海底の蛇の目傘が開き、乱れ髪の女になって追ってくる。
長井戸の怪とはどんな妖怪か
長井戸の怪は、佐渡に伝わる怪異譚です。
新潟県佐渡郡相川町(現・佐渡市)金泉村(現・佐渡市)に伝わります。
新潟県出身の郷土史家・小山直嗣の著書に記述があります。
話は、釣りから始まります。
ある雨の日、佐渡郡金泉村に住む八蔵という男が、長井戸と呼ばれる海域に船を出して釣りをしていました。
そこで、海の底を見ました。
ふと海の中を見ると、海底に1本の蛇の目傘があったといいます。
傘です。
拾おうとしました。
長井戸の怪の漢字表記と読み方
読みは「ながいどのかい」です。
長井戸は、佐渡の海域の名です。
井戸ではありません。
海の場所の名です。
そして、別の題もあります。
水木しげるの著書『水木しげるの憑物百怪』(学習研究社)では「妖怪蛇の目傘」(ようかいじゃのめがさ)と題されています。
傘のほうを名にしています。
蛇の目傘は、江戸から使われた和傘です。
中心と外側を色分けし、輪の模様が蛇の目に見えることから、この名がつきました。
長井戸の怪(ながいどのかい)
もっとも一般的な表記。
妖怪蛇の目傘(ようかいじゃのめがさ)
水木しげるの著書での題。
海海女(うみあま)
福井県で伝わる同類の妖怪。
長井戸の怪の姿と特徴
長井戸の怪の姿は、二段に変わります。
まず、傘です。
海底に1本の蛇の目傘があったといいます。
沈んでいます。
そして、開きます。
海中の傘がひとりでに開いたといいます。
次に、浮かびます。
傘が海の上に浮かび上がり、乱れ髪の女に姿を変えて八蔵を追って来たといいます。
乱れ髪の女です。
声も出します。
「しばらく待て」と聞こえ、後には「惜しいことをした、逃がしてしまった」と聞こえたといいます。
長井戸の怪の伝承物語
しばらく待て、と声がした
八蔵は、傘を取ろうとしました。
八蔵はそれを手にしようと思い、服を脱いで海に潜ろうとしました。
そこで、止められます。
「しばらく待て」と声が聞こえました。
周りには、誰もいません。
しかし周りには誰もいないので、空耳かと思いまた潜ろうとすると、今度はさらに大きな声で「しばらく待て」と声がしました。
二度目は、大きな声でした。
そして、傘が動きます。
八蔵が気味悪く思っていると、海中の傘がひとりでに開きました。
開きました。
八蔵は逃げます。
驚いた八蔵は舟を漕いで逃げ出しました。
惜しいことをした
傘は、追ってきました。
傘が海の上に浮かび上がり、乱れ髪の女に姿を変えて八蔵を追って来ました。
女になりました。
八蔵は漕ぎ続けます。
八蔵は夢中で舟を漕ぎ、どうにか陸まで逃げ切りました。
逃げ切りました。
そして、背後から声がします。
背後からは「惜しいことをした、逃がしてしまった」と不気味な声が聞こえました。
惜しいことをした、です。
取り逃がした、という言い方です。
この一言が、話の怖さを決めています。
待てと言ったのは、潜らせるためでした。
力自慢が死んだ
話は、村に広まりました。
この八蔵の体験談は村中に広まり「私もその女を見た」「俺も見た」と目撃談が続きました。
次々に出ました。
そこで、名乗りを上げた男がいます。
村の力自慢の長吉という男が話を耳にし「そいつを退治してみせる」と言って長井戸へ向かいました。
退治すると言いました。
ところが、何も起きません。
しかし何事も起きません。自分の力に恐れをなしたかと長吉が得意気になっていました。
そこへ、来ました。
途端に雨が降り出し、海は大荒れになり、波の中から件の怪女が現れました。
恐怖におののいた長吉は、無我夢中で逃げ去りました。
このことがもとで長吉は寝込んでしまい、間もなく命を落としました。
長井戸の怪の伝承地域
長井戸の怪は、新潟県佐渡郡相川町(現・佐渡市)金泉村(現・佐渡市)に伝わります。
長井戸は、その海域の名です。
似た話が、福井県にもあります。
福井県坂井郡雄島村安島(現・坂井市)の海で、潜水業を行なう海女たちの間に海海女(うみあま)という妖怪が伝わっています。
その付近でも海中に浮いている傘が、海女たちによって目撃されています。
海そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
長井戸の怪の正体と考えられているもの
長井戸の怪については、次のように整理できます。
一つめは、傘です。ふと海の中を見ると、海底に1本の蛇の目傘があったといい、海中の傘がひとりでに開きました。
二つめは、声です。「しばらく待て」と二度聞こえ、逃げ切った後には「惜しいことをした、逃がしてしまった」と聞こえたといいます。
三つめは、女です。傘が海の上に浮かび上がり、乱れ髪の女に姿を変えて八蔵を追って来ました。
四つめは、長吉です。村の力自慢の長吉が退治に向かい、波の中から件の怪女が現れ、このことがもとで長吉は寝込んでしまい、間もなく命を落としました。
五つめは、福井の海海女です。潜水業を行なう海女たちの間に海海女という妖怪が伝わっており、その付近でも海中に浮いている傘が、海女たちによって目撃されています。
この話は、拾おうとした者を狙います。 待てという声は、引き止めではなく、待ち伏せでした。
長井戸の怪をめぐる妖怪のつながり
長井戸の怪が登場する作品
長井戸の怪は、拾おうとした者を狙う話です。
海底の傘が開き、乱れ髪の女になって追ってきます。
資料は佐渡の郷土史と、戦後の妖怪本に分かれます。
長井戸の怪が登場する研究
小山直嗣の著作
新潟県出身の郷土史家。この怪異譚を記録しています。
水木しげるの憑物百怪
学習研究社。「妖怪蛇の目傘」と題して紹介しています。
長井戸の怪が登場する漫画・アニメ
海の妖怪を扱う作品
海に沈む道具の怪として取り上げられます。
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長井戸の怪についてよくある質問
長井戸の怪とは何ですか。
新潟県佐渡郡相川町(現・佐渡市)金泉村に伝わる怪異譚です。水木しげるの著書では「妖怪蛇の目傘」と題されています。
何が起きたのですか。
海底に1本の蛇の目傘があり、潜ろうとすると「しばらく待て」と声がし、海中の傘がひとりでに開き、乱れ髪の女に姿を変えて追って来ました。
逃げ切ったのですか。
八蔵は夢中で舟を漕ぎ、どうにか陸まで逃げ切りました。背後からは「惜しいことをした、逃がしてしまった」と不気味な声が聞こえました。
退治した人はいますか。
村の力自慢の長吉が向かいましたが、恐怖におののいた長吉は、無我夢中で逃げ去り、このことがもとで寝込んでしまい、間もなく命を落としました。
長井戸の怪と併せて覚えたい言葉・用語
蛇の目傘(じゃのめがさ)
輪の模様が蛇の目に見える和傘。
長井戸(ながいど)
佐渡の海域の名。
海女(あま)
素潜りで貝や海藻を採る人。