沖縄でヒーダマと呼ばれ、死や家の不幸の予兆、ヨーカビーに見る火として記録された地域ごとの怪火。

Felix Filnkoessl 「座間味島の海岸(沖縄県座間味村)」 2014年 / CC BY-SA 2.0 出典
火魂とはどんな妖怪か
火魂は、沖縄に伝わる火の玉です。
読みは「ひだま」または「ひーだま」。現地では「ヒーダマ」と呼ばれます。国際日本文化研究センターには、座間味村、粟国村、恩納村で採録された異なる記録があります。
座間味島では、ガジュマルの上に大きな赤い火の玉が光り、数日後に近所の老人が亡くなった話と、手のひらほどの火が尾を引いて飛ぶ話が記録されました。粟国村ではヨーカビーの日に高い山からヒーダマーを見ます。恩納村では、家や墓の上を飛ぶ火の玉が不幸の前触れとされます。
火魂は一体の妖怪の経歴ではなく、沖縄各地で火の玉に与えられた呼び名と、地域ごとに異なる意味を持つ怪火の記録です。
火魂の漢字表記と読み方
「火魂」は一般に「ひだま」と読まれ、沖縄の記録では「ヒーダマ」「ヒーダマー」と表記されます。
座間味村と恩納村のカードは「ヒーダマ」、粟国村のカードは長音を伴う「ヒーダマー」です。同じ火の玉を指す近い呼称ですが、採録地と場面が異なり、予兆の意味も一様ではありません。
火魂(ひだま)
日文研カードの漢字欄に記される表記。
ヒーダマ(ひーだま)
座間味村・恩納村の記録で用いられる片仮名表記。
ヒーダマー(ひーだまー)
粟国村のヨーカビーに関する記録の表記。
火魂の姿と特徴
火魂の姿は記録ごとに異なります。座間味村の1965年の記録には、大きな赤い火の玉と、手のひらほどの大きさで尾を引く火の玉の二種類が出てきます。
大きな火の玉はガジュマルの木の上で一瞬強く光り、跡形もなく消えました。現れるのは夕方7時から8時ごろ、屋根ほどの高さとされます。小さな火の玉は尾を引きながら、しばらく飛びました。
恩納村の記録では、火魂が家や墓の上を飛びます。粟国村ではヨーカビーの日に、高い場所からその火を探します。顔や手足を持つ生き物ではなく、飛ぶ光として目撃される怪異です。
火魂の伝承記録
座間味島で光った二種類のヒーダマ
1965年の「座間味島調査報告(葬制・墓制)」は、ヒーダマには二種類あると記録します。
一つは、ある家のガジュマルの木の上で大きな赤い火の玉が一瞬強く光り、すぐに跡形もなく消えたという話です。その数日後、隣の老人が亡くなりました。この種類は夕方7時から8時ごろ、屋根ほどの高さに現れるとされます。
もう一つは手のひらほどの火の玉です。こちらは尾を引き、しばらく空を飛ぶといいます。同じ座間味島のヒーダマでも、大きさ、飛び方、死との結び付きが異なる二つの姿が記録されています。
粟国村のヨーカビーに見るヒーダマー
1968年の粟国村の記録では、旧暦八月ごろのヨーカビーに、人々が高い山へ上ってヒーダマーを見ました。火の上がり方から、どの家に何が起こるかを語る場面がありました。
記録には、見えた内容をみだりに他人へ話してはいけないこと、うそを言ってはいけないことが示されます。告げられた家ではユタに祈願を頼むという流れもあります。
ここでの火魂は、空を飛ぶ怪物を追う話ではありません。定められた日に高所から火を見て、家の行く末を読み取る年中行事と結び付いた怪火です。
恩納村で家と墓の上を飛ぶヒーダマ
1969年の恩納村の記録では、ヒーダマがどこを飛ぶかによって、予兆を受ける家族が読み分けられました。
ある家の上を火魂が飛ぶと、その家族に不幸がある。墓の上を飛ぶと、その墓に関わる家族に不幸がある。火魂は不幸そのものを起こす怪物というより、これから起こることを空から知らせる光として語られます。
