コレラの正体とされた獣。虎・狼・狸が合体した姿。

作者不明 「かなよみ 虎狼狸獣」 1877年ごろ / パブリックドメイン 出典
虎狼狸とはどんな妖怪か
虎狼狸は、江戸の絵巻に出る妖怪です。
江戸時代の絵巻などに登場する日本の妖怪です。
姿は、名の通りです。
虎、狼、狸が合体したような姿をしています。
そして、病と結びついています。
当時江戸ではコレラが流行っており、病気の根源といわれ恐れられたのがこの妖怪です。
名も、そこから来ています。
名前は3つの動物の読み方と、コレラがなまったためによるといいます。
ただし、異論があります。
コレラからの純粋な転訛ではないとする説もあります。
虎狼狸の漢字表記と読み方
読みは「ころうり」です。
この名は、二重の作りになっています。
3つの動物の読み方(虎・狼・狸)と、
コレラがなまったものを重ねています。
当てはめた字です。
当時の庶民は病気の原因が不明であったことから、妖怪変化の仕業として「虎狼狸」の字を当て、あらぬ説を流言したといいます。
そして、断りがあります。
コレラからの純粋な転訛ではないとする説もあります。
明治には、別の呼び方も出ました。
錦絵新聞『かなよみ』の明治10年(1877年)9月21日の記事で「虎狼狸獣(ころりじゅう)」と称されています。
虎狼狸(ころうり)
もっとも一般的な表記。
虎狼狸獣(ころりじゅう)
明治の錦絵新聞での呼び名。
コレラ(これら)
この妖怪が正体とされた病の名。
虎狼狸の姿と特徴
虎狼狸の姿は、三つの獣を合わせたものです。
虎、狼、狸が合体したような姿をしています。
三つが混ざっています。
明治の新聞では、また違います。
錦絵新聞『かなよみ』の記事では、「虎狼狸獣」と称して
虎の模様を持つ狸のような獣が描かれています。
虎の模様の狸です。
そして、断り書きがついています。
実在しない獣だと断った上で、この獣を見た読者がコレラを恐ろしい病気だと認識するよう述べられています。
恐怖のための絵でした。
虎狼狸の伝承物語
黒船とともに来た
虎狼狸は、病の流行とともに生まれました。
当時のコレラの惨状を綴った『安政箇労痢流行記概略』によれば、
幕末の黒船来航に伴って日本にコレラが伝染し、江戸だけでも数十万人が感染したとあります。
数十万人です。
そして、原因がわかりませんでした。
病気の原因が不明であったことから、当時の庶民は妖怪変化の仕業として「虎狼狸」の字を当て、あらぬ説を流言したといいます。
説明のつかないものに、姿を与えました。
そこに、三つの獣が選ばれました。
虎、狼、狸です。
虎と狼は恐ろしさを、狸は化けることを表しています。
遺体から獣が飛び出した
当時の記録には、目撃談が残っています。
幕末の社会資料として知られる『藤岡屋日記』によれば、
文久2年(1862年)に江戸での3度目のコレラの大流行があったといいます。
そのときの話です。
武州多摩郡三ツ木である人物がコレラから快方に向かった後、イタチのような獣が目撃され、薪で叩き殺して火で炙って食べたとあります。
焼いて食べています。
同じ話が続きます。
同村でコレラに感染した別の人物の家でも、やはり同様の獣が家から出て行く様子が目撃されたといいます。
多摩の中藤村や谷保村では、コレラによる病死者の遺体から同様の獣が飛び出したといいます。
病が、獣の形で出て行きました。
アメリカのオサキと呼ばれた
この獣には、別の名もつけられました。
当時まだ原因不明だったコレラが虎狼狸やオサキの仕業といわれていたことから、
『藤岡屋日記』の著者・須藤由蔵はこの獣をアメリカのオサキと述べています。
アメリカのオサキ、です。
オサキは、関東で憑き物とされたキツネの類です。
その外国版という言い方になっています。
黒船と病が、結びついています。
幕末の黒船来航に伴って日本にコレラが伝染したという認識が、そのまま名に出ました。
明治になると、扱いが変わります。
錦絵新聞『かなよみ』は実在しない獣だと断った上で、
この獣を見た読者がコレラを恐ろしい病気だと認識するよう述べています。
恐怖を図にしたもの、といえます。
虎狼狸の伝承地域
虎狼狸は、江戸とその周辺で語られました。
江戸だけでも数十万人が感染したと『安政箇労痢流行記概略』は記します。
目撃談の残る場所があります。
武州多摩郡三ツ木(現・東京都武蔵村山市)。
多摩の中藤村(現・武蔵村山市)。
谷保村(現・東京都国立市)。
病の流行そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
虎狼狸の正体と考えられているもの
虎狼狸については、次のように整理できます。
一つめは、姿です。虎、狼、狸が合体したような姿をしています。
二つめは、名の作りです。3つの動物の読み方と、コレラがなまったためによるといい、コレラからの純粋な転訛ではないとする説もあります。
三つめは、生まれた事情です。病気の原因が不明であったことから、当時の庶民は妖怪変化の仕業として「虎狼狸」の字を当て、あらぬ説を流言したといいます。
四つめは、目撃談です。『藤岡屋日記』には、コレラによる病死者の遺体から同様の獣が飛び出したとあり、著者・須藤由蔵はこの獣をアメリカのオサキと述べています。
五つめは、明治の扱いです。錦絵新聞『かなよみ』は実在しない獣だと断った上で、この獣を見た読者がコレラを恐ろしい病気だと認識するよう述べています。
この妖怪は、病そのものの姿です。 恐怖を図像にしたものといえます。
虎狼狸をめぐる妖怪のつながり
虎狼狸が登場する作品
虎狼狸は、病に与えられた姿です。
原因のわからない流行病に、三つの獣を合わせた形が当てられました。
資料は幕末の記録と、明治の錦絵新聞に分かれます。
虎狼狸が登場する古典
安政箇労痢流行記概略
当時のコレラの惨状を綴った記録です。
藤岡屋日記
須藤由蔵。幕末の社会資料。獣の目撃談を載せます。
虎狼狸が登場する研究
虎狼狸が登場する漫画・アニメ
疫病を扱う作品
アマビエや疱瘡神と並べて取り上げられます。
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虎狼狸についてよくある質問
虎狼狸とは何ですか。
江戸時代の絵巻などに登場する日本の妖怪で、虎、狼、狸が合体したような姿をしています。当時江戸ではコレラが流行っており、病気の根源といわれ恐れられました。
名前の由来は何ですか。
3つの動物の読み方と、コレラがなまったためによるといいます。ただしコレラからの純粋な転訛ではないとする説もあります。
目撃されたのですか。
『藤岡屋日記』に、コレラによる病死者の遺体から同様の獣が飛び出したとあります。著者・須藤由蔵はこの獣をアメリカのオサキと述べています。
明治にはどう扱われましたか。
錦絵新聞『かなよみ』は実在しない獣だと断った上で、この獣を見た読者がコレラを恐ろしい病気だと認識するよう述べています。
虎狼狸と併せて覚えたい言葉・用語
コレラ(これら)
激しい下痢を起こす感染症。幕末に大流行した。
錦絵新聞(にしきえしんぶん)
明治初期の、絵入りで記事を伝えた刷り物。
オサキ(おさき)
関東で憑き物とされたキツネの類。