妊婦が産むといわれた妖怪の総称。オケツ、血塊などがある。
産怪とはどんな妖怪か
産怪は、日本各地に伝わる妊婦が産むといわれる妖怪です。
背景が説明されています。
かつての医学が発達していなかった頃の日本では、出産は現在とは比較にならないほど大変であり、
また受胎から間もない胎児が奇異な姿に映ることも理解されていなかったといいます。
そして、迷信が深く信じられていました。
そのために流産で産まれた胎児、早産などの異常出産で産まれた奇形児や未熟児が、これらのように妖怪視されたといわれます。
地方ごとに名があります。
オケツ(岡山県)、血塊(埼玉県・神奈川県)、ケッケ(長野県)。
産怪の漢字表記と読み方
読みは「さんかい」です。
産にまつわる怪、という総称です。
地方ごとの名が並びます。
オケツ(岡山県)/血塊(埼玉県・神奈川県)/ケッケ(長野県)。
そして、「血塊」には別の意味もあります。
小学館のデジタル大辞泉は「けっかい」について「猿の一種、ロリスの俗称。江戸時代、見世物にされた。」としています。
上野動物園はスローロリスの説明を「マレー半島では『コウカン』と呼ばれ、それが種名となってかつては『コンカン』とか『ケツカイ』とか呼ばれたこともありました」と記述していました。
産怪(さんかい)
総称としての名。
オケツ(おけつ)
岡山県での呼び名。
血塊(けっかい)
埼玉県・神奈川県での呼び名。
ケッケ(けっけ)
長野県での呼び名。
産怪の姿と特徴
産怪の姿は、地方によって違います。
オケツ(岡山県)
外観は亀に似ており、背には蓑毛が生えている。
生まれるとすぐに家の縁の下へ駆け込もうとする。
血塊(埼玉県・神奈川県)
舌が二枚有り毛が逆さに生えている。
または口や鼻が牛に似て毛むくじゃらの姿をしている。
亀と、牛です。
どちらも、生まれてすぐに動きます。
縁の下へ、あるいは囲炉裏の自在鉤を登ります。
産怪の伝承物語
すぐに殺さねばならない
オケツには、厳しい言い伝えがあります。
出産時に注意しなければ、赤ん坊の替わりにこの妖怪が産まれてしまうといいます。
赤ん坊の代わりです。
外観は亀に似ており、背には蓑毛が生えている。生まれるとすぐに家の縁の下へ駆け込もうとするといいます。
縁の下へ逃げます。
そして、逃がしてはいけません。
すぐに殺してしまわなければならず、取り逃がすと寝ている妊婦の真下に来て、その妊婦は死んでしまうといいます。
母が死にます。
産後の母体の急変を説明する話として読むと、この厳しさの意味が見えてきます。
屏風を巡らせる
血塊には、具体的な備えがありました。
埼玉県浦和地方には、出産時に屏風を巡らせる風習が伝わっており、
これは血塊が縁の下に潜り込むことを阻むためとされています。
屏風で囲みます。
神奈川県では、別の道具を使いました。
神奈川県足柄上郡三保村玄倉(現・山北町)では、
産み落とされた血塊は囲炉裏の自在鉤を登り出すので、血塊を叩くために前もってしゃもじを自在鉤に付けておくといいます。
しゃもじを吊しておきます。
自在鉤は、囲炉裏の上に吊した、鍋を掛ける鉤です。
出産の場に、あらかじめ道具を用意しておくという点で、どちらも同じ形です。
見世物にされたもの
「血塊」には、別の実体があったようです。
民俗学者・日野巌は幼少時、見世物小屋で出し物にされていた血塊を見たと語っています。
見世物です。
小屋では、とある女性が大学病院で産み落としたものといわれていました。
しかし、日野は違うと見ました。
南洋に生息するヨザルを手なずけて見世物にしたものと指摘しています。
猿でした。
辞書にも、その痕跡が残っています。
小学館のデジタル大辞泉は「けっかい」を「猿の一種、ロリスの俗称。江戸時代、見世物にされた。」としています。
上野動物園も、スローロリスがかつて「ケツカイ」と呼ばれたことがあると記述していました。
産怪の伝承地域
産怪は、日本各地に伝わります。
岡山県(オケツ) … 外観は亀に似ており、背には蓑毛が生えているといいます。
埼玉県浦和地方(血塊) … 出産時に屏風を巡らせる風習が伝わり、血塊が縁の下に潜り込むことを阻むためとされます。
神奈川県足柄上郡三保村玄倉(現・山北町) … 血塊を叩くために前もってしゃもじを自在鉤に付けておくといいます。
長野県 … ケッケといいます。
これは出産と人の身体に関わる事柄です。 特定の家を挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。
産怪の正体と考えられているもの
産怪については、次のように整理できます。
一つめは、総称です。日本各地に伝わる妊婦が産むといわれる妖怪であり、オケツ、血塊、ケッケなどの名があります。
二つめは、背景です。かつては出産は現在とは比較にならないほど大変であり、受胎から間もない胎児が奇異な姿に映ることも理解されていなかったため、流産や異常出産で産まれた子が妖怪視されたといわれます。
三つめは、備えです。埼玉県浦和地方では出産時に屏風を巡らせ、神奈川県ではしゃもじを自在鉤に付けておくという風習がありました。
四つめは、母の危険です。オケツは取り逃がすと寝ている妊婦の真下に来て、その妊婦は死んでしまうといいます。
五つめは、見世物です。日野巌は、見世物小屋の「血塊」を南洋に生息するヨザルを手なずけて見世物にしたものと指摘しています。
この項は、出産の危険を語る言葉です。 母子ともに命の危うい場面が、妖怪の名で伝えられました。
産怪をめぐる妖怪のつながり
産怪が登場する作品
産怪は、出産の危険を語る言葉です。
屏風を巡らせ、しゃもじを吊す。どちらも、産の場に備えた具体的な作法でした。
資料は各地の民俗の記録が中心です。
産怪が登場する研究
日野巌の記録
見世物小屋の血塊を、南洋のヨザルを手なずけたものと指摘しています。
産怪が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
出産にまつわる怪異として、産女や姑獲鳥と並べて取り上げられます。
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産怪についてよくある質問
産怪とは何ですか。
日本各地に伝わる妊婦が産むといわれる妖怪です。オケツ(岡山県)、血塊(埼玉県・神奈川県)、ケッケ(長野県)などの名があります。
オケツとはどんな姿ですか。
外観は亀に似ており、背には蓑毛が生えているといいます。生まれるとすぐに家の縁の下へ駆け込もうとするとされます。
どんな備えをしたのですか。
埼玉県浦和地方では出産時に屏風を巡らせる風習があり、血塊が縁の下に潜り込むことを阻むためとされました。神奈川県ではしゃもじを自在鉤に付けておくといいます。
見世物の血塊とは何ですか。
民俗学者・日野巌が幼少時に見世物小屋で見たもので、南洋に生息するヨザルを手なずけて見世物にしたものと指摘しています。
産怪と併せて覚えたい言葉・用語
自在鉤(じざいかぎ)
囲炉裏の上に吊した、鍋を掛ける鉤。
ケッケ(けっけ)
長野県での血塊の呼び名。
日野巌(ひのいわお)
民俗学者。見世物の血塊の正体を指摘した。