飛騨の橋。地獄へ堕ちる亡者たちが夜ごとわたる音がしたという。
がたがた橋とはどんな妖怪か
がたがた橋は、橋にまつわる伝説です。
飛騨国益田郡小坂郷(現・岐阜県下呂市)にあったといわれます。
小坂の金右衛門という者の家の前に、小さな板橋がありました。
峠を越えて隣村へ行くために、さかんに利用されていた橋です。
ある夜のことです。
金右衛門が家にいると、ガタガタと橋をわたる大きな音が聞こえ、ひそひそと人の声が聞こえました。
こんな夜に峠越えは危険だと思って外を見ます。
人影はまったく見えません。
こうした不思議なことが、毎晩続きました。
がたがた橋の漢字表記と読み方
読みは「がたがたばし」です。
橋をわたる音が、そのまま名になっています。
同じ型の名は各地にあります。
音を伴った橋の名は「がたがた橋」「ドウドウ橋」「ドタドタ橋」など多くあります。
そして、その由来には別の説明があります。
これらは川の流れが橋や橋桁にあたる音から想像されたものと考えられています。
水の音です。
そのため飛騨の「がたがた橋」についても、川の流れの音から名づけられていたものが、後から亡者の話を付けられたとする説もあります。
がたがた橋(がたがたばし)
もっとも一般的な表記。
ドウドウ橋(どうどうばし)
各地にある同じ型の橋の名。
ドタドタ橋(どたどたばし)
同じく音による橋の名。
がたがた橋の姿と特徴
がたがた橋の怪異は、音だけです。
聞こえるもの
ガタガタと橋をわたる大きな音。
ひそひそと人の声。
雨の夜には、悲しそうな泣き声。
見えるもの
人影はまったく見えない。
姿がありません。
そして、雨の夜に泣き声が加わります。
音だけだったものに、感情のある声が混じるようになります。
話が進むにつれて、怖さが増す形になっています。
がたがた橋の伝承物語
立山まで続く道
気味悪く思った金右衛門は、占ってもらいました。
占い師に占ってもらったところ、こう告げられます。
彼の家の前は、隣村を越えて越中(現・富山県)立山まで続いている。
立山にはさまざまな地獄があるので、地獄へ墜ちる亡者たちが橋を通っている。
通り道でした。
立山は、古くから地獄がある山として知られた霊山です。
立山地獄と呼ばれ、地獄の姿を現世で見られる場所とされました。
そこへ向かう者たちが、家の前を通っていたわけです。
毎晩、ガタガタと。
雨の夜の泣き声は、地獄へ向かう者の声ということになります。
引っ越して経塚を立てる
金右衛門は、具体的な手を打ちました。
家の者たちとともに橋から離れた場所へ引っ越すとともに、亡者たちを供養し、橋のそばには経塚を立てました。
二つのことをしています。
離れることと、供養することです。
経塚は、経を書いて埋め、その上に築いた塚です。
以来、これまでのような怪異はなくなったといいます。
通り道をふさいだのではありません。
自分たちがそこから離れ、通る者を供養したのです。
追い払っていません。
この形は、亡者の話によくあります。
相手を消すのではなく、こちらが場所を譲る。
水の音か、亡者の音か
がたがた橋の音には、別の説明があります。
音を伴った橋の名は「がたがた橋」「ドウドウ橋」「ドタドタ橋」など多くあり、川の流れが橋や橋桁にあたる音から想像されたものと考えられています。
水の音です。
そのために飛騨の「がたがた橋」についても、同様に川の流れの音から「がたがた橋」と名づけられていたものが、「立山地獄へ向かう亡者たちが境に架けられた橋の上をわたる音」と後付けの解釈を施されたものとする説もあります。
名が先で、話が後です。
そして、立山地獄への通り道の話は各地にあります。
岐阜や愛知県の亡者たちが立山地獄へ向かう途中、乗鞍岳山頂の千町ヶ原の沼で水を飲むという伝説があり、「精霊田(しょうらいだ)」と呼ばれました。
亡者の通り道が、地図のように語られています。
がたがた橋の伝承地域
がたがた橋は、飛騨国益田郡小坂郷(現・岐阜県下呂市)にあったといわれます。
小坂の金右衛門という者の家の前にあった小さな板橋で、峠を越えて隣村へ行くためにさかんに利用されていたとされます。
橋のそばには経塚が立てられました。
亡者たちの向かう先とされた立山は、越中(現・富山県)にあります。
乗鞍岳山頂の千町ヶ原の沼は「精霊田」と呼ばれ、岐阜や愛知の亡者が水を飲む場所とされました。
橋そのものが現存するかは確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。
がたがた橋の正体と考えられているもの
がたがた橋については、次のように整理できます。
一つめは、音の怪異です。ガタガタと橋をわたる大きな音とひそひそと人の声が聞こえるのに、人影はまったく見えないといいます。
二つめは、亡者の通り道です。占い師によれば、家の前の道は越中の立山まで続いており、立山にはさまざまな地獄があるので、地獄へ墜ちる亡者たちが橋を通っているとのことでした。
三つめは、引っ越しと供養です。金右衛門は橋から離れた場所へ引っ越すとともに、亡者たちを供養し、橋のそばには経塚を立てました。 以来、怪異はなくなったといいます。
四つめは、川の音です。音を伴った橋の名は各地にあり、川の流れが橋や橋桁にあたる音から想像されたものと考えられています。 飛騨のものも後付けの解釈とする説があります。
この話は、地獄への道が村のなかを通っているという考え方を伝えています。 精霊田の伝説も、同じ道筋の話です。
がたがた橋をめぐる妖怪のつながり
がたがた橋が登場する作品
がたがた橋は、音だけの怪異です。
姿は見えず、音と声だけが橋をわたります。 そして、立山地獄への通り道という説明がつきました。
資料は飛騨の郷土の記録が中心です。
がたがた橋が登場する研究
がたがた橋が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
橋の怪異として、橋姫や送り拍子木と並べて取り上げられます。
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がたがた橋についてよくある質問
がたがた橋とは何ですか。
飛騨国益田郡小坂郷(現・岐阜県下呂市)にあったといわれる橋にまつわる伝説です。ガタガタと橋をわたる大きな音がするのに、人影はまったく見えないといいます。
音の正体は何とされましたか。
占い師によれば、家の前の道は越中(現・富山県)立山まで続いており、立山にはさまざまな地獄があるので、地獄へ墜ちる亡者たちが橋を通っているとのことでした。
どうやって収まったのですか。
金右衛門が家の者たちとともに橋から離れた場所へ引っ越すとともに、亡者たちを供養し、橋のそばには経塚を立てました。 以来、これまでのような怪異はなくなったといいます。
ほかの説はありますか。
あります。 音を伴った橋の名は各地にあり、川の流れが橋や橋桁にあたる音から想像されたものと考えられています。 飛騨のものも、川の流れの音から名づけられたものに後付けの解釈を施したとする説があります。
がたがた橋と併せて覚えたい言葉・用語
立山地獄(たてやまじごく)
越中の立山にあるとされた地獄。古くから知られた。
経塚(きょうづか)
経を書いて埋め、その上に築いた塚。供養のために立てる。
精霊田(しょうらいだ)
乗鞍岳山頂の千町ヶ原の沼。亡者が水を飲むとされた。