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全国に伝わるもの

コロポックルとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

コロポックル  / コロポックル

人型の妖怪 アイヌの伝承

蕗の葉の下に住むという小人。アイヌの伝承に語られ、先住民説の論争を呼んだ。

コロポックルの姿を描いた図

松浦武四郎 「蕗の下のコロポックル(函館市博物館)」 1888年以前 / パブリックドメイン 出典

コロポックルとはどんな妖怪か

コロポックルはひとことで言えば、蕗の葉の下に住む小人です。

北海道のアイヌに伝わり、名は「蕗の葉の下の人」という意味とされます。大きな蕗の葉を傘のようにさして歩く姿で語られます。

アイヌの人々とは、交流がありました。 夜のあいだに窓から獲物や魚を差し入れてくれた、という話が伝わります。ただし姿を見られることを極端に嫌い、いつも夜、顔を見せずに置いていったといいます。

あるとき、姿を見たいと思った若者が、差し入れの手を無理につかんで引き入れました。現れたのは美しい女でした。

これに怒ったコロポックルは、その土地を去ります。別れ際に呪いの言葉を残したという語りが各地にあります。

明治期には、コロポックルこそアイヌ以前の北海道の先住民だったとする説が唱えられ、学界で大きな論争になりました。この説は、のちに支持を失っています。

コロポックルの漢字表記と読み方

コロポックル」は、アイヌ語の「コロ・ポク・ウン・クル」に由来するとされます。

コロ … 蕗(ふき)
ポク … 下
ウン … にいる
クル … 人

つまり「蕗の葉の下にいる人」です。

北海道の蕗は本州のものより大きく、アキタブキは人の背丈を超えることがあります。葉を傘にできるほど大きいのです。名は、蕗の葉の下に入る背丈をそのまま指します。

表記は「コロポックル」と「コロボックル」が並び立っています。どちらが正しいというものではなく、児童文学では後者が用いられることが多くあります。

コロポックル(ころぽっくる)

もっとも広く使われる表記。

コロボックル(ころぼっくる)

「ボ」と濁る表記。児童文学などで用いられる。

コロポクグル(ころぽくぐる)

アイヌ語の発音に近い表記。

トイチセウンクル(といちせうんくる)

「土の家に住む人」を意味する別の呼び名。

コロポックルの姿と特徴

コロポックルの姿は、次のように語られます。

大きさ … 非常に小さい。蕗の葉の下に入れるほど。
姿 … 人と同じ形。
服装 … 蕗の葉を傘にする。
… 女は口のまわりに入れ墨をしているとされる。
性質 … 姿を見られることを極端に嫌う。

姿を見せないという点が、この妖怪の核心です。夜に来て、窓から手だけを差し入れ、獲物を置いて去る。顔を見せないという約束のうえで、交流が成り立っていました。

伝承では、無理に見られた姿は「美しい女」でした。小さく、身軽な姿です。

見てはいけないという禁忌が、姿の恐ろしさとは無関係に置かれている点は注目に値します。見るなと言われたから見てはいけない。それだけです。

近年は、蕗の葉をさした愛らしい小人として描かれることがほとんどです。

コロポックルの伝承物語

  1. 交流と別れ ─ 見てはならなかった
  2. 先住民説 ─ 明治の大論争
  3. アイヌの伝承のなかで ─ カムイとは別のもの
  4. 現代のコロポックル ─ 児童文学と地域

交流と別れ ─ 見てはならなかった

コロポックルとアイヌの人々のあいだには、取り決めがありました。

コロポックルは夜に来て、窓から手だけを差し入れ、鹿の肉や魚を置いていきます。人は受け取り、代わりに何かを返します。顔を合わせることはありません。

この関係が長く続きました。

ある日、若者が「一度でいいから姿を見たい」と思います。差し入れの手が伸びてきたとき、その手をつかんで引き入れました。

現れたのは、口のまわりに入れ墨をした美しい女でした。

コロポックルは激しく怒りました。そして、その土地を去ることを決めます。

去り際に呪いの言葉を残したと語られます。以後、コロポックルの姿を見た者はいません。

約束を破ったために失われた関係。 鶴の恩返しや雪女と同じ型の話が、ここにもあります。

先住民説 ─ 明治の大論争

明治期、コロポックルは学問の世界で大きな論争を呼びました。

北海道各地で、竪穴住居の跡小さな石器・土器が見つかっていました。これを誰が残したのか。

一部の研究者は、アイヌ以前に別の民族がいたと主張します。それがコロポックルである、というのです。アイヌの伝承に語られる小人が、実在の先住民の記憶だとする説でした。

