本文へ移動

長崎県

石投げんじょ(いしなげんじょ)とはどんな妖怪か|姿と伝承

石投げんじょ  / イシナゲンジョ

水の妖怪 各地の伝説

梅雨の夜、岩が崩れる音がする。翌日に見ても異状がない。

石投げんじょとはどんな妖怪か

石投げんじょは、海に伝わる怪現象です。

長崎県西彼杵郡江ノ島近海や佐賀県鳥栖市江島町に伝わります

起きる時季と天気が決まっています。

5月の梅雨どき、靄の深くかかっている夜に漁をしていると突然、大きな岩が崩れるような音が聞こえます

梅雨の、靄の夜です。

大きな音がします。

そして、翌日に確かめます。

翌日以降の晴れ間にその場所に行ってみても、何ら異状はないというものです。

何もありません。

石投げんじょの漢字表記と読み方

読みは「いしなげんじょ」です。

名の終わりの「じょ」に、二つの説があります。

名称の「じょ」が「女」に通じるためとの仮説もあります

民俗学者・桜田勝徳は名称に「石投女」との漢字表記を当てています

「女」です。

もう一つは、老人です。

広辞苑では「じょ」に「尉」の字を当て、海で石を投げる老人と説明しています

「尉」は、能で老人を指す字です。

女か、老人かで分かれています。

石投げんじょ(いしなげんじょ)

もっとも一般的な表記。

石投女(いしなげじょ)

桜田勝徳が当てた漢字表記。

石投尉(いしなげじょう)

『広辞苑』が「じょ」に当てた字。

石投げんじょの姿と特徴

石投げんじょに、姿はありません

あるのは音だけです。

大きな岩が崩れるような音が聞こえるといいます。

岩が崩れる音です。

そして、痕跡がありません。

翌日以降の晴れ間にその場所に行ってみても、何ら異状はないといいます。

正体には説があります。

磯女のような海の女の妖怪の仕業(『綜合日本民俗語彙』)。
海で石を投げる老人(『広辞苑』)。
漁夫の錯覚を妖怪視したもの(同)。

石投げんじょの伝承物語

  1. 靄の夜に岩が崩れる音
  2. 磯女の仕業とされた
  3. 石を投げる老人という説

靄の夜に岩が崩れる音

この怪異は、条件がそろったときに起きます。

5月の梅雨どき、靄の深くかかっている夜に漁をしていると突然、大きな岩が崩れるような音が聞こえます

五月の梅雨どきです。

靄が深くかかっています。

漁の最中です。

そして、音がします。

大きな岩が崩れる音です。

驚いて、翌日に確かめに行きます。

翌日以降の晴れ間にその場所に行ってみても、何ら異状はないといいます。

崩れた岩はありません。

音だけが残りました。

磯女の仕業とされた

正体には、古い見方があります。

民俗学研究所による『綜合日本民俗語彙』では、これを磯女のような海の女の妖怪の仕業としています

磯女です。

海に出る女の妖怪です。

柳田も同じ見方をしています。

柳田國男の著書『妖怪談義』でも磯女と同系の妖怪と記述されています

同系です。

理由は、名にあります。

名称の「じょ」が「女」に通じるためとの仮説もあります

民俗学者・桜田勝徳は名称に「石投女」との漢字表記を当てています

「じょ」を「女」と読みました。

石を投げる老人という説

『広辞苑』は、別の字を当てています。

広辞苑では「じょ」に「尉」の字を当て、海で石を投げる老人と説明しています

「尉」は、老人です。

女ではなく、老人になります。

ただし、疑いが出されています。

妖怪研究家・村上健司は、そのようにこの怪異の正体を記述した資料があるかどうか疑問を唱えています

根拠の資料が見当たりません。

そして、現実的な説明もあります。

前述の『広辞苑』ではこの怪異の正体を、漁夫の錯覚を妖怪視したものとしています

錯覚という見方です。

音の正体は、わかっていません。

石投げんじょの伝承地域

石投げんじょは、長崎県西彼杵郡江ノ島近海佐賀県鳥栖市江島町に伝わります。

5月の梅雨どき、靄の深くかかっている夜に漁をしていると起きるといいます。

江ノ島は、長崎県西海市の島です。

海そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。

石投げんじょの正体と考えられているもの

石投げんじょについては、次のように整理できます。

一つめは、条件です。5月の梅雨どき、靄の深くかかっている夜に漁をしていると起きるといいます。

二つめは、音です。突然、大きな岩が崩れるような音が聞こえます

三つめは、痕跡のなさです。翌日以降の晴れ間にその場所に行ってみても、何ら異状はないといいます。

四つめは、磯女説です。綜合日本民俗語彙では、これを磯女のような海の女の妖怪の仕業としており柳田國男の著書『妖怪談義』でも磯女と同系の妖怪と記述されています

五つめは、老人説への疑いです。広辞苑は「じょ」に「尉」の字を当て、海で石を投げる老人と説明していますが、村上健司は、そのようにこの怪異の正体を記述した資料があるかどうか疑問を唱えています

この怪異は、名の一字で説が割れました。 じょ」が老人かです。

石投げんじょをめぐる妖怪のつながり

石投げんじょが登場する作品

石投げんじょは、名の一字で説が割れた怪異です。

梅雨の靄の夜に岩の崩れる音がし、翌日には何もありません。

資料は長崎・佐賀の民俗の記録に集まります。

石投げんじょが登場する研究

綜合日本民俗語彙

民俗学研究所編。磯女のような海の女の妖怪の仕業としています。

Amazonで本・漫画を探す

柳田國男『妖怪談義』

磯女と同系の妖怪と記述しています。

Amazonで本・漫画を探す

妖怪事典

村上健司編著、2000年。老人説に疑問を唱えています。

Amazonで本・漫画を探す

石投げんじょが登場する漫画・アニメ

海の怪異を扱う作品

磯女や船幽霊と並べて取り上げられます。

九州の妖怪の本を探す

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

石投げんじょについてよくある質問

石投げんじょとは何ですか。

長崎県西彼杵郡江ノ島近海や佐賀県鳥栖市江島町に伝わる怪現象です。

どんな音ですか。

5月の梅雨どき、靄の深くかかっている夜に漁をしていると突然、大きな岩が崩れるような音が聞こえます

翌日はどうなっていますか。

翌日以降の晴れ間にその場所に行ってみても、何ら異状はないといいます。

正体は何ですか。

磯女のような海の女の妖怪の仕業とも、海で石を投げる老人ともいわれ、漁夫の錯覚を妖怪視したものとする説もあります。

石投げんじょと併せて覚えたい言葉・用語

(もや)

空気中の水分で視界がぼやける現象。

(じょう)

能で老人を指す言葉。

磯女(いそおんな)

九州の海に出るという女の妖怪。