茨城県で人魂や魂を指し、青白い火の玉となって近しい人へ死を知らせに来ると語られた地域名。

Abasaa 「牛久沼(茨城県龍ケ崎市)」 2010年 / パブリックドメイン 出典
タマセとはどんな妖怪か
タマセは、茨城の言葉で人魂のことです。
青白い火の玉が長い尾を引いて飛びます。亡くなる人の体を離れ、近しい人のもとへ来る。訃報より先に着く火です。
龍ケ崎市の方言資料には、こんな言い回しが収められています。
お寺の墓場から、タマセが飛んで行ったそうだよ
専門の言葉ではありませんでした。 目の前の怪火を語る、日常の言葉です。
タマセの漢字表記と読み方
「たませ」と読みます。
茨城県の民俗記録と、龍ケ崎市の方言資料に残る言葉です。全国で使う「人魂(ひとだま)」に対して、タマセは土地の言い方にあたります。「たま」は魂、「せ」は語尾とみられます。
タマセ(たませ)
茨城県で人魂や魂を指す呼び名。
魂(たましい)
龍ケ崎市の方言資料がタマセの意味として挙げる言葉。
タマセの姿と特徴
タマセは青白い火の玉です。長い尾を引いて飛びます。
顔も手足もありません。体を離れた魂が、そのまま光になっている という考え方です。石燕の描いた人魂も、屋根の軒先から流れ出す一筋の火として描かれています。
タマセの伝承記録
青白い火が、長い尾を引いて飛ぶ
夜空に青白い火の玉が浮かびます。火は一点で燃え続けるのではなく、長い尾を引きながら空を移動します。その光を、茨城ではタマセと呼びました。
火は一点で燃え続けず、尾を引きながら移動します。だから見た者は、どこから来て、どこへ行ったかを語ります。行き先のある火であることが、タマセの話の芯です。
臨終の人を離れ、親しい人へ向かう
タマセは、人が亡くなる直前に身体から抜け出し、近しい親類のもとへ向かうといいます。離れた場所にいる人へ、死が近いことを告げに来る魂の火です。
ある話では、嫁いだ娘の家で夜に大きな音がしました。その時刻に、実家の祖母が息を引き取っています。娘が戻って死を知り、あの晩の音がタマセの訪れだったと語られました。
距離は関係ありません。 知らせは火の速さで届きます。
墓場から飛び立つタマセを見る
タマセは墓場からも飛びます。臨終の床から抜ける魂と、墓場から立つ火。現れる場所は違っても、人の魂が光になって移動するという一つの考えでつながっています。
柳田国男は、魂が物に乗って運ばれるという考え方が広く根を張っていたことを書いています。
神の靈、死者の幽魂も、等しく木の枝に乘つて運ばれて居たのである。
木の枝に乗る魂と、火になって飛ぶ魂。どちらも、魂が場所を移すものとして語られてきました。
人魂の土地名として、死の知らせを運ぶ
青白い色、長い尾、親しい人のもとへ向かう動き。 この三つがタマセの輪郭です。
人魂は全国の呼び名ですが、タマセという言い方には死の知らせを運ぶ役がはっきり残りました。遠くで起きた死を、ひと筋の火が家族へ届けます。
タマセの伝承地域
タマセは茨城県内で採録された人魂の呼び名です。地図は方言用例が残る龍ケ崎市の地域を示します。
龍ケ崎市(りゅうがさきし)
タマセの方言用例が残る地域
龍ケ崎市の所在地:茨城県龍ケ崎市
墓場からタマセが飛ぶという用例が収録されています。
特定の寺や墓地を怪異の発生地点として示すものではありません。
タマセの正体と考えられているもの
タマセの正体は、死の知らせそのものです。
電話も電報もない時代、遠くの家で誰が死んだかは、人が歩いて伝えるほかありませんでした。その到着より早く、夜空を火が飛ぶ。知らせが届く前に、もう分かっていた という体験が、この言葉に残っています。
光の正体としては、湿地から出るリン化水素の自然発火が挙げられます。茨城は霞ヶ浦・利根川の低湿地を抱える土地です。火が出る条件と、死を待つ心の両方がそろっていました。
タマセをめぐる妖怪のつながり
タマセが登場する作品
タマセは、人魂の別名です。
タマセ、タマガイ、ヒトダマ。 魂が身体を離れて火となる、という考え方は全国にあり、呼び名だけが土地ごとに変わります。
『綜合日本民俗語彙』のような辞典は、その分布ごと記録しています。妖怪というより、死の前後に起きる出来事へ付けられた名です。
タマセが登場する民俗学
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タマセについてよくある質問
タマセとはどんな妖怪ですか。
茨城県で人魂や魂を指す呼び名です。青白い火の玉となって尾を引き、近しい人へ死を知らせに来ると語られました。
タマセは何と読みますか。
「たませ」と読みます。龍ケ崎市の方言資料にも、人魂・魂の意味で収録されています。
タマセと人魂は別の妖怪ですか。
別種というより、茨城県で人魂を表す地域の呼び名です。土地の用例と死を知らせる話が残っています。
タマセと併せて覚えたい言葉・用語
臨終(りんじゅう)
人が亡くなろうとする最期の時。
人魂(ひとだま)
人の魂が身体を離れ、火の玉となって飛ぶ姿。
タマセの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。