つららの化身の女。風呂に入ると消えてしまう。
つらら女とはどんな妖怪か
つらら女は、つららの化身です。東北や新潟などの豪雪地帯に伝わる民話です。
話は、願いから始まります。
独身の男が、自分の家の軒下にぶら下がったつららを見つつ、「このつららのように美しい妻が欲しい」と嘆いていました。
すると、その願いの通り美しい女が現れます。
そして、妻にして欲しいと願うのです。
この女は、つららの化身でした。
東北地方・新潟県の話では、こうなります。
女は男と夫婦になりましたが、なぜか風呂に入るのを嫌がりました。
男は無理に勧めて入浴させます。
その後、男が風呂を覗くと、湯船に氷柱の欠片や櫛が浮かんでいました。
つらら女の漢字表記と読み方
読みは「つららおんな」です。
つららは、軒先などから垂れ下がった氷です。
東北では「しがま」ともいいます。
「氷柱女房」を「しがまにょうぼう」と読むのは、そのためです。
山形県では「すが」といいます。「すが女房」です。
越後国(現・新潟県)では「かねこおり」。「かねこおり女房」です。
土地ごとに、つららの呼び名がそのまま妻の名になっています。
豪雪地帯では、つららは冬の景色そのものです。
軒先に、いくつも下がります。
つらら女(つららおんな)
もっとも一般的な表記。
氷柱女房(しがまにょうぼう)
東北地方・新潟県での呼び名。
つらら女房(つららにょうぼう)
同じものの別の読み。
すが女房(すがにょうぼう)
山形県での呼び名。
かねこおり女房(かねこおりにょうぼう)
越後国(現・新潟県)での呼び名。
つらら女の姿と特徴
つらら女の姿は、美しい女です。
それ以上のことは、語られません。
男が「このつららのように美しい妻が欲しい」と願い、その通りの女が現れます。
そして、消え方に特徴があります。
東北・新潟 … 風呂に入り、湯船に氷柱の欠片や櫛が浮かぶ。
山形(すが女房) … 酒の燗をつけに台所へ行き、水浸しの着物を残して消える。
秋田 … 風呂から上がらず、天井から1本のつららがぶら下がっていた。
残るのは、氷と着物と櫛です。
どれも、溶けた跡です。
熱で消えます。
つらら女の伝承物語
風呂を嫌がる
東北地方・新潟県の話では、兆しがあります。
女は男と夫婦になりましたが、なぜか風呂に入るのを嫌がりました。
理由は言いません。
男は、無理に勧めて入浴させます。
そして、その後。
男が風呂を覗くと、湯船に氷柱の欠片や櫛が浮かんでいました。
溶けています。
秋田県の話は、少し違います。
大雪の夜、とある夫婦の家を一人の女が訪ね、宿を借りたいと頼みました。夫婦は快く承知します。
雪で外出もままならない日々が続き、女は泊まり続けました。
夫婦は気を利かせて風呂を沸かしましたが、女はなかなか入りません。しかし勧めを断りきれず、女は悲しげに入浴しました。
心配した夫婦が覗くと、天井から1本のつららがぶら下がっていました。
台所の火で溶ける
山形県には、すが女房という話があります。
場面は、結婚祝いの席です。
女が酒の燗をつけに台所に行きましたが、なかなか戻りません。
待ちきれない男が台所に行くと、女の姿はありません。
そこには、水浸しの着物がありました。
つららの化身の女は、台所の火の熱で溶けてしまったのです。
祝いの席です。
自分の結婚を祝う場で、酒を温めようとして消えました。
風呂でも、台所でも、火のあるところで消えます。
そして、どの話でも、男が悪気なく勧めています。
温めることが、そのまま別れになります。
つららに貫かれる
越後国(現・新潟県)のかねこおり女房は、まったく違う終わり方をします。
急にやって来た女は男と結婚しましたが、春になると姿を消してしまいました。
男は、逃げられたものと思って悲しみます。
そして、独り暮しの不便さに耐え切れず、別の女と再婚しました。
そして、冬。
軒下に大きなつららがぶら下がっていました。
男は、通行に邪魔といってつららを叩き落とします。
家の中にいた妻が、男の悲鳴を聞きました。
驚いて外へ出ると、男はつららに首を貫かれて死んでいました。
春に消え、冬に戻ってきていました。
そして、叩き落とされました。
つらら女の伝承地域
つらら女は、東北や新潟などの豪雪地帯に伝わります。
東北地方および新潟県では「氷柱女房」(しがまにょうぼう、つららにょうぼう)、山形県では「すが女房」、越後国(現・新潟県)では「かねこおり女房」と呼ばれます。
秋田県にも、宿を借りた女の話が伝わります。
いずれも民話として語られたもので、特定の家や土地に結びついたものではありません。
碑も祠も、この名では見つかっていません。
無い場所を、あるように書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。
つらら女の正体と考えられているもの
つらら女については、次のように整理できます。
一つめは、つららの化身です。男が「このつららのように美しい妻が欲しい」と願い、その通りの女が現れます。 願いが、そのまま形になっています。
二つめは、熱で消えるものです。風呂、台所の火。温めようとしたところで消えます。 残るのは、氷柱の欠片、櫛、水浸しの着物です。
三つめは、季節のものです。かねこおり女房は春になると姿を消し、冬に軒下のつららとして戻ってきました。 つららは、冬にしか存在できません。
四つめは、雪女の系統です。豪雪地帯に伝わり、美しい女が人と暮らし、正体が知れて去るという筋は、雪女の話と重なります。
つらら女は、妖怪というより民話です。 ただ、善意で温めたことが別れになるという筋は、どの土地でも変わりません。
つらら女をめぐる妖怪のつながり
つらら女が登場する作品
つらら女は、民話として伝わった話です。
東北と新潟の豪雪地帯に、土地ごとの呼び名と顛末があります。 氷柱女房、すが女房、かねこおり女房。
資料は昔話の採録が中心です。
つらら女が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
雪と氷の妖怪として、雪女と並べて取り上げられます。
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つらら女についてよくある質問
つらら女はどうやって現れるのですか。
独身の男が軒下のつららを見て「このつららのように美しい妻が欲しい」と嘆いていると、その願いの通り美しい女が現れ、妻にして欲しいと願います。
なぜ風呂を嫌がるのですか。
つららの化身だからです。 男が無理に勧めて入浴させた後、風呂を覗くと湯船に氷柱の欠片や櫛が浮かんでいたといいます。熱で溶けてしまいます。
すが女房とは何ですか。
山形県の話です。結婚祝いの席で、女が酒の燗をつけに台所に行きましたが戻らず、水浸しの着物だけが残っていました。 台所の火の熱で溶けてしまったのです。
かねこおり女房はどうなるのですか。
女は春に姿を消し、男は別の女と再婚します。そして冬、軒下の大きなつららを通行の邪魔だと叩き落とした男が、つららに首を貫かれて死んでいました。
つらら女と併せて覚えたい言葉・用語
しがま(しがま)
東北でのつららの呼び名。
すが(すが)
山形県でのつららの呼び名。
異類婚姻譚(いるいこんいんたん)
人と人以外のものが夫婦になる昔話の類型。