)と同じとしています。
「坊主」の名で、三つが並びます。
和尚魚(おしょううお)
もっとも一般的な表記。
和尚魚(おしょういお)
『和漢三才図会』での読み。
坊主魚(ぼうずうお)
『大和本草』が同じものとする日本の呼び名。
亀入道(かめにゅうどう)
若狭湾に出るという同型のもの。
和尚魚の姿と特徴
和尚魚の姿は、人の頭と亀の体です。
人頭亀身で紅赤色とされます。
鱉(スッポン)のようで、紅赤色をしており、潮に乗ってやってくるといいます。
大きさも書かれています。
頭部は名前通り頭髪がない坊主頭の人間で、体はスッポンに似ており、大ぶりのもので体長は5〜6尺(約1.5〜1.8メートル)に達するといいます。
人ほどの大きさです。
そして、西の海にいます。
『和漢三才図会』に拠れば、西海にいる海坊主とされます。
和尚魚の伝承物語
手を合わせて涙を流す
和尚魚には、逃がし方が細かく書かれています。
漁師がこれを見るのは不祥(不吉)で、漁𦊟(網)が役に立たなくなるといいます。
網が駄目になります。
捕らえてしまった場合です。
殺そうとすると、和尚魚は手を合わせて涙を流しつつ命乞いをします。
手を合わせます。
そこで、言い含めます。
「助けてやるが、その代わり今後いっさい私の漁に仇なしてはならない」と言うのです。
約束をさせます。
すると、返事があります。
二度と祟らないと承知した合図に、西に向かって天を仰ぐ仕草をするので、それで赦してやって海へ逃がすと良いといいます。
若狭湾の亀入道
同じ姿のものが、日本の海にもいます。
亀の体に坊主頭の人間の頭部を持つ海坊主として亀入道(かめにゅうどう)があります。
若狭湾に出現するといわれます。
若狭湾は、福井県の海です。
これも同じものとされました。
津村淙庵による江戸時代の随筆『譚海』では、これは和尚魚と同じものとされています。
そして、扱い方が似ています。
この姿を見ると不吉な出来事が起こるとされ、捕えてしまった場合、酒を飲ませて海へ放したといいます。
和尚魚は約束をさせ、亀入道は酒を飲ませます。
どちらも、殺しません。
海亀を見たのだという説
正体には、落ち着いた見方があります。
妖怪譚の郷里探訪家、村上健司は、この和尚魚や亀入道は、海亀を妖怪視したものと推測しています。
海亀です。
当てはまる点がいくつもあります。
体はスッポンに似ており、大ぶりのもので体長は5〜6尺(約1.5〜1.8メートル)とあります。
アカウミガメは、それくらいの大きさになります。
紅赤色という色も合います。
そして、逃がす作法も筋が通ります。
手を合わせて涙を流しつつ命乞いをするという姿は、
前脚をそろえた海亀が、目から塩を出す様子に重なります。
海亀は、目から塩分を出します。
和尚魚の伝承地域
和尚魚は、東洋の大海にいるとされます。
『三才図会』は東洋の大海の生物とし、潮に乗ってやってくると記します。
『和漢三才図会』は西海にいる海坊主とします。
日本では、若狭湾に同じものが伝わります。
亀入道(かめにゅうどう)は、若狭湾に出現するといわれます。
海そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
和尚魚の正体と考えられているもの
和尚魚については、次のように整理できます。
一つめは、姿です。人頭亀身で紅赤色であり、頭部は名前通り頭髪がない坊主頭の人間で、体はスッポンに似ており、大ぶりのもので体長は5〜6尺に達するといいます。
二つめは、書物の系統です。明代の類書『三才図会』(1609年)から貝原益軒『大和本草』(1709年)へ、さらに寺島良安『和漢三才図会』(1712年)へと引き継がれました。
三つめは、海坊主との同定です。『和漢三才図会』は俗に言う「海坊主」と同定し、『大和本草』は日本で言う坊主魚(ぼうずうお)と同じとしています。
四つめは、逃がし方です。殺そうとすると手を合わせて涙を流しつつ命乞いをするので、今後いっさい私の漁に仇なしてはならないと言い含めると、西に向かって天を仰ぐ仕草をするといいます。
五つめは、正体の説です。村上健司は、この和尚魚や亀入道は、海亀を妖怪視したものと推測しています。
この妖怪は、殺さずに逃がすものです。 約束をさせて、海に返します。
和尚魚をめぐる妖怪のつながり
和尚魚が登場する作品
和尚魚は、書物を渡ってきた妖怪です。
明の類書から日本の本草書へ移り、海坊主と結びつきました。
資料は中国と日本の博物書に集まります。
和尚魚が登場する古典
三才図会
明代の類書、1609年刊。東洋の大海の生物として記します。
大和本草
貝原益軒、1709年。坊主魚と同じものとします。
和尚魚が登場する研究
和尚魚が登場する漫画・アニメ
海の妖怪を扱う作品
海坊主と並べて取り上げられます。
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和尚魚についてよくある質問
和尚魚とは何ですか。
東洋の海の妖怪で、人頭亀身で紅赤色です。明代の類書『三才図会』(1609年刊)に記載があります。
海坊主と同じですか。
寺島良安『和漢三才図会』(1712年)は「和尚魚」の見出しで転載し、俗に言う「海坊主」と同定しています。
捕まえたらどうするのですか。
殺そうとすると手を合わせて涙を流しつつ命乞いをするので、「助けてやるが、その代わり今後いっさい私の漁に仇なしてはならない」と言い含めると、二度と祟らないといいます。
正体は何ですか。
村上健司は、この和尚魚や亀入道は、海亀を妖怪視したものと推測しています。
和尚魚と併せて覚えたい言葉・用語
鱉(べつ)
スッポンのこと。
類書(るいしょ)
事柄を分類して集めた中国の百科事典。
不祥(ふしょう)
不吉なこと。