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沖縄県

遺念火(いねんび)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

遺念火  / イネンビ

火の妖怪 各地の伝説

沖縄の怪火。非業の死を遂げた男女が一組の火となって現れる。

遺念火とはどんな妖怪か

遺念火は、沖縄の怪火です。因縁火とも書きます。

遺念とは、亡霊を指す沖縄の言葉です。 この遺念が火となって現れるのが遺念火とされます。

動き方に特徴があります。

あちこち移動したり飛び回ったりせず、ほとんど同じ場所に現れます。

出没場所は、山中など人のいない寂しい場所が多く、まれに海上にも現れます。

そして、必ず二つで現れます。

遺念火は多くの場合、駆け落ちの末の行き倒れなどで非業の最期を遂げた男女恋愛のもつれによる心中した男女などが、一組の火となって現れるといわれます。

様々な悲恋譚を伴っています。

遺念火の漢字表記と読み方

読みは「いねんび」です。

遺念とは、亡霊を指す沖縄の言葉です。

「因縁火」とも書きます。

首里市(現・那覇市)の識名坂のものは「トジ・マチャー・ビー」ともいいます。

トジは、沖縄の言葉でを指します。

そして、この火は移動しません。

ほとんど同じ場所に現れます。

現れる場所が決まっているということは、そこで何かがあったということです。

沖縄の怪火には、必ず話がついています。

遺念火(いねんび)

もっとも一般的な表記。

因縁火(いんねんび)

同じものを指す別の書き方。

トジ・マチャー・ビー(とじまちゃーびー)

首里の識名坂のものの呼び名。トジは妻の意。

遺念火の姿と特徴

遺念火は、次のように現れます。

… 二つ。一組の火。
動き … あちこち移動したり飛び回ったりしない。
場所 … ほとんど同じ場所。山中など人のいない寂しい所。まれに海上。
時刻 … 話によっては、同じ時刻に現れる。

