黒い鳥。北方の黒い川にいたという怪鳥で、悪や虚偽の象徴とされる。
クンネチカプとはどんな妖怪か
クンネチカプは、アイヌに伝わる妖怪です。
名は「黒い鳥」を意味します。
記録があります。
吉田巌『アイヌの妖怪説話(続)』によれば、クンネチカプはポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥だといいます。
ポンヤウンペは、アイヌの英雄叙事詩の主人公です。
そして、対になる鳥がいます。
同じくポンヤウンペの征服した北方フウレケナシ(赤い林)には、怪鳥フウレチカプ(赤い鳥、フリカムイのこと)がいたと記されています。
黒い鳥と、赤い鳥です。
クンネチカプの漢字表記と読み方
読みは「くんねちかぷ」です。
クンネは「黒い」、チカプは「鳥」を意味します。
あわせて「黒い鳥」です。
対になる鳥の名も、同じ作りです。
フウレは「赤い」、チカプは「鳥」。フウレチカプは「赤い鳥」です。
そして、住む場所の名も同じ形です。
クンネペッは「黒い川」、フウレケナシは「赤い林」。
色で対になっています。
黒い鳥は黒い川に、赤い鳥は赤い林にいます。
クンネチカプ(くんねちかぷ)
もっとも一般的な表記。
クンネチカッポ(くんねちかっぽ)
短歌に詠まれた形。
フウレチカプ(ふうれちかぷ)
赤い鳥。フリカムイのこと。対になる存在。
クンネチカプの姿と特徴
クンネチカプの姿は、多くが伝わっていません。
名の通り、黒い鳥です。
そして、短歌の解説に描写があります。
「黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむ… 妖鳥」である、と記されます。
屍の肉をついばみます。
群れます。
この描写は、武田泰淳の小説『森と湖のまつり』(1957年)や、短歌の解説にもみえます。
そして、意味が与えられています。
カムイチカッポとは、悪や虚偽の象徴であると解説されます。
クンネチカプの伝承物語
黒い川と赤い林
クンネチカプは、英雄譚の中にいます。
吉田巌『アイヌの妖怪説話(続)』によれば、クンネチカプはポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥です。
征服された土地の鳥です。
そして、対になる鳥がいます。
同じくポンヤウンペの征服した北方フウレケナシ(赤い林)には、怪鳥フウレチカプ(赤い鳥、フリカムイのこと)がいたと記されています。
黒と赤です。
川と林です。
英雄が北方の土地を征服する話のなかに、それぞれの土地の主として置かれています。
土地と鳥が、色で対応しています。
フリカムイは、石狩の地名伝説にも登場する巨鳥です。
黒い川、暗い川
クンネチカプには、地名との関わりが語られます。
クンネチカプとの関連性は不明ですが、フリカムイと関わって「黒い川、暗い川」と名付けられたと伝わる山越郡の国縫川(クンナイカワ)が実在します。
実在の川です。
名の意味が重なります。
クンネペッが「黒い川」、国縫川(クンナイカワ)が「黒い川、暗い川」。
同じ意味の名です。
ただし、関連は確かめられていません。
クンネチカプとの関連性は不明と記されています。
この図鑑では、そこを分けて書いています。
名の意味が近いことと、同じものであることは別です。
悪や虚偽の象徴
クンネチカプは、近代の短歌にも詠まれました。
バチェラー八重子が詠んだ短歌の歌集『若きウタリに』の一首です。
ウタリの子に 君流せし血 生きてあり などか恐れむクンネチカッポ等
ウタリは、アイヌ語で同胞を指します。
そして、解説がついています。
カムイチカッポ(kunne-chikap-po)とは、悪や虚偽の象徴であると解説されます。
悪と、偽りです。
また、こうも記されます。
「黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむ… 妖鳥」
この描写は、武田泰淳の小説『森と湖のまつり』(1957年)にもみえます。
古い説話から、近代の短歌と小説へと引き継がれた名です。
クンネチカプの伝承地域
クンネチカプは、アイヌに伝わります。
ポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥とされます。
実在の川との関わりが語られます。
フリカムイと関わって「黒い川、暗い川」と名付けられたと伝わる山越郡の国縫川(クンナイカワ)が実在しますが、クンネチカプとの関連性は不明です。
確かめられていない土地を、伝承地として挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。
クンネチカプの正体と考えられているもの
クンネチカプについては、次のように整理できます。
一つめは、黒い鳥です。クンネは「黒い」、チカプは「鳥」。あわせて「黒い鳥」です。
二つめは、征服された土地の怪鳥です。吉田巌『アイヌの妖怪説話(続)』によれば、ポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥とされます。
三つめは、赤い鳥との対です。同じくポンヤウンペの征服した北方フウレケナシ(赤い林)には怪鳥フウレチカプ(赤い鳥、フリカムイのこと)がいたと記されています。
四つめは、悪や虚偽の象徴です。バチェラー八重子の歌集『若きウタリに』に詠まれ、カムイチカッポとは悪や虚偽の象徴であると解説されます。
五つめは、屍をついばむ鳥です。「黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむ… 妖鳥」であると、武田泰淳の小説『森と湖のまつり』や短歌の解説にみえます。
この鳥は、色と土地で対を作る形で語られています。 黒い川に黒い鳥、赤い林に赤い鳥です。
クンネチカプをめぐる妖怪のつながり
クンネチカプが登場する作品
クンネチカプは、近代の文学にも残った名です。
古い説話から、バチェラー八重子の短歌、武田泰淳の小説へと引き継がれました。
資料はアイヌ文化の研究書と、近代の文学に分かれます。
クンネチカプが登場する研究
アイヌの妖怪説話
吉田巌。クンネチカプをポンヤウンペの征服した黒い川の怪鳥として記します。
クンネチカプが登場する短歌・小説
若きウタリに
バチェラー八重子の歌集。クンネチカッポを詠んだ一首があります。
森と湖のまつり
武田泰淳、1957年。屍の肉をついばむ妖鳥としての描写がみえます。
クンネチカプが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
アイヌの怪鳥として、フリカムイと並べて取り上げられます。
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クンネチカプについてよくある質問
名前の意味は何ですか。
クンネは「黒い」、チカプは「鳥」を意味します。あわせて「黒い鳥」です。
どこにいたのですか。
ポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥とされます。
フウレチカプとは何ですか。
「赤い鳥」、つまりフリカムイのことです。北方フウレケナシ(赤い林)にいたと記され、クンネチカプと対になります。
どんな意味を持つ鳥ですか。
カムイチカッポとは、悪や虚偽の象徴であると解説されます。 また「黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむ… 妖鳥」であるとも記されています。
クンネチカプと併せて覚えたい言葉・用語
ポンヤウンペ(ぽんやうんぺ)
アイヌの英雄叙事詩の主人公。北方の土地を征服したとされる。
ウタリ(うたり)
アイヌ語で同胞のこと。
バチェラー八重子(ばちぇらーやえこ)
アイヌの歌人。歌集『若きウタリに』の著者。