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島根県

ゲドウ(げどう)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

ゲドウ  / ゲドウ

憑き物獣の妖怪 各地の伝説

島根・広島の山間部で、家に属して人へ憑くと恐れられた小動物姿の憑き物。

ゲドウの姿を描いた図

そらみみ 「江の川と栗原橋(島根県美郷町)」 2018年 / CC BY-SA 出典

ゲドウとはどんな妖怪か

ゲドウは、家の床下で飼われる憑き物です。

島根・広島を中心に伝わります。イタチより小さい獣モグラに似たもの。姿は土地ごとに変わります。

共通するのは飼い方です。台所や納屋の床下に群れを置き、小豆飯を食べさせる。 ゲドウは家へ富を運び、怒れば人に憑いて病と乱心を起こしました。

歴史学者の喜田貞吉は、これを西日本に広がる憑き物の一つとして並べています。

牛蒡種の外に狐持・外道持・犬神筋等、各地その名称を異にし、また幾分その憑依の現象をも異にするものの甚だ多いことは既に述べた。

ゲドウを持つと噂された家は、縁組を避けられました。 姿を見せないものが、生身の人の一生を狭めた 点は、犬神と同じです。

ゲドウの漢字表記と読み方

「げどう」と読み、地域によって「げど」とも呼びます。仏教語の外道や一般の罵倒語と同じ音ですが、中国地方では家に属する憑き物の名として使われました。

ゲドウ(げどう)

島根・広島の山間部で憑き物を指す呼び名。

ゲド(げど)

ゲドウを短くした地域の呼び方。

外道(げどう)

仏教語や罵倒語にも用いられる漢字表記。民俗上の憑き物とは文脈を分ける。

ゲドウの姿と特徴

共通する一枚の姿はありません。イタチより小さい鼠色の獣、掌へ入るほどの小動物、モグラに似たもの、蛇などと語られます。持ち主以外には見えないという話もあり、動物図鑑の一種のようには固定できません。

ゲドウの伝承記録

  1. 床下で小豆飯を食べさせる ─ 飼うという噂
  2. 縁談を断ったら七匹送られた ─ 備後の話
  3. 嫁入り先までついて行く ─ 縁組が狭まる
  4. 犬外道、トウビョウ ─ 隣り合う呼び名
  5. 恐れられたのは獣ではなく評判

床下で小豆飯を食べさせる ─ 飼うという噂

ゲドウを持つとされた家では、台所や納屋の床下に群れを置き、小豆飯を食べさせると噂されました。ゲドウは家へ富を運ぶ一方、怒らせれば人へ憑き、病気や乱心を起こすとも恐れられます。

家の者だけに見えるなら、外から確かめようがありません。 それでも噂は広がりました。急に豊かになった家を説明する言葉として、ゲドウは便利すぎたのです。

縁談を断ったら七匹送られた ─ 備後の話

昭和三十一年の「芸備地方憑物二話」は、備後甲奴郡の話を伝えます。

ある女性が縁談を断りました。恨んだゲドウ持ちの家から七匹のゲドウを送られ、かみつかれたと語られます。女性は意味の通らないことを口走り、激しく暴れたといいます。

恐れられたのは、野山で出くわす獣ではありませんでした。 人の恨みに従って、家から家へ送られる ものです。

喜田貞吉は、この形を憑き物の第二の型として整理しています。

犬神使い、外法使い・狐持、外道持などいわれるものは、この第二の場合である。

(外法使い=術で霊を使う者。第二の場合=人に使われた霊が憑く型)

