国土のばけもの。姿や足跡を見た者は長生きできないという。
モシリシンナイサムとはどんな妖怪か
モシリシンナイサムは、アイヌに伝わる妖怪です。
名は「国土のばけもの」の意です。
姿が伝わっています。
体に白と黒のまだら模様のある、馬ほどの大きさの妖怪で、村外れの湿地帯にいます。
馬ほどの大きさです。
見てはいけません。
その姿や足跡を目にした者は長生きできず、不幸な人生を送る羽目になってしまうといいます。
足跡だけでも危険です。
そして、姿を変えます。
色々な動物に姿を変えて人間をつけ狙うともいわれます。
モシリシンナイサムの漢字表記と読み方
読みは「もしりしんないさむ」です。
名は三つの語からできています。
モシㇼは「国」、シンナイは「別の」、サㇺは「側」を意味します。
あわせて「別の国の側」です。
「他の世界から来る者」または「世界の乱入者」という意味で付けられた名前とされます。
外から来たもの、という名です。
そして、対になる妖怪がいます。
ケナシウナラペ(木原の姥)です。 どちらも、同じ失敗から生まれました。
モシリシンナイサム(もしりしんないさむ)
もっとも一般的な表記。
モシㇼシンナイサㇺ(もしりしんないさむ)
アイヌ語の小文字を用いた表記。
モシリシンナイサ(もしりしんないさ)
語尾の違う言い方。
モシリシンナイサムの姿と特徴
モシリシンナイサムの姿は、次のように伝わります。
模様 … 白と黒のまだら模様。
大きさ … 馬ほど。
居場所 … 村外れの湿地帯。
変身 … 色々な動物に姿を変える。
まだら模様の、大きな獣です。
見分け方があります。
道端にいたはずの鹿が一瞬にしていなくなってしまったら、これはモシリシンナイサムに狙われている証拠だといいます。
急に消える獣です。
そして、見た者に害が及びます。
その姿や足跡を目にした者は長生きできず、不幸な人生を送る羽目になってしまうといいます。
モシリシンナイサムの伝承物語
火起こしの失敗から生まれる
モシリシンナイサムには、生まれの話があります。
創造神コタンカㇻカムイが、人類に火を授けようとして、白楊(ドロノキ)を擦る摩擦熱による発火法で火を起こそうとしましたが、火を起こせませんでした。
失敗しました。
その折に捨てられた道具が、妖怪になります。
火鑚臼(ひきりうす)がモシリシンナイサム、火切り杵がケナシウナラペだったといわれます。
臼と杵です。
モシリシンナイサムは妖魔神となり、ケナシウナラペは木原の魔女となりました。
火を起こすための道具が、火にならず妖怪になりました。
役に立たなかったものが、害をなすものになるという形です。
イタチに投げ返される
モシリシンナイサムには、負ける話があります。
大昔、イタチの神が天から降りて来て地上に住もうとしたときのことです。
先住者がいました。
古くから世界の端に住んでいたモシリシンナイサムが力比べを申し込み、いきなりイタチを火の中に投げ込みました。
卑怯な始まりです。
モシリシンナイサムが喜んでいると、こうなります。
焼け死んだはずのイタチが蘇って外から現れ、逆にモシリシンナイサムを火の中へ投げ返しました。
モシリシンナイサムは逃げようとします。
しかしイタチに阻まれ、そのまま焼け死にました。
そして、灰から獣が生まれます。
その黒や白や赤色の灰からは、キツネ(やネコ)といった動物が誕生しました。 こうした経緯でキツネは悪の心を持ち、人を化かすのだといいます。
モシリシンナイサムの伝承地域
モシリシンナイサムは、北海道のアイヌに伝わります。
棲むとされたのは村外れの湿地帯です。
特定の土地の名は伝わっていません。
対になるケナシウナラペ(木原の姥)は、沙流郡や幌別地方(胆振)で「ケナシコルウナルペ」と呼ばれます。
湿地そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
モシリシンナイサムの正体と考えられているもの
モシリシンナイサムについては、次のように整理できます。
一つめは、外から来た者です。モシㇼは「国」、シンナイは「別の」、サㇺは「側」を意味し、「他の世界から来る者」「世界の乱入者」という意味とされます。
二つめは、見てはいけないものです。その姿や足跡を目にした者は長生きできず、不幸な人生を送る羽目になってしまうといいます。
三つめは、捨てられた道具です。創造神が火起こしに失敗した折に捨てられた火鑚臼がモシリシンナイサム、火切り杵がケナシウナラペになりました。
四つめは、キツネの起源です。イタチの神に火の中へ投げ返されて焼け死に、その灰からキツネが誕生しました。こうした経緯でキツネは悪の心を持ち、人を化かすといいます。
五つめは、変身です。色々な動物に姿を変えて人間をつけ狙うとされ、道端にいたはずの鹿が一瞬にしていなくなったら狙われている証拠だといいます。
この妖怪は、湿地に近づかないための話でもあります。 村外れの湿地は、実際に危険な場所です。
モシリシンナイサムをめぐる妖怪のつながり
モシリシンナイサムが登場する作品
モシリシンナイサムは、起源の話に組み込まれた妖怪です。
火起こしの失敗から生まれ、イタチに焼かれ、その灰からキツネが生まれました。 一体の話が、別の獣の由来にもなっています。
資料はアイヌ文化の研究書が中心です。
モシリシンナイサムが登場する研究
モシリシンナイサムが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
アイヌの伝承の妖怪として、ケナシコルウナルペと並べて取り上げられます。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
モシリシンナイサムについてよくある質問
名前の意味は何ですか。
モシㇼは「国」、シンナイは「別の」、サㇺは「側」を意味し、「他の世界から来る者」または「世界の乱入者」という意味で付けられた名前とされます。
どんな姿ですか。
体に白と黒のまだら模様のある、馬ほどの大きさの妖怪で、村外れの湿地帯にいるとされます。
見るとどうなりますか。
その姿や足跡を目にした者は長生きできず、不幸な人生を送る羽目になってしまうといいます。足跡だけでも危険です。
どうやって生まれたのですか。
創造神コタンカㇻカムイが火起こしに失敗した折に捨てられた火鑚臼がモシリシンナイサム、火切り杵がケナシウナラペになったといわれます。
モシリシンナイサムと併せて覚えたい言葉・用語
火鑚臼(ひきりうす)
摩擦で火を起こす道具の受け側。モシリシンナイサムの元とされる。
コタンカㇻカムイ(こたんからかむい)
アイヌの創造神。国土を作ったとされる。
白楊(どろのき)
ヤナギ科の木。火起こしに使われて失敗したという。