鬼と人のあいだに生まれた子。節分や小正月の行事の起源とされる。
鬼の子小綱とはどんな妖怪か
鬼の子小綱は、東北地方に伝承される説話です。
小綱とは、物語に登場する人食い鬼の父と人間の母との間に生まれた半鬼半人の子の名です。
地域によっては「片子」とも呼ばれます。
「逃竄譚」または「異類婚姻譚」にも分類できるとされています。
話の大筋はこうです。
留守番をしていた娘の前に鬼が現れ、誘拐し、そのまま妻とします。
おじいさんは娘を探し、鬼ヶ島で再会するも鬼が帰って来たため、娘に隠されます。
鬼は「人のにおいがする」と疑います。
娘は腹に子がいるためと嘘を吐きました。
鬼の子小綱の漢字表記と読み方
読みは「おにのここづな」です。
小綱は、鬼の子の名です。
地域によっては「片子」といいます。
宮城県仙台市では、鬼の子の名を「片子」と呼び、右半身が鬼で、左半身が人間で、10歳ほどとします。
半分ずつです。
そして、話の型が二つあります。
「逃竄譚」…逃げる話。
「異類婚姻譚」…人と人以外のものが夫婦になる話。
どちらにも分類できます。
鬼の子小綱(おにのここづな)
もっとも一般的な表記。
片子(かたこ)
地域による呼び名。
幸助(こうすけ)
鬼の子の名とする例もある。
鬼の子小綱の姿と特徴
鬼の子小綱の姿は、半分が鬼です。
人食い鬼の父と人間の母との間に生まれた半鬼半人の子です。
宮城県仙台市の伝えが具体的です。
右半身が鬼で、左半身が人間。10歳ほど。
縦に半分ずつです。
そして、性質にも鬼の側が出ます。
成長に従い、食人衝動を抑えられないことを自覚し、人と暮らせず、里を追われました。
父の血が出ます。
鬼の子小綱の伝承物語
尻を叩いて笑わせる
この話の山場は、鬼からの逃走です。
おじいさんと娘は、鬼の間にできた子を連れ、舟で島から脱出をはかります。
気づいた鬼が追います。
鬼が川の水を吸い込んで舟を引き寄せるのです。
水ごと引き戻されます。
そこで、娘が動きます。
娘がお尻をたたくと鬼は笑い出し、水を吐き出したため、逃げ切ることに成功しました。
笑わせて助かりました。
この場面には、古い形があるとされます。
福島県南会津郡では、母は尻を叩くのではなく、ボボ(女性器)を叩いて笑わせたとあります。
ギリシア神話や日本神話の女性器を見せて女神を笑わせる類型話から、本来は尻を叩く話ではなく、女性器を叩く話の方が古いと見られています。
串刺しにして戸口へ
鬼の子の最期は、行事の起源になりました。
宮城県仙台市の伝えです。
鬼の子は「日本に帰るも鬼子鬼子とはやされて居づらくなり、鬼の体の方を細かく切り、串刺しにして戸口に刺しておくと鬼除けになり、それでもダメなら石で目玉を狙え」と遺言し、ケヤキの木から落ちて死にます。
自分の体を鬼除けにせよ、と言います。
母親はその通りにして、追って来た鬼を撃退しました。
それから節分の日には片子の代わりに田作りを串刺しにし、
「福は内、鬼は外、天打ち地打ち四方打ち、鬼の目玉をぶっ潰せ」といって、豆まきをするようになったと伝えられます。
山形県新庄市でも、片子をバラバラにした話が伝わります。
蚊になった、瓶に埋まった
鬼の子のその後には、土地ごとのちがいがあります。
岩手県遠野市 … 人を食いたくなり、自ら殺してくれと柴の中に入り、火をつけてもらい、灰となり、その灰が風に吹かれ、蚊と化し、蚊は今でも人を食うと伝えられます。
蚊になりました。
岩手県岩泉町 … 鬼子が子供をかじるようになったため、刻み殺され、戸口に刺し、鬼がこれを見て驚き、逃げたといいます。
幸助という名の例 … 食人衝動を感じた幸助が「俺を瓶の中に入れて庭の隅に埋めてくれ。そして、三年たったら掘り返してほしい」と母親に懇願します。三年後に掘り返すと、瓶は小銭に満たされていました。
