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宮城県

疱瘡婆(ほうそうばばあ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

疱瘡婆  / ホウソウババア

人型の妖怪病の妖怪 怪談・百物語

疱瘡の流行中に墓を暴き、死者を食べたと噂された、赤い顔と白髪を持つ巨大な老婆。

疱瘡婆とはどんな妖怪か

疱瘡婆は、『奥州ばなし』に収められた怪異です。只野真葛が書き留めました。疱瘡が流行した村で墓が次々と荒らされ、死者を食べる化け物が病まで起こしているという噂が広がります。

墓を守る猟師が夜の音を追い、のちに山で赤い顔と白髪を持つ巨大な老婆が目撃されます。病、死、埋葬まで脅かされた村の恐怖が、一人の「婆」の姿へ集まった物語です。

疱瘡婆の漢字表記と読み方

「ほうそうばばあ」と読みます。「ほうそうばば」とも読まれます。疱瘡は天然痘の古い呼び名です。

疱瘡婆(ほうそうばばあ)

疱瘡と、老婆を表す「婆」を結びつけた名。

疱瘡婆(ほうそうばば)

「婆」を短く「ばば」と読む場合の呼び方。

疱瘡婆の姿と特徴

山で見られた姿は、一丈ほどの大きさ、ふさふさした白髪、赤い顔、光る眼を持つ老婆です。一丈はおよそ三メートルに当たりますが、物語の中で異様な大きさを表す尺度です。墓を掘る夜には姿を見せず、激しい音と倒れた木だけを残しました。

疱瘡婆の伝承物語

  1. 疱瘡が村を襲い、死者が相次ぐ
  2. 深い墓も大石も怪物を止められない
  3. 三人の息子の墓を猟師が見張る
  4. 近づいた猟師の前から何者かが逃げる
  5. 山に赤い顔と白髪の大女が現れる

疱瘡が村を襲い、死者が相次ぐ

文化年間の初め、陸奥の「七ヶ浜村大須」と記された土地で疱瘡が流行しました。高い熱と発疹を起こす病は、村から多くの命を奪います。家族は死者を土へ葬ります。ところが、苦しみはそこから続きました。

夜が明けると墓の土が掘り返され、埋めたはずの遺体がなくなっています。病で人を失ったうえ、その身体まで守れないという出来事が、村をさらに深い恐怖へ追い込みました。

深い墓も大石も怪物を止められない

村人は墓を深く掘り、上へ大きな石を載せました。それでも翌朝には石が動き、遺体は食い荒らされています。骨も髪も残らず、着物だけが土の中に残ることもありました。

雨上がりの土には、一尺を超える大きな足跡がついています。外へ置いた鹿の身体まで一晩で骨ごと失われ、ただの墓荒らしではないという噂が強まりました。やがて、死人を食べるために疱瘡を流行させる「疱瘡婆」がいると語られます。

三人の息子の墓を猟師が見張る

村の名主も、三人の息子を相次いで亡くしました。息子たちの墓まで荒らさせまいと、大石を載せ、鉄砲を扱う猟師に夜番を頼みます。

猟師は墓の近くに身を潜め、灯りを弱めて待ちました。月もない暗がりで見えるものはなく、耳だけを澄ませます。しばらくすると、土を掘り返す重い音が墓の方から聞こえ始めました。

近づいた猟師の前から何者かが逃げる

猟師が鉄砲を手に音へ近づくと、潜んでいた何者かが突然走り出します。姿を狙う間もなく、怪物は木々を押し分け、枝を折りながら山へ逃げました。闇の中には、その大きさと勢いを物語る跡だけが残ります。

この夜を境に、墓を荒らす被害は止まりました。猟師は疱瘡婆を撃ち倒してはいません。それでも、人が夜の墓を守り、怪物を追ったことで、村を苦しめた一連の出来事はいったん終わります。

山に赤い顔と白髪の大女が現れる

数年後、山の向こうに異様な老婆を見たという話が明かされます。背丈は一丈ほど、頭には白髪がふさふさと生え、顔は赤く、眼をぎらつかせていました。人の老婆に似ていながら、背丈は人を大きく超えています。

目撃した者は災いを恐れ、長いあいだ口を閉ざしました。木立に残った逃げ道の跡が薄くなってから、ようやく山で見たものを語ります。夜の墓では音しか聞けなかった怪物と、この赤顔の大女が結びつき、疱瘡婆の姿が完成しました。

疱瘡婆の伝承地域

『奥州ばなし』は舞台を陸奥の「七ヶ浜村大須」と記しますが、この歴史地名を現在の一点へ確実に対応させられないため、推測の地図は置きません。

疱瘡婆の正体と考えられているもの

疱瘡婆は、疱瘡による死、相次ぐ埋葬、墓荒らし、山で見た巨大な老婆という恐怖が連なって生まれた怪異です。天然痘は天然痘ウイルスによる感染症で、世界保健機関は1980年に根絶を宣言しました。病の医学的な原因とは別に、疱瘡婆の物語は、原因も終わりも見えない流行に直面した村の不安を今へ伝えています。

疱瘡婆をめぐる妖怪のつながり

疱瘡婆が登場する作品

疱瘡婆は、病と墓荒らしが一つになった怪異です。

疱瘡が流行し、埋めたはずの遺体が夜のうちに掘り返される。 病で人を失ったうえ、その身体まで守れないという出来事が、村を深い恐怖へ追い込みました。

猟師は疱瘡婆を撃ち倒していません。それでも、人が夜の墓を守り、怪物を追ったことで被害は止まります。数年後に山で見たという赤顔の大女の話が、後から姿を埋めました。

疱瘡婆が登場する古典・奇談

東北怪談の旅

山田野理夫が東北各地の怪談を集めた本。疱瘡婆を含む、宮城の墓荒らしの話が扱われます。

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疱瘡婆が登場する事典

日本妖怪大事典

村上健司による大部の事典。地方の小さな伝承まで、出典を添えて収めています。

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疱瘡婆についてよくある質問

疱瘡婆とはどんな妖怪ですか。

疱瘡が流行する村で、墓を暴いて死者を食べたと噂された巨大な老婆です。赤い顔、白髪、光る眼を持つ姿で語られます。

疱瘡婆は何と読みますか。

「ほうそうばばあ」と読みます。「ほうそうばば」とも呼ばれます。疱瘡は天然痘の古い呼び名で、病の名と老婆を表す「婆」が妖怪名になりました。

疱瘡婆はどの本に登場しますか。

江戸時代の文人・只野真葛が奥州の怪異を集めた『奥州ばなし』に登場します。疱瘡の流行から墓荒らし、猟師の夜番、山の目撃までが続く一話です。

疱瘡婆は退治されますか。

退治はされません。墓を見張った猟師が土を掘る音へ近づくと、何者かが木を折りながら山へ逃げます。その夜以後、墓荒らしが止まりました。

疱瘡婆と併せて覚えたい言葉・用語

疱瘡(ほうそう)

天然痘の古い呼び名。高熱と発疹を起こし、長く恐れられた感染症。

奥州ばなし(おうしゅうばなし)

只野真葛が奥州で聞いた怪異をまとめた物語集。『奥州波奈志』とも表記される。

一丈(いちじょう)

およそ三メートルに当たる長さ。疱瘡婆の異様な大きさを示す。

疱瘡婆の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 宮城県図書館「只野真葛の『奥州ばなし』現代語訳」
  2. 国立国会図書館サーチ『只野真葛の奥州ばなし』
  3. 国立感染症研究所「天然痘」