これに対し、遺跡はアイヌの祖先が残したものであるという反論が出され、激しい論争になります。

現在では、先住民説は支持されていません。 発掘と研究が進み、北海道の遺跡は連続した文化の流れのなかで理解されるようになりました。

しかし、この論争には別の意味もありました。アイヌの伝承が、学問の対象として真剣に扱われたという点です。

妖怪の伝承が、学問の議論を動かした珍しい例です。

アイヌの伝承のなかで ─ カムイとは別のもの

コロポックルを理解するには、アイヌの世界観を知る必要があります。

アイヌの伝承では、あらゆるものにカムイ(神)が宿るとされます。熊、狼、梟、火、水。カムイは人と対等に近い関係を持ち、贈り物を交わします。

コロポックルは人に近いものとして語られます。 神ではなく、人に近い別の集団として語られます。

この区別は重要です。コロポックルとの関係は、神への祈りではなく、隣人との付き合いとして描かれています。物を交換し、約束を守り、破れば関係が終わる。

また、アイヌの伝承にはトイチセウンクル(土の家に住む人)という呼び名もあり、コロポックルと同一とされることがあります。

アイヌの伝承を、本土の妖怪の枠に当てはめて読むと、大切な部分を取り落とします。コロポックルは「小さい妖怪」ではなく、かつて隣にいた人々として語られています。

現代のコロポックル ─ 児童文学と地域

コロポックルは、現代では児童文学を通じて広く知られています。

小さな人々が人知れず暮らしているという設定は、子供向けの物語ととてもよく合いました。蕗の葉の傘という具体的な絵柄も、記憶に残ります。

北海道の各地では、地域のしるしとしてコロポックルが使われています。像、看板、商品の意匠。

このとき注意が要ります。コロポックルはアイヌの伝承に属します。 意匠として使うことと、伝承を尊重することは別のことです。

近年は、アイヌ文化を扱う施設で伝承をアイヌ自身の言葉で伝える取り組みが進んでいます。

コロポックルを知ることは、アイヌの伝承の入口に立つことでもあります。小さな妖怪の話として消費するだけでは、この伝承の半分も見えません。

コロポックルの伝承地域

コロポックルには、訪ねられる伝承地を挙げません。

コロポックルの話は北海道の各地に伝わります。場所は一つに絞れません。 塚も祠も、祀る場所もありません。

明治期の論争で「コロポックルの遺跡」とされた竪穴住居の跡は各地にありますが、その説は現在支持されていません。遺跡をコロポックルの伝承地として案内することは、誤りを広めることになります。

アイヌ文化を伝える施設では、コロポックルを含む伝承が紹介されています。ただしそれは学びの場です。

確かめられないものを、あるように書くことはしません。

コロポックルの正体と考えられているもの

コロポックルの正体については、次のように考えられています。

明治期に唱えられた先住民説は、現在では支持されていません。 北海道の竪穴住居の跡や石器は、アイヌの祖先を含む連続した文化の流れのなかで残されたものと理解されています。コロポックルを実在の民族とする根拠はありません。

小人伝承の一種とする見方が現在は一般的です。小さな人々の話は世界各地にあり、人が住む場所の外側に、別の存在を置くという発想は広く見られます。

交易の記憶とする見方もあります。姿を見せずに物を置いていく形は、沈黙交易と呼ばれる交易の形とよく似ています。言葉の通じない相手と、物だけを交換する。実際にそうした交易があった記憶が、話になったという説明です。

約束の型として見る見方も重要です。見てはならないという禁忌を破って関係が終わる筋は、鶴の恩返しや雪女と同じです。人ならぬものとの付き合い方を教える形といえます。

コロポックルが何であったかは、わかっていません。ただ、この伝承がアイヌの人々のものであることは、忘れてはならない点です。

コロポックルをめぐる妖怪のつながり

コロポックルが登場する作品

コロポックルは、児童文学を通じて広く知られた妖怪です。小さな人々という設定が、子供向けの物語とよく合いました。

ただし、コロポックルはアイヌの伝承に属します。 意匠として使うことと、伝承を尊重することは別のことです。近年は、アイヌ文化を伝える施設で伝承をアイヌ自身の言葉で伝える取り組みが進んでいます。

コロポックルが登場する児童文学

コロボックル物語

小さな人々を描いた児童文学の連作です。コロポックルの名を広く知らしめました。

小人を題材とした各種の作品

人知れず暮らす小さな人々という設定は、子供向けの物語で繰り返し使われます。

コロポックルが登場するゲーム

妖怪ウォッチ

コロポックルを題材にした妖怪が登場します。

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日本の妖怪を扱う各種のゲーム

小人の系統として実装されることがあります。

コロポックルが登場する文化・記録

アイヌ文化を伝える施設

コロポックルを含むアイヌの伝承が、アイヌ自身の言葉で紹介されています。

明治期の学術論争の記録

コロポックル先住民説をめぐる論争は、日本の人類学の初期を示す記録として残っています。

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コロポックルについてよくある質問

コロポックルとは何ですか。

アイヌに伝わる小人です。名は「蕗の葉の下の人」を意味するとされ、大きな蕗の葉を傘にして歩く姿で語られます。

コロポックルはアイヌ以前の先住民だったのですか。

明治期にそう主張する説が唱えられ、大きな論争になりましたが、現在では支持されていません。北海道の遺跡は連続した文化の流れのなかで理解されています。

なぜコロポックルは去ったのですか。

姿を見られることを嫌っていたのに、若者が差し入れの手を無理につかんで姿を見てしまったためです。怒って土地を去り、以後は現れなくなったと語られます。

コロポックルとコロボックルはどちらが正しいのですか。

どちらも用いられます。アイヌ語の発音に近いのは前者ですが、児童文学では後者が使われることが多くあります。

コロポックルに会える場所はありますか。

特定の伝承地はありません。アイヌ文化を伝える施設で伝承が紹介されています。そこは学びの場です。

コロポックルと併せて覚えたい言葉・用語

カムイ(かむい)

アイヌの伝承における神。動物や自然物に宿るとされる。コロポックルは人に近いものとして語られる。

アキタブキ(あきたぶき)

北海道などに生える大型の蕗。人の背丈を超えることがある。

沈黙交易(ちんもくこうえき)

互いに顔を合わせず、物だけを置いて交換する交易の形。コロポックルの話との類似が指摘される。