瀬田の唐橋で箱を託す美女。中には目玉が詰まっている。
目玉しゃぶりとはどんな妖怪か
目玉しゃぶりは、瀬田の唐橋に現れた女の妖怪です。
近江国(現・滋賀県)の橋であり、女のすがたをした妖怪とされます。
その原話は『今昔物語集』巻第二十七第二十一「美濃国紀遠助値女霊遂死語」に記されています。
姿は、人の女です。
外見は人間の女性のようで、その美しさは到底この世の者とは思えないほどだといいます。
そして、頼みごとをします。
旅などで唐橋を渡る人がいると、絹の布で包まれた箱を差し出して「橋の袂にいる女の人にこれを渡して」と頼みます。
念を押します。
相手がそれを受け取ると「絶対に中を見ないで」と言います。
目玉しゃぶりの漢字表記と読み方
読みは「めだましゃぶり」です。
この名は、新しいものです。
「目玉しゃぶり」という呼称は、児童向けに出版された南條武『完全図解シリーズ 妖怪ミステリー』(1974年)にあるものです。
同書(あるいはその情報)を参考とした図書には、その名称が使われつづけています。
もとになった本には、この名がありません。
その参考になったと見られる早川純夫『日本の妖怪』(1973年)ではそのような呼称は無く、紹介文章のタイトルも「橋の上の女」となっています。
そして、原話はさらに古いものです。
『今昔物語集』巻第二十七第二十一です。
目玉しゃぶり(めだましゃぶり)
1974年の児童向け図書での呼び名。
橋の上の女(はしのうえのおんな)
1973年『日本の妖怪』での題。
美濃国紀遠助値女霊遂死語(みののくにきのとおすけおんなのりょうにあいてついにしぬること)
『今昔物語集』での原話の題。
目玉しゃぶりの姿と特徴
目玉しゃぶりの姿は、美しい女です。
外見は人間の女性のよう。
その美しさは到底この世の者とは思えないほど。
恐ろしい姿ではありません。
手には、箱があります。
絹の布で包まれた箱です。
中身は、渡すときには見えません。
その中には人間からえぐり取られた目玉が大量に入っていたといいます。
大量の目玉です。
早川純夫『日本の妖怪』では、箱の中に納められているものには目玉以外に、原話に登場する男の摩羅も記されています。
目玉しゃぶりの伝承物語
橋の袂まで運べば済む
この妖怪は、害を与えない道を用意しています。
旅などで唐橋を渡る人がいると、絹の布で包まれた箱を差し出して「橋の袂にいる女の人にこれを渡して」と頼みます。
渡すだけの用事です。
相手がそれを受け取ると「絶対に中を見ないで」と念を押します。
条件は一つだけです。
そして、実際にその女はいます。
箱を受け取った者が橋を渡って行くと、その言葉通りに橋の袂に別の女性がいます。
嘘ではありませんでした。
頼まれた通り箱を渡すと何事も起きずに済むといいます。
運べば、それで終わります。
中には目玉が詰まっていた
破る者が、出ました。
言いつけに背いてある者が渡された箱の中を覗いてみたといいます。
覗きました。
そこにあったものです。
その中には人間からえぐり取られた目玉が大量に入っていたといいます。
人からえぐり取ったものです。
大量、とあります。
そして、罰が来ます。
箱を開けた者は高熱を出すなど原因不明の病気にかかり、やがては命を落としてしまいます。
高熱です。
死んだあとに、わかることがあります。
その死体からは、なぜか目玉が消えているといいます。
箱の中身が、増えました。
今昔物語集にさかのぼる
この話には、古い原型があります。
『今昔物語集』巻第二十七第二十一「美濃国紀遠助値女霊遂死語」です。
平安時代の説話集です。
そして、名前は後からのものです。
「目玉しゃぶり」という呼称は、児童向けに出版された南條武『完全図解シリーズ 妖怪ミステリー』(1974年)にあるものです。
同書(あるいはその情報)を参考とした図書には、その名称が使われつづけています。
その一つ前の本では、違いました。
早川純夫『日本の妖怪』(1973年)ではそのような呼称は無く、紹介文章のタイトルも「橋の上の女」となっています。
後者は一般向けの書籍でもあり、箱の中に納められているものには目玉以外に、原話に登場する男の摩羅も記されています。
目玉しゃぶりの伝承地域
目玉しゃぶりは、近江国(現・滋賀県)の瀬田の唐橋に現れたとされます。
瀬田の唐橋は、滋賀県大津市の瀬田川にかかる橋です。
古くから、都と東国を結ぶ道の要でした。
この橋には、俵藤太のむかで退治をはじめ、いくつもの話が残ります。
橋そのものは今もありますが、この妖怪を祀った社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
目玉しゃぶりの正体と考えられているもの
目玉しゃぶりについては、次のように整理できます。
一つめは、場所です。近江国(現・滋賀県)の瀬田の唐橋に現れたとされます。
二つめは、姿です。外見は人間の女性のようで、その美しさは到底この世の者とは思えないほどだといいます。
三つめは、頼みごとです。絹の布で包まれた箱を差し出して「橋の袂にいる女の人にこれを渡して」と頼み、「絶対に中を見ないで」と念を押します。
四つめは、罰です。箱を開けた者は高熱を出すなど原因不明の病気にかかり、やがては命を落とし、その死体からは、なぜか目玉が消えているといいます。
五つめは、名の新しさです。「目玉しゃぶり」の名は1974年の児童向け図書にあるもので、1973年の『日本の妖怪』では「橋の上の女」、原話は『今昔物語集』です。
この妖怪は、条件を先に伝えます。 運べば助かり、覗けば死にます。
目玉しゃぶりをめぐる妖怪のつながり
目玉しゃぶりが登場する作品
目玉しゃぶりは、橋の上の頼みごとです。
運べば助かり、覗けば目を取られます。原話は『今昔物語集』にさかのぼります。
資料は平安の説話集と、昭和の妖怪本に分かれます。
目玉しゃぶりが登場する古典
目玉しゃぶりが登場する研究
早川純夫『日本の妖怪』
1973年。「橋の上の女」の題で紹介しています。
南條武『完全図解シリーズ 妖怪ミステリー』
1974年。「目玉しゃぶり」の名を与えた本です。
目玉しゃぶりが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
橋に出る女の怪として、橋姫と並べて取り上げられます。
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目玉しゃぶりについてよくある質問
目玉しゃぶりとは何ですか。
近江国(現・滋賀県)の瀬田の唐橋に現れたとされる女のすがたをした妖怪です。原話は『今昔物語集』巻第二十七第二十一に記されています。
何を頼まれるのですか。
絹の布で包まれた箱を差し出して「橋の袂にいる女の人にこれを渡して」と頼み、「絶対に中を見ないで」と念を押します。
覗くとどうなりますか。
その中には人間からえぐり取られた目玉が大量に入っていたといい、箱を開けた者は高熱を出すなど原因不明の病気にかかり、やがては命を落とします。
この名前はいつからありますか。
「目玉しゃぶり」という呼称は、児童向けに出版された南條武『完全図解シリーズ 妖怪ミステリー』(1974年)にあるものです。
目玉しゃぶりと併せて覚えたい言葉・用語
瀬田の唐橋(せたのからはし)
滋賀県大津市の瀬田川にかかる橋。都と東国を結ぶ道の要。
袂(たもと)
橋のたもと。橋の端のあたり。
今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)
平安時代末に編まれた説話集。