座間味村では老人の死、粟国村ではヨーカビーの占い、恩納村では家や墓と不幸が結び付きます。共通するのは飛ぶ火ですが、その意味は採録地域によって異なります。
火魂の伝承地域
公的データベースで確認できる採録地は、座間味村、粟国村、恩納村です。三つの地域では、火魂の姿や予兆の読み方が異なります。
地図は各記録の市町村範囲を示します。話に出る個人宅、ガジュマル、墓、高い山の正確な場所は公表カードから特定できません。
座間味村(ざまみそん)
二種類のヒーダマの採録地
座間味村の所在地:沖縄県島尻郡座間味村
1965年の「座間味島調査報告」に大きな赤い火の玉と尾を引く小さな火の玉が記録されています。
個人宅やガジュマルの現位置は示されていません。
粟国村(あぐにそん)
ヨーカビーのヒーダマーの採録地
粟国村の所在地:沖縄県島尻郡粟国村
1968年の記録で、ヨーカビーの日に高い山からヒーダマーを見るとされます。
特定の山頂や観察地点は示されていません。
火魂の正体と考えられているもの
火魂の正体は確定していません。遠くの灯火、流星、火を伴う自然現象などを連想できますが、三地域の記録は物理的な原因を説明していません。
座間味村では大きさと飛び方、粟国村ではヨーカビーの観察、恩納村では家と墓の上を飛ぶ位置が意味を持ちます。共通するのは火のような光であり、一つの姿や能力にまとめることはできません。
火魂は、沖縄の空に見える火を、死、家の不幸、年中行事の予兆として読み取った複数の地域伝承の呼び名です。
火魂をめぐる妖怪のつながり
火魂が記録された資料
火魂の記録は1960年代の沖縄各地の民俗調査に残っています。座間味村の二種類の火、粟国村のヨーカビー、恩納村の家と墓の予兆は、同じ呼称が地域ごとに異なる場面で使われたことを示します。
火魂が記録された民俗資料
座間味島調査報告(葬制・墓制)
1965年の『沖縄民俗』10号に掲載された、座間味村のヒーダマ記録。
ヨーカビーの記録
1968年に採録された、粟国村でヒーダマーを見る行事の記録。
恩納村のヒーダマ記録
1969年に採録された、家や墓の上を飛ぶ火と不幸の予兆の記録。
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火魂についてよくある質問
火魂とはどんな妖怪ですか。
沖縄各地でヒーダマと呼ばれ、死や家の不幸の予兆、ヨーカビーに見る火として記録された怪火です。座間味村、粟国村、恩納村では姿や意味が異なります。
火魂は何と読みますか。
「ひだま」と読みます。沖縄の採録では「ヒーダマ」、粟国村のヨーカビーに関する記録では長音を伴う「ヒーダマー」と表記されます。
火魂はどの資料にありますか。
座間味村、粟国村、恩納村の1960年代の民俗調査記録を、国際日本文化研究センターのデータベースで確認できます。
火魂の正体は分かっていますか。
一つの現象には確定していません。記録ごとに大きさ、飛び方、見られる日、予兆の意味が異なり、同じ呼称を持つ地域ごとの怪火として残っています。
火魂と併せて覚えたい言葉・用語
火魂(ひだま)
沖縄で火の玉を指す名として語られ、台所の火や火災の予兆と結び付けられた怪火。
ヨーカビー(よーかびー)
粟国村の記録で、人々が高い山からヒーダマーを見る日。旧暦八月ごろの行事。
ユタ(ゆた)
粟国村のヨーカビー記録で、火の予兆を告げられた家が祈願を頼む宗教者。
火魂の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。