本文へ移動

石川県

そうはちぼん(そうはちぼん)とはどんな妖怪か|姿と伝承

そうはちぼん  / ソウハチボン

そのほか火の妖怪 各地の伝説

能登の眉丈山を夜ごと進み、人を食べる許しを得ようとして鶏の声に阻まれる怪火。

そうはちぼんの姿を描いた図

運動会プロテインパワー 「不動滝(石川県鹿島郡中能登町)」 2023年 / CC BY-SA 出典

そうはちぼんとはどんな妖怪か

そうはちぼんは、能登の眉丈山を北から南へ動く怪火です。春木の六所の宮から現れ、羽咋の一の宮へ向かいます。

人を食べたいという願いを抱えた火です。一度でよいから人間の肉を食べたいと願い、権現から出された条件を果たそうと、夜ごと同じ道を急ぎます。

そうはちぼんの漢字表記と読み方

「そうはちぼん」と読みます。「ちゅうはちぼん」とも呼ばれ、中能登町では「そうはち坊」と表記して物語が紹介されています。

そうはちぼん(そうはちぼん)

鹿島郡誌に見える呼び名。

ちゅうはちぼん(ちゅうはちぼん)

同じ怪火を指す別名。

そうはち坊(そうはちぼん)

中能登町の伝承紹介で用いられる表記。

そうはちぼんの姿と特徴

そうはちぼんは、夜の眉丈山をゆっくり移動する怪火として見えます。人や獣の身体は語られず、遠くの集落から山腹を進む火の玉が、そのまま姿になります。

そうはちぼんの伝承物語

  1. 眉丈山に、北から南へ進む火が現れる
  2. 人を食べたいと、権現へ願い出る
  3. 良川を過ぎ、金丸で道に迷う
  4. 柳田で一番鶏が鳴き、引き返す
  5. 権現が鶏を鳴かせ、人を守る

眉丈山に、北から南へ進む火が現れる

日が暮れたあと、久江や小田中、高畠の集落から眉丈山を眺めると、怪しげな火の玉が見えました。火は山の中腹を、北から南へゆっくり動いていきます

人々はその火を、そうはちぼんと呼びました。出発するのは春木の六所の宮。目指す先は、羽咋の一の宮にある六万坊です。

人を食べたいと、権現へ願い出る

そうはちぼんには、一度でよいから人間の肉を食べてみたいという願いがありました。そこで、一の宮の権現へ許しを求めます。

権現は、日が暮れて六所の宮を出発し、夜明け前の一番鶏が鳴くまでに一の宮へ来られたなら、願いを聞こうと答えました。そうはちぼんは喜び、次の夜を待ちます。

良川を過ぎ、金丸で道に迷う

夜になると、そうはちぼんは六所の宮を飛び立ちます。夜八ツ時、現在の午前二時ごろには良川の山を過ぎました。

一の宮までは、まだ先です。金丸のあたりへ来ると火はまごつき、思うように進めなくなります。それでも人を食べる願いをかなえるため、夜明け前の到着を目指します。

柳田で一番鶏が鳴き、引き返す

そうはちぼんが柳田まで来たとき、一番鶏の声が響きました。約束の時刻を過ぎたため、もう一の宮へ進むことはできません。火は夜が明けないうちに、六所の宮へ戻っていきました。

翌夜も、その次の夜も同じです。そうはちぼんが柳田へ着くと、決まったように鶏が鳴きます。

権現が鶏を鳴かせ、人を守る

そうはちぼんは、夜明けの時刻だけが自分を邪魔していると思っていました。しかし鶏を鳴かせていたのは、人を食べさせまいとした一の宮の権現でした。

怪火は約束を破れず、権現は正面から戦わずに人々を守ります。夜ごと眉丈山を進み、柳田から引き返す光景には、そうはちぼんの執念と、権現の仕掛けた終わらない足止めが映っています。

そうはちぼんの伝承地域

伝承は、春木の六所の宮から良川・金丸・柳田を経て、羽咋の一の宮を目指す道筋を語ります。地図は出発地の地域を示します。

春木の六所の宮周辺(はるきのろくしょのみやしゅうへん)

そうはちぼんの出発地

地図で開く

春木の六所の宮周辺の所在地:石川県鹿島郡中能登町春木周辺

怪火はここから現れ、眉丈山を南へ進むと語られます。

示しているのは眉丈山の一帯です。

そうはちぼんの正体と考えられているもの

そうはちぼんは、人を食べる許しを得ようと眉丈山を飛び、一番鶏の声に阻まれて六所の宮へ戻る能登の怪火です。

そうはちぼんをめぐる妖怪のつながり

そうはちぼんが登場する作品

そうはちぼんは、終わらない足止めの話です。

人を食べたい。その願いを一の宮の権現へ申し出ると、夜明け前に着けたなら聞こうと答えます。 ところが柳田まで来ると、決まって一番鶏が鳴きます。

鶏を鳴かせていたのは、権現でした。正面から戦わずに人を守る。怪火は約束を破れず、夜ごと同じ場所から引き返します。

そうはちぼんが登場する事典

日本妖怪大事典

村上健司による妖怪事典。能登の怪火そうはちぼんを、採録元とともに扱っています。

Amazonで本・漫画を探す

そうはちぼんが登場する民俗学

綜合日本民俗語彙

全国の民俗語彙を集めた辞典。各地の怪火の呼び名が並び、比較の手がかりになります。

Amazonで本・漫画を探す

中部の妖怪の本を探す

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

そうはちぼんについてよくある質問

そうはちぼんとはどんな妖怪ですか。

能登の眉丈山を夜ごと進み、人を食べる許しを得ようとして、一番鶏の声に阻まれる怪火です。

そうはちぼんはどこへ向かいますか。

春木の六所の宮から羽咋の一の宮にある六万坊を目指し、良川・金丸・柳田を通ると語られます。

そうはちぼんは人を食べましたか。

食べられませんでした。柳田へ着くたび権現が一番鶏を鳴かせたため、約束を果たせず引き返します。

そうはちぼんと併せて覚えたい言葉・用語

眉丈山(びじょうざん)

能登の邑知平野に沿って連なる丘陵。そうはちぼんが進む舞台です。

一番鶏(いちばんどり)

夜明けを告げて最初に鳴く鶏。物語では約束の期限を知らせます。

権現(ごんげん)

神が仏の姿を借りて現れるという考えに基づく呼び名。

そうはちぼんの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 中能登町広報「中能登百物語 そうはち坊」
  2. 国立国会図書館デジタルコレクション『石川県鹿島郡誌』