津軽の海岸で、海で死んだ人の魂が家に帰って来ること。名は「亡者」を意味する。
モンジャとはどんな妖怪か
モンジャは、青森県の津軽地方の海岸に伝わる怪異です。
海で死んだ人間の魂が家に帰って来ることをいいます。
名称は「亡者」を意味します。
帰り方が、生々しく伝わります。
東津軽郡石崎では「モジャビ」ともいい、家へ帰って来る際には、庭で足をたたくような音がして「寒いから火を焚け」などと声がするといいます。
鰺ヶ沢町では、もっと細かくなります。
家へ帰って来ると、台所の板の間でバタバタと着物の砂を払う音がして、流しでザーッと手を洗う音がするといいます。
帰宅したときの手順そのものです。
モンジャの漢字表記と読み方
読みは「もんじゃ」です。
名称は「亡者」を意味します。
土地ごとに呼び名が変わります。
モジャ(鰺ヶ沢町)/モジャビ=亡者火(東津軽郡石崎)/モレビ=亡霊火(西津軽郡舘岡村)。
「ビ」がつく形が二つあります。
ところが、ここに食い違いがあります。
「モジャビ」「モレビ」などは火を意味する名前が付いているものの、『津軽の民俗』にはこれらが火をともなって現れたという記述はありません。
名に火があって、話に火がありません。
モンジャ(もんじゃ)
もっとも一般的な表記。「亡者」の意。
モジャ(もじゃ)
鰺ヶ沢町での呼び名。
モジャビ(もじゃび)
東津軽郡石崎での呼び名。亡者火の意。
モレビ(もれび)
西津軽郡舘岡村での呼び名。亡霊火の意。
モンジャの姿と特徴
モンジャは、姿ではなく音で現れます。
東津軽郡石崎
庭で足をたたくような音。「寒いから火を焚け」という声。
西津軽郡舘岡村
夜中に大戸を叩く。
鰺ヶ沢町
台所の板の間でバタバタと着物の砂を払う音。流しでザーッと手を洗う音。
どれも、帰ってきた人の物音です。
そして、憑くこともあります。
鰺ヶ沢町では「モジャ」は人間に憑くともいいます。 ある者が夜、全身に水を浴びたように寒くなり、体の震えが止まらないのでゴミソ(男性の祈祷師)に相談したところ、「4人組の海のモンジャが、誰も供養してくれないので、なんとかしてもらいたくて憑いている」とのことでした。
モンジャの伝承物語
寒いから火を焚け
モンジャが帰って来るとき、求めるものがあります。
東津軽郡石崎では、庭で足をたたくような音がして「寒いから火を焚け」などと声がするといいます。
火です。
そして、実際に焚きました。
北津軽郡小泊村(現・中泊町)では、浜辺で火を焚くとモンジャが火にあたりに来るといわれました。
あるとき、それが起きます。
沖合いで漁船が沈没し、漁師の遺族たちが浜辺で火を焚くと、伝承の通りにモンジャが現れたといいます。
遺族が焚いた火です。
海で死んだ者は冷たい。そこへ火を焚いて迎える。 供養の形が、そのまま怪異の形になっています。
身代わりを葬る
モンジャの伝わる地方には、風習がありました。
海、山、川で誰かが死んだときなど、人間が不慮の死を遂げた際には、その魂がその場に残るといわれ、遺体をその場から運び去った後に、改めて魂を迎えに行くという習わしです。
体と魂を、別に連れ帰ります。
遺体が見つからないこともあります。
その場合でも、死者は手向けを期待して家の近くをさまようといわれたため、必ず遺体のかわりに身代わりのものを葬り、懇切な供養が行われていました。
鰺ヶ沢町では、こう呼びます。
「シルシをヤスメル」といって、煙草入れ、枕、丹前などのように、普段から身に着けていたものを墓に納めて葬りました。
身に着けていたものが、体の代わりになります。
後生車と人形
供養のしかたは、土地ごとに違いました。
西津軽郡田ノ沢では、同様の事故が起きた際や、山中で人が遭難して死んだときなど、家を離れて死んだ者がいるときには、供養のために海岸の丘に後生車を立てていました。
それを通行人がまわします。
まわすと、死者は早くに浮かばれるといわれました。