二つの火が、決まった場所に出ます。

名護町(現・名護市)山中の話では、同じ時刻に山頂に二つの火が現れるといいます。

時刻まで決まっています。

そして、二つの火は男と女です。

非業の最期を遂げた男女心中した男女 どの話でも、二人です。

一人では、遺念火になりません。

遺念火の伝承物語

  1. 識名坂の夫婦
  2. かんざしで突いた相手
  3. 暴風雨の夜の山頂

識名坂の夫婦

首里市(現・那覇市)の南にある識名坂の遺念火は、よく知られています。

トジ・マチャー・ビー」ともいいます。トジは妻の意です。

話は、こうです。

昔、ある仲の良い夫婦がいました。

妻はいつも街に出て商売をしており、夫は帰りの遅い妻をいつも迎えに出ていました

あるとき、二人の仲を妬んだ者がいました。

その者は夫に、「お前の妻はいつも浮気をして遊び歩いている」と嘘を言いました。

夫は生き恥を晒すことを苦とし、識名川に身を投げます。

やがて帰ってきた妻はそれを知り、自分も身を投げました

以来、識名坂から識名川へと、二つの遺念火が現れるようになりました。

かんざしで突いた相手

名護市の話は、もっと痛ましいものです。

昔、大変仲の良い若夫婦がおり、妻はいつも仕事に出て遅くに帰って来ました

あるときに夫は魔がさし、妻が不貞を働いているのではと考えました。

そして、妻の帰り道、夫は変装して襲い掛かりました

試すつもりだったのでしょう。

妻は必死に抵抗し、かんざしで夫の喉を突き刺しました

やっとのことで妻は家に帰りましたが、夫の姿はありません。

もしやと思い引き返すと、夫はすでに死んでおり、あまりの悲嘆に妻は自害しました

命がけで貞操を守った妻と、その妻を疑った夫。

その無念が、二つの遺念火となって夜な夜な現れるといいます。

暴風雨の夜の山頂

名護町(現・名護市)山中の話も伝わります。

ある女性が人目を忍び、険しい山を通って夜間の山頂で恋人と密会していました。

ある暴風雨の夜のことです。

男は、この天候では女は来ないだろうと思って山へ行きませんでした。

しかし、女はやって来ていました。

そして、男の不実をなじって自殺しました

男はそれを知ります。

自分の薄情さを悔やんで、後を追って自殺しました

以来、同じ時刻に山頂に二つの火が現れるようになりました。

三つの話に共通するのは、行き違いです。

嘘、疑い、天候。どれも小さなことから始まっています。

柳田国男は『年中行事覚書』で、遺念火を人魂と並べ、盆の火の思想につないで見ています。

我国のみに数多い人玉の空を行く話、またはいろいろの遺念火の現象が、右の固有の思想に根ざしていたことは言う迄もないのである。

遺念火の伝承地域

遺念火は、沖縄地方に伝わります。

首里市(現・那覇市)の南にある識名坂は、遺念火の中でもよく知られた場所です。識名坂から識名川へと二つの遺念火が現れるとされ、「トジ・マチャー・ビー」と呼ばれます。

名護市にも、妻がかんざしで夫を刺してしまった話が伝わります。

名護町(現・名護市)山中では、暴風雨の夜の密会をめぐる話が伝わり、同じ時刻に山頂に二つの火が現れるといいます。

いずれも坂や山中そのものが舞台であり、遺念火を祀った碑や祠は確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。

遺念火の正体と考えられているもの

遺念火については、次のように整理できます。

一つめは、亡霊です。遺念とは亡霊を指す沖縄の言葉であり、この遺念が火となって現れるのが遺念火とされます。

二つめは、非業の死を遂げた男女です。駆け落ちの末の行き倒れ恋愛のもつれによる心中 多くの場合、一組の火となって現れます。

三つめは、行き違いです。識名坂は妬んだ者の嘘、名護市は夫の疑い、名護町山中は暴風雨 どの話も、小さな行き違いから始まっています。

四つめは、動かないことです。あちこち移動したり飛び回ったりせず、ほとんど同じ場所に現れます。 現れる場所が決まっているのは、そこで何かがあったからです。

遺念火が何であったかは、わかっていません。 ただ、二つの火が同じ場所に出続けるという形は、悲恋の話とよく合っています。

遺念火をめぐる妖怪のつながり

遺念火が登場する作品

遺念火は、悲恋譚を伴う怪火です。

火そのものより、なぜそこに二つの火が出るのかという話のほうが厚く伝わっています。

資料は沖縄の民俗の記録が中心です。

遺念火が登場する研究

妖怪事典

村上健司編著、2000年。沖縄の遺念火の伝承を整理しています。

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沖縄の伝説

県内の伝説を集めた書。識名坂などの話を収めます。

遺念火が登場する漫画・アニメ

妖怪をまとめて扱う作品

怪火の一種として、人魂や鬼火と並べて取り上げられます。

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遺念火についてよくある質問

遺念とは何ですか。

亡霊を指す沖縄の言葉です。この遺念が火となって現れるのが遺念火とされます。「因縁火」とも書きます。

なぜ二つで現れるのですか。

駆け落ちの末の行き倒れなどで非業の最期を遂げた男女恋愛のもつれによる心中した男女などが、一組の火となって現れるといわれるためです。

ほかの怪火とどう違うのですか。

動きません。 あちこち移動したり飛び回ったりせず、ほとんど同じ場所に現れます。 出没場所は山中など人のいない寂しい場所が多く、まれに海上にも現れます。

識名坂の話とは何ですか。

仲の良い夫婦がいましたが、二人の仲を妬んだ者が夫に「妻が浮気をしている」と嘘を言い、夫は識名川に身を投げました。帰ってきた妻もそれを知って身を投げます。 以来、識名坂から識名川へと二つの遺念火が現れるようになりました。

遺念火と併せて覚えたい言葉・用語

遺念(いねん)

亡霊を指す沖縄の言葉。

トジ(とじ)

沖縄の言葉で妻のこと。

識名坂(しきなざか)

那覇市の坂。遺念火の伝承でよく知られる。