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北海道

アッコロカムイとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

アッコロカムイ  / アッコロカムイ

水の妖怪獣の妖怪 アイヌの伝承

北海道の内浦湾(噴火湾)の主とされる、船を丸のみにする巨大なタコ。

アッコロカムイの姿を描いた図

MaedaAkihiko 「噴火湾(内浦湾)と羊蹄山(北海道)」 2022年 / CC BY-SA 出典

アッコロカムイとはどんな妖怪か

アッコロカムイは、海を支配する大ダコです。

海そのものの主として語られました。

北海道南西部の内浦湾、通称噴火湾の主として語られてきました。名はアイヌ語の「アッ・コロ・カムイ」で、「紐(触手)をもつもの」という意味になります。

誇張された話では、その大きさは畑一町、およそ一ヘクタールもあるといいます。弁才船やクジラさえ丸のみにすると恐れられました。

体は全体が赤く、その赤が空まで照り返すので、遠くからでも居場所が分かったといいます。だから人は近寄らないようにしました。

飲み込まれずとも、ブリの群れる場所へ漁に出れば舟を転覆させられるのが常でした。そのため昔の人は用心のために大鎌を持って海へ出たと伝わります。

アッコロカムイの漢字表記と読み方

読みは「あっころかむい」です。仮名書きが一般的で、漢字の「大章魚」は当て字にあたります。

名の後半にある「カムイ」は、アイヌ語で人の力を越えたものを広く指す語です。恵みをもたらすものにも、災いをもたらすものにも使われます。

なお、吉田巌が一九一四年に「アツウイナまたはアッコロカムイとも」として載せた話を、更科源蔵は一九七一年に「アドイ・イナウ」の名で転載しました。同じ話が別の名で広まっているため、資料によって呼び名が食い違います。

アッコロカムイ(あっころかむい)

もっとも広く使われる表記。アイヌ語の at kor kamuy から。

大章魚(おおだこ)

漢字を当てた表記。

アツウイナ(あつういな)

「海のイナウ(幣)」の意かとされる別の呼び名。アトイナウとも。

アッコログル(あっころぐる)

タコそのものを指すアイヌ語。「細い紐が・ある・もの」の意。

アッコロカムイの姿と特徴

アッコロカムイの姿は、次のように伝えられます。

… 巨大なタコ。触手を持つ。
… 全身が赤い。空まで照り返すほど。
大きさ … 畑一町(およそ一ヘクタール)とも、二十間四方(およそ四十メートル四方)とも。
振る舞い … 船やクジラを丸のみにする。舟を転覆させる。

大きさの伝えは資料によって