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島根県

ムラサ(むらさ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

ムラサ  / ムラサ

幽霊と霊水の妖怪 各地の伝説

島根県隠岐で、夜光虫の光が海上に丸く集まり、船が乗ると散るとされた海の怪異。

ムラサの姿を描いた図

Snap55 「ローソク島(島根県隠岐の島町)」 2010年 / CC BY 3.0 出典

ムラサとはどんな妖怪か

ムラサは、島根県隠岐の旧都万村で語られた海の怪異です。夜光虫が光る潮を土地で「ニガシオ」と呼び、その中に丸く固まってぼんやり光るものをムラサとしました。

船がその上へ乗りかかると、まとまっていた光はぱっと散ります。別の場面では、暗い海が突然明るくなり、舟足が鈍ったときに「ムラサにつけられた」と受け止められました。

人の姿をした船幽霊ではなく、海面の光と船の異変に名前を与えた、隠岐の海の伝承です。

ムラサの漢字表記と読み方

読みは「むらさ」です。漢字表記は中心資料に示されません。

同じ読みを含む人名や創作上の固有名とは分け、隠岐の都万で語られた海上の怪異を扱います。

ムラサ(むらさ)

『海村生活の研究』所収「海の怪異」に見える呼称。

ムラサの姿と特徴

ムラサには顔、手足、衣服、船の形がありません。中心資料が伝える姿は、夜光虫が光る潮の中で、丸く固まってぼんやり光るものです。

船が乗りかかると光が散るため、一定の身体を保つ怪物というより、海面に集まった光の塊として現れます。暗夜に海が急に明るくなる場面もムラサと結び付けられましたが、そのときに何かの姿を見たとは記されていません。

呼称は一つでも、丸く固まった光を見る場面と、海全体が急に明るくなって船が進みにくくなる場面があります。二つの場面は、どちらも「ムラサ」の名で語られました。前者だけをムラサの全身図と考えると、後者の伝承が抜け落ちます。

ムラサの伝承記録

  1. ニガシオの中で丸く光る
  2. 海が急に明るくなり、舟足が鈍る
  3. 竿の先の刃物で海面を切る

ニガシオの中で丸く光る

1949年刊『海村生活の研究』の「海の怪異」は、島根県隠岐郡都万村の話としてムラサを記録しています。

隠岐では、夜光虫によって光る潮をニガシオと呼びました。その光る潮の中で、ときどき光が丸く固まり、ぼんやり浮かぶことがあります。船がその上へ乗りかかると、固まっていた光は一度に散ったといいます。

この記録では、ムラサが船へ話しかけたり、人を海へ引き込んだりはしません。最初の場面は、光が集まり、船の接近によって散るという海面の異変です。

海が急に明るくなり、舟足が鈍る

同じ記録には、暗い海で懸命に艪を押していると、突然海が大きく明るくなって驚く場面があります。都万村の那久・油井では、これをムラサという魔物につけられたと語りました。

津戸部落の記録では、廻船でもムラサにつけられると舟足が鈍り、進みにくくなるとされます。光を見るだけで終わる話ではなく、海の発光と船の進みにくさが一続きの怪異として受け止められていたことが分かります。

ただし、資料は船が沈んだ、死者が出た、ムラサが船底へ姿を現したとは述べていません。

竿の先の刃物で海面を切る

ムラサにつけられたときは、刀または包丁を竿の先へ付け艪の近くの海面を左右に数回切るとよいと伝えられました。

この対処は、海面の異変を目に見えない魔物の働きとして捉え、刃物でそのつながりを断つ発想を示しています。船幽霊に底の抜けた柄杓を渡す話とは、現れる姿も対処の道具も異なります。

刃物を海上で扱う行為は危険です。ここでは昔の伝承内容として記します。

ムラサの伝承地域

伝承地域は旧都万村で、現在の隠岐の島町都万地区に当たります。資料には那久・油井、津戸という地名が見えますが、ムラサが現れる一点の緯度経度は示されていません。

地図は伝承が採録された地域を示します。

旧都万村(きゅうつまむら)

ムラサの伝承地域

地図で開く

旧都万村の所在地:島根県隠岐郡隠岐の島町都万

『海村生活の研究』は都万村の那久・油井と津戸部落の記録を伝えます。

特定の港、岩礁、航路を出現地点とは断定できません。

ムラサの正体と考えられているもの

ムラサの光は、資料自体が「夜光虫の光る潮」と説明しています。夜光虫は水の動きによって発光するため、船が乗りかかったときに光が散って見える描写と重なる部分があります。

一方、船が進みにくくなることや、刃物で海面を切る対処は、夜光虫の外にあります。海藻、潮流、心理的な驚きなど個別の原因を一つに決める根拠も不足しています。

ムラサは、実際に見える海の発光を土台に、舟足の異変と対処法まで結び付けて語られた海の怪異です。

ムラサをめぐる妖怪のつながり

ムラサが記録された資料

『海村生活の研究』は柳田國男編、日本民俗学会から1949年に刊行されました。「海の怪異」を執筆した大藤時彦は、那久・油井で海が急に明るくなる話、津戸で舟足が鈍る話を分けて記しています。都万村の中でも場面の採録地が同一ではない点まで読み取れる資料です。

ムラサが記録された民俗資料

『海村生活の研究』「海の怪異」

大藤時彦が隠岐の都万村におけるムラサの光、舟足、対処法を記した中心資料。

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ムラサについてよくある質問

ムラサとはどんな妖怪ですか。

隠岐の旧都万村で、夜光虫が光るニガシオの中に丸く固まって現れ、船が上へ乗ると散るとされた海の怪異です。暗夜に海が急に明るくなり、舟足が鈍ることもムラサにつけられたためと語られました。

ムラサは船幽霊ですか。

海上の怪異という点では船幽霊と近い分類ですが、中心資料に人の霊や幽霊船の姿はありません。光の塊、舟足の異変、海面を刃物で切る対処が特徴です。

ムラサの正体は夜光虫ですか。

光る潮は資料でも夜光虫によるものと説明されています。ただし、船が進みにくくなることや対処法まで夜光虫だけで説明できるとは確認されていません。

ムラサはどこに伝わりますか。

島根県隠岐郡の旧都万村です。現在は隠岐の島町に含まれます。資料には那久・油井、津戸の名がありますが、特定の海上地点までは示されていません。

ムラサと併せて覚えたい言葉・用語

ムラサ(むらさ)

隠岐の都万で、夜光虫の光が丸く固まり、舟足にも異変を及ぼすとされた海の怪異。

ニガシオ(にがしお)

都万で夜光虫が光る潮を指した呼び名。

舟足(ふなあし)

船が水上を進む速さ。ムラサにつけられると鈍ると語られました。

ムラサの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館サーチ『海村生活の研究』