通りすがりの人が手伝う形です。
海難者の出た家では、別の形をとりました。
「16日のアカツキボカイ」といい、盆の16日の朝、死者の数だけ人形を作り、小さな舟に乗せて流す風習があったといいます。
人形を舟で流します。
帰ってこられなかった者を、こちらから送り出す形です。
モンジャの伝承地域
モンジャは、青森県の津軽地方の海岸に伝わります。
東津軽郡石崎(モジャビ)/西津軽郡舘岡村、現・つがる市(モレビ)/西津軽郡鰺ヶ沢町(モジャ)/北津軽郡小泊村、現・中泊町(浜辺で火を焚くと現れる)/西津軽郡田ノ沢(後生車を立てる)。
津軽の民俗学者・森山泰太郎の著書『津軽の民俗』(1965年)に記録があります。
青森県五所川原市には、水死や首吊りのあった場所に、雨の夜に「もる火」または「もり火」という怪火が現れるという類話があります。
浜辺や家そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
モンジャの正体と考えられているもの
モンジャについては、次のように整理できます。
一つめは、亡者です。名称は「亡者」を意味し、海で死んだ人間の魂が家に帰って来ることをいいます。
二つめは、音です。庭で足をたたく音、大戸を叩く音、着物の砂を払う音、手を洗う音。 どれも、帰ってきた人の物音です。
三つめは、火です。「寒いから火を焚け」という声があり、浜辺で火を焚くとモンジャが火にあたりに来るといいます。 ただし『津軽の民俗』には火をともなって現れたという記述はありません。
四つめは、供養の不足です。鰺ヶ沢町では「4人組の海のモンジャが、誰も供養してくれないので、なんとかしてもらいたくて憑いている」と語られました。
モンジャは、遺体の帰らない死をどう扱うかという問題そのものです。 身代わりを葬り、後生車を立て、人形を舟で流す。手を尽くした形が残っています。
モンジャをめぐる妖怪のつながり
モンジャが登場する作品
モンジャは、海で死ぬということの重さを伝える話です。
遺体が戻らないとき、身代わりを葬り、後生車を立て、人形を舟で流しました。 怪異と供養が一続きになっています。
資料は津軽の民俗の記録が中心です。
モンジャが登場する研究
津軽の民俗
森山泰太郎、1965年。モンジャ・モジャビ・モレビの伝承を記録しています。
日本怪談集 幽霊篇
今野円輔、各地の亡霊の話を集めています。
モンジャが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
海で死んだ者の霊として、船幽霊と並べて取り上げられます。
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モンジャについてよくある質問
モンジャとは何ですか。
海で死んだ人間の魂が家に帰って来ることをいいます。名称は「亡者」を意味します。
どうやって現れるのですか。
音です。 庭で足をたたくような音がして「寒いから火を焚け」と声がしたり、台所の板の間でバタバタと着物の砂を払う音、流しでザーッと手を洗う音がするといいます。
火を焚くと来るのですか。
北津軽郡小泊村では、浜辺で火を焚くとモンジャが火にあたりに来るといわれました。沖合いで漁船が沈没し、遺族たちが浜辺で火を焚くと、伝承の通りに現れたといいます。
遺体が見つからないときはどうしたのですか。
必ず遺体のかわりに身代わりのものを葬りました。 鰺ヶ沢町では「シルシをヤスメル」といい、煙草入れ、枕、丹前など普段から身に着けていたものを墓に納めました。
モンジャと併せて覚えたい言葉・用語
ゴミソ(ごみそ)
津軽の男性の祈祷師。憑き物の相談にあたる。
後生車(ごしょうぐるま)
供養のために立てる回転する車。回すと死者が浮かばれるという。
アカツキボカイ(あかつきぼかい)
盆の16日の朝、人形を舟に乗せて流す津軽の風習。