嫁入り先までついて行く ─ 縁組が狭まる

ゲドウ持ちの家に娘が生まれると数が増え、嫁入り先へついて行くという話もありました。そのため、噂を立てられた家の女性との縁組を避ける動きが生まれます。

怪異の話が、誰と結婚できるかという現実に入り込みました。 持っていないと示す方法がない以上、否定しても噂は消えません。

犬外道、トウビョウ ─ 隣り合う呼び名

ゲドウという名は、土地ごとに違う動物を指します。犬の霊と結びついた犬外道、蛇形のトウビョウに近いもの。野外のゲドウと、人に憑くゲドウを分ける土地もありました。

家に属し、人へ送られ、富と婚姻に結びつく。 仕組みは犬神ともトウビョウとも同じです。違うのは姿と呼び名だけ ですが、その呼び分けにこそ土地の記憶が残っています。

恐れられたのは獣ではなく評判

ゲドウの姿だけを追うと、小さな獣の妖怪に見えます。しかしこの伝承の力は、姿ではなく評判にありました。

特定の家がゲドウを飼い、他人へ害を送れる。 この一文があるだけで、病気も不和も原因を別の家へ振り向けられます。ゲドウは、村が誰かを外へ置くための道具にもなりました。

ゲドウの伝承地域

ゲドウの伝承は、島根県東部と広島県北部に濃く残ります。地図はその地域を示すものです。

訪ねられる塚や祠はありません。床下で飼われたとされる憑き物には、祀られる場所がない のです。

島根・広島の山間部(しまね・ひろしまのさんかんぶ)

ゲドウ伝承の分布地域

地図で開く

島根・広島の山間部の所在地:島根県西部

島根と広島を中心に、姿や呼び名の異なるゲドウが伝わります。

分布を示す地域。中国山地の谷あいに伝承が濃い。

ゲドウの正体と考えられているもの

ゲドウは、小動物の姿を取る憑き物であると同時に、家の富・病気・婚姻を説明する噂の名でした。見えない獣よりも、その名を向けられた家が孤立することに現実の重さがあります。

ゲドウをめぐる妖怪のつながり

ゲドウが登場する作品

ゲドウは、家筋として語られてきた憑き物です。

広島や島根で、ゲドウ持ちの家が名指しされました。 姿は狸や鼬に似た小動物とされ、憑かれた者は体の節々が痛み、原因の分からない病に苦しむと語られます。

犬神、トウビョウ、オサキと同じ枠のなかにあります。妖怪の話であると同時に、村のなかで実際に人を追い詰めてきた言葉でもあります。

ゲドウが登場する民俗学

日本の憑きもの

石塚尊俊による憑き物研究。ゲドウを、中国地方に分布する憑き物の一つとして扱っています。

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妖怪談義

柳田国男の妖怪論集。憑き物が家筋として語られる仕組みに触れています。

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ゲドウについてよくある質問

ゲドウとはどんな妖怪ですか。

島根・広島を中心に、家へ属し人へ憑くと恐れられた存在です。イタチやモグラに似た小動物、蛇など地域で姿が変わります。

ゲドウは何を食べると伝わりますか。

ゲドウ持ちと噂された家が、台所や納屋の床下で小豆飯を与えるという話があります。実際に飼った証拠ではなく、憑き物をめぐる噂です。

ゲドウと犬神は同じですか。

仕組みは同じで、姿と分布が違います。ゲドウは中国地方で、イタチ・モグラ・蛇と姿が一定しません。犬神は四国・九州を中心に、犬の霊として語られます。トウビョウを加えた三つが、西日本の代表的な憑き物です。

現在もゲドウ持ちの家は分かりますか。

分かりません。憑き物筋の噂は、婚姻や交際を妨げた差別の歴史を持ちます。過去の民俗として読むものです。

ゲドウと併せて覚えたい言葉・用語

憑き物(つきもの)

人や家に取り憑き、病気や富、災いをもたらすと信じられた霊的存在。

憑き物筋(つきものすじ)

特定の家系が憑き物を持つという噂。縁組や交際を避ける差別につながった。

トウビョウ(とうびょう)

中国地方で家に属するとされた蛇形の憑き物。ゲドウと近接して語られる。

ゲドウの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「ゲドウ,家筋」
  2. 国立歴史民俗博物館研究報告「柳田国男の社会問題研究」
  3. 科学技術情報発信・流通総合システム『文化人類学』「山陰農村の親族組織」
  4. 青空文庫 喜田貞吉「憑き物系統に関する民族的研究」