船が近づくと体を衣のように広げ、人も船も沈める蛸。
衣蛸とはどんな妖怪か
衣蛸は、タコの妖怪です。
京都府の丹後半島(与謝半島)北端袖志の日本海や、与謝郡の岬(若狭湾内の入江)にいると伝わります。
普段は、小さく見えます。
外観は小さなタコと変わりないといいます。
ところが、船が近づくと変わります。
体を衣のように大きく広げ、人間も船も海の中へ沈めてしまうとされ、人々に恐れられています。
広げたときの大きさは、六畳ほどともいいます。
六畳です。
小さなタコが、部屋一つぶんの布になります。
衣蛸の漢字表記と読み方
読みは「ころもだこ」です。
衣の蛸。 体を衣のように広げることからの名です。
「衣」は、着るものです。
そして、広げた大きさは六畳ほどといいます。
畳六枚ぶんです。
そして、この名は実在の生き物にも使われています。
兵庫県竹野町の海岸などでは、ムラサキダコが地元民に「衣ダコ」の俗名で知られています。
実在のタコの名でもあります。
衣蛸(ころもだこ)
もっとも一般的な表記。
衣ダコ(ころもだこ)
兵庫県竹野町の海岸などで、ムラサキダコの俗名として使われる。
コロモダコ(ころもだこ)
カタカナで書くこともある。
衣蛸の姿と特徴
衣蛸の姿は、二段階に分かれます。
普段 … 小さなタコと変わりない。
船が近づくと … 体を衣のように大きく広げる。六畳ほど。
そして、隠れ場所が伝わります。
普段は貝殻の中に入っているともいいます。
多田克己の脚色では、また違います。
ふだんは海の上を漂っており、自分を捕らえようとする漁師をこのように襲うとされます。
比較される実在のタコがあります。
日本海に棲息するムラサキダコです。足と足の間に膜を持ち、広げると体の十倍にもなるといいます。
ただし、実物はひじょうに小さいものです。
衣蛸の伝承物語
六畳に広がる
衣蛸の怖さは、大きさの変化にあります。
外観は小さなタコと変わりないのに、船が近づくと体を衣のように大きく広げます。
そして、人間も船も海の中へ沈めてしまいます。
体を広げたときの大きさは、六畳ほどともいいます。
船を覆うには、十分な広さです。
海の妖怪には、この形がいくつもあります。
愛知県佐久島のフトンカブセは、「ふわっと来て、すっと被せて窒息させる」と語り継がれます。
布団をかぶせます。
衣蛸も、フトンカブセも、覆って窒息させます。
海で、上から覆われれば、息ができません。
ムラサキダコ
衣蛸には、実在のモデルがあります。
日本海に棲息するムラサキダコです。
特徴が、そのまま重なります。
足と足の間に膜を持ち、広げると体の十倍にもなるといいます。
十倍です。
そして、それは実際に見られます。
兵庫県竹野町の海岸などでは、地元民に「衣ダコ」の俗名で知られています。
名前が、そのままです。
ただし、注意すべき点があります。
実物はひじょうに小さいのです。
十倍に広がっても、船を沈める大きさにはなりません。
しかし、海で急に何かが広がるのを見れば、大きさの見当はつきません。
伝わる場所
衣蛸の伝承地は、資料によって少しずつ違います。
ある資料(大藤時彦 1949)では、京都下字川村袖志(現:丹後町袖志)の伝承としています。
丹後半島北端に位置します。
あるいは、与謝郡の岬周辺に伝わるとされます。
そして、荒俣宏は広くまとめました。
若狭湾に出現するものである、と。
丹後半島から若狭湾にかけての海です。
日本海に面し、入り組んだ入江が続く一帯です。
そこは、ムラサキダコの棲む海でもあります。
そして、小さな漁船が出る海でもあります。
衣蛸の伝承地域
衣蛸が伝わるのは、京都府の丹後半島(与謝半島)北端袖志の日本海と、与謝郡の岬(若狭湾内の入江)です。
ある資料(大藤時彦 1949)では、京都下字川村袖志(現・京丹後市丹後町袖志)の伝承としています。 丹後半島北端に位置します。
荒俣宏は、若狭湾に出現するものだとまとめています。
比較される実在のムラサキダコは日本海に棲息し、兵庫県竹野町(現・豊岡市)の海岸などでは、地元民に「衣ダコ」の俗名で知られています。
いずれも海そのものが舞台であり、衣蛸を祀った碑や祠は確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。
衣蛸の正体と考えられているもの
衣蛸の正体については、次のように整理できます。
一つめは、ムラサキダコです。日本海に棲息し、足と足の間に膜を持ち、広げると体の十倍にもなるといいます。 兵庫県竹野町の海岸などでは「衣ダコ」の俗名で知られています。
二つめは、大きさの錯覚です。ムラサキダコの実物はひじょうに小さいものです。 海で急に何かが広がるのを見れば、大きさの見当はつきません。
三つめは、覆う海の妖怪です。愛知県佐久島のフトンカブセは「ふわっと来て、すっと被せて窒息させる」と語り継がれます。 覆って窒息させるという型は、海に共通します。
四つめは、貝殻です。普段は貝殻の中に入っているともいいます。 多田克己の脚色では、ふだんは海の上を漂っているとされます。
衣蛸が何であったかは、わかっていません。 ただ、小さなものが急に広がるという驚きは、実在のタコにも当てはまります。
衣蛸をめぐる妖怪のつながり
衣蛸が登場する作品
衣蛸は、実在の生き物と重なる妖怪です。
日本海のムラサキダコは、いまも「衣ダコ」と呼ばれています。 妖怪の名が、そのまま地元の呼び名として生きています。
資料は民俗の報告が中心です。
衣蛸が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
海の妖怪として、海坊主や牛鬼と並べて取り上げられます。
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衣蛸についてよくある質問
衣蛸はどこにいるのですか。
京都府の丹後半島(与謝半島)北端袖志の日本海や、与謝郡の岬(若狭湾内の入江)にいると伝わります。荒俣宏は若狭湾に出現するものとまとめています。
どれくらい大きくなるのですか。
体を広げたときの大きさは六畳ほどともいいます。普段は小さなタコと変わりない外観です。
実在のモデルはありますか。
日本海に棲息するムラサキダコです。足と足の間に膜を持ち、広げると体の十倍にもなるといいます。兵庫県竹野町の海岸などでは「衣ダコ」の俗名で知られています。 ただし実物はひじょうに小さいものです。
似た妖怪はいますか。
愛知県佐久島のフトンカブセです。「ふわっと来て、すっと被せて窒息させる」と語り継がれます。
衣蛸と併せて覚えたい言葉・用語
ムラサキダコ(むらさきだこ)
日本海に棲息するタコ。足の間に膜を持ち、広げると体の十倍になる。
フトンカブセ(ふとんかぶせ)
愛知県佐久島の海の妖怪。被せて窒息させるとされる。
袖志(そでし)
京都府京丹後市丹後町の地名。丹後半島北端にある。