奄美大島 … 人と暮らせず、自ら海の中に沈んで行ったと伝えられます。
どの土地でも、自ら去っています。
鬼の子小綱の伝承地域
鬼の子小綱は、主として東北地方に伝承されます。
岩手県遠野市 … 灰が蚊になったと伝えられます。
岩手県下閉伊郡岩泉町 … 鬼子を刻み殺して戸口に刺し、3月3日を女子の日とし、正月15日にヤツカカシ(焼き刺し)をするようになったといいます。
宮城県仙台市 … 鬼の子を「片子」と呼び、節分の豆まきの起源とします。
山形県新庄市 … 片子を殺してバラバラにし、節分の日に田作りの頭を下げると伝えます。
福島県南会津郡 … ボボ(女性器)を叩いて笑わせたとあります。
富山県中新川郡、奄美大島にも類話があります。
民話として語られたもので、碑や祠は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
鬼の子小綱の正体と考えられているもの
鬼の子小綱については、次のように整理できます。
一つめは、半鬼半人です。人食い鬼の父と人間の母との間に生まれた子で、宮城県仙台市では右半身が鬼で、左半身が人間とされます。
二つめは、笑わせて逃げることです。鬼が川の水を吸い込んで舟を引き寄せるが、娘がお尻をたたくと鬼は笑い出し、水を吐き出したため逃げ切りました。
三つめは、行事の起源です。鬼の子の体を串刺しにして戸口に刺すと鬼除けになるという遺言から、節分の豆まきやヤキカガシの風習が説明されます。
四つめは、害虫の起源です。焼け死んだ鬼から蚊・アブ・ハエ・シラミなどの害虫が生じたという話は「ノミカの起こり話」として東北・中国・四国地方に伝えられ、イザナミが焼け死んだ神話の再現ともされます。
五つめは、自ら去ることです。どの土地でも、鬼の子は人と暮らせず、自分から死を選ぶか、里を出ています。
この説話は、行事の由来として語り継がれました。 節分も小正月も、この話に結びついています。
鬼の子小綱をめぐる妖怪のつながり
鬼の子小綱が登場する作品
鬼の子小綱は、行事の由来を語る説話です。
節分の豆まき、ヤキカガシ、3月3日の女子の日。どれもこの話に結びついています。
資料は東北の昔話の採録が中心です。
鬼の子小綱が登場する研究
鬼の子小綱が登場する漫画・アニメ
まんが日本昔ばなし
鬼と人の子の話が取り上げられています。
妖怪をまとめて扱う作品
鬼と人のあいだの子として、酒呑童子の出生譚と並べて語られます。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
鬼の子小綱についてよくある質問
鬼の子小綱とは何ですか。
主として東北地方に伝承される説話で、小綱は人食い鬼の父と人間の母との間に生まれた半鬼半人の子の名です。地域によっては「片子」とも呼ばれます。
どうやって鬼から逃げるのですか。
鬼が川の水を吸い込んで舟を引き寄せるが、娘がお尻をたたくと鬼は笑い出し、水を吐き出したため、逃げ切ることに成功します。
節分と関係がありますか。
あります。 宮城県仙台市では、鬼の子が「鬼の体の方を細かく切り、串刺しにして戸口に刺しておくと鬼除けになる」と遺言し、それから節分の日には片子の代わりに田作りを串刺しにし、豆まきをするようになったと伝えられます。
鬼の子はどうなるのですか。
岩手県遠野市では灰が蚊になった、幸助という名の例では瓶に埋められ三年後に小銭で満たされていた、奄美大島では自ら海の中に沈んで行ったと伝えられます。
鬼の子小綱と併せて覚えたい言葉・用語
逃竄譚(とうざんたん)
追われて逃げる話の型。
ヤキカガシ(やきかがし)
焼いたイワシの頭をヒイラギの枝に刺す風習。
田作り(たづくり)
カタクチイワシを干した食品。節分に串刺しにされた。