下半身が巻貝の人魚。豊作と流行病を予言し、絵姿を貼れと告げた。
海出人とはどんな妖怪か
海出人は、予言獣です。かいし人、人貝(ひとかい)等ともいいます。
下半身が巻貝のような人魚の変形です。
年と場所がわかっています。
嘉永2年(1849年)、越後国の新発田城に近い福島潟の海中に光って出現しました。
光る物として現れました。
柴田/芝田姓の武士が確認すると、吉凶にまつわる予言を言い残したとされます。
そして、予言の中身です。
五年の豊作、のち悪い「風病(かぜ)」が流行し、世の中の人々は六分どおり死ぬと告げました。
海出人の漢字表記と読み方
読みは「かいでにん」とも「うみでびと」ともされ、読み方不詳です。
名も複数あります。
『海出人之図』では「海出人」。
異本『越後国人貝の図』では「人貝(ひとかい)」。
江戸東京博物館の一枚刷りでは「かいし人」。
版ごとに名が違います。
そして、目撃者の名も揺れます。
柴田旦(しばた あきら)/柴田忠太/芝田忠兵衛/柴田忠三郎/紫田右三郎、
江戸東京博物館の一枚刷りでは加助という船頭が遭遇者で、柴田忠三郎は代官として登場します。
海出人(かいでにん)
『海出人之図』での名。読み方不詳。
海出人(うみでびと)
別の読み方。
かいし人(かいしにん)
江戸東京博物館の一枚刷りでの名。
人貝(ひとかい)
『越後国人貝の図』での名。
海出人の姿と特徴
海出人の姿は、人魚の変形です。
女性の人魚似だが、下半身が魚でなく巻貝のよう。
頭部のみ人型のいわゆる人面魚ではなく、胸あたりに人間の乳房が付いた姿で描かれている。
あるいは巻貝のようなものに入っているとの解釈もある。
版によって姿が変わります。
無題の異本では、胸部は鱗状だが人間の素脚をした妖怪が雲に乗っているような構図で描かれ、貝の存在が希薄になっています。
『藤岡屋日記』が模写した絵では、下半身が明らかにとぐろを巻いた蛇体(龍体)に描かれています。
江戸東京博物館の一枚刷りには、細かい描写があります。
「髪の毛くろぐろと」「かほからだ(顔体)もゆる火のごとくまっかに光り」。
海出人の伝承物語
絵の写しを家に貼れ
海出人の予言には、逃れ方が添えられていました。
越後国福島潟というところに夜な夜な「光物(ひかりもの)」が出現し、女性の声で人に呼びかけたため、
当閏4月、武術にたけた浪人の柴田旦というものが探索しました。
すると、名乗ります。
それは海中に棲む「海出人」だと名乗り出ました。
そして、告げます。
五年の豊作、のち悪い「風病(かぜ)」が流行し、世の中の人々は六分どおり死ぬ。
六分どおりです。
だが自分の絵姿を見れば、病を回避しうるとして、絵の写しを家に貼って朝夕眺めるようにと教示して消えたといいます。
絵を貼れば助かります。
十六種類の版が出た
この絵は、商品として売られました。
嘉永2年(酉年)には「閏四月中旬 越後福島潟人魚之事」と題した摺物が、6月頃から販売されだしたと『藤岡屋日記』に記されています。
売り出されました。
同年の七月には少し違う題名で出ており、その後も次々に十六種類の版が出されたとしています。
十六種類です。
そして、文面も少しずつ変わりました。
日記が写した添え文にすでに人魚が「あたりへ光明を放ちて」とありますが、
後には「我は海中に住蜑人也」と名乗った、という微妙に異なる内容の文書が出回っています。
地名も転訛します。
福島潟が「福島名田吉」になった異本もあります。
海出人の伝承地域
海出人は、越後国の福島潟に出現したとされます。
新発田城に近い場所です。 現在の新潟県にあたります。
異本では地名が「福島名田吉」と記されますが、福島潟とみなされています。
類型とみられる作品もあります。
「寛文九己酉年佐渡の海に出たる時の古図」という画中画をもつ錦絵があり、寛文9年(1669年)に佐渡の海に似たものが出たと語られます。 この絵は「亀女」の名称で紹介されています。
潟そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
海出人の正体と考えられているもの
海出人については、次のように整理できます。
一つめは、巻貝の人魚です。下半身が巻貝のような人魚の変形で、胸あたりに人間の乳房が付いた姿で描かれます。
二つめは、予言です。五年の豊作、のち悪い「風病(かぜ)」が流行し、世の中の人々は六分どおり死ぬと告げ、自分の絵姿を見れば病を回避しうるとして絵の写しを家に貼って朝夕眺めるようにと教示しました。
三つめは、商品です。嘉永2年6月頃から摺物が販売されだし、その後も次々に十六種類の版が出されたと『藤岡屋日記』にあります。
四つめは、柴田姓です。「柴田」「芝田」姓の者はアマビコ、アマビエ、アリエの目撃者としても言及されており、関連性が指摘されています。
五つめは、脱法的な販売です。『海出人之図』には改印や版元の表記もなく、脱法的な際物として販売されたものとみられます。
この予言獣は、版を重ねて広がりました。 十六種類という数が、当時の売れ行きを示しています。
海出人をめぐる妖怪のつながり
海出人が登場する作品
海出人は、十六種類の版が出た予言獣です。
嘉永2年の夏に売り出され、名も姿も目撃者の名も、版ごとに少しずつ変わりました。
資料は錦絵・摺物と、当時の日記に分かれます。
海出人が登場する古典
海出人之図
錦絵。詞書に福島潟の出現と予言が記されます。詞書の筆者は清流亭。
藤岡屋日記
嘉永2年6月頃から摺物が販売されだしたことを記録しています。
海出人が登場する研究
海出人が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
予言獣として、アマビエやアリエと並べて取り上げられます。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
海出人についてよくある質問
海出人とはどんな姿ですか。
下半身が巻貝のような人魚の変形です。胸あたりに人間の乳房が付いた姿で描かれ、巻貝のようなものに入っているとの解釈もあります。
何を予言したのですか。
五年の豊作、のち悪い「風病(かぜ)」が流行し、世の中の人々は六分どおり死ぬと告げました。
助かる方法は示されましたか。
自分の絵姿を見れば、病を回避しうるとして、絵の写しを家に貼って朝夕眺めるようにと教示して消えました。
ほかの予言獣と関係がありますか。
「柴田」「芝田」姓の者は、アマビコ、アマビエ、アリエの目撃者として言及されており、関連性が指摘されています。
海出人と併せて覚えたい言葉・用語
福島潟(ふくしまがた)
新潟県の潟。海出人が出たとされる。
摺物(すりもの)
木版で刷った一枚物。予言獣の図が売られた。
藤岡屋日記(ふじおかやにっき)
江戸の情報屋・藤岡屋由蔵の日記。世相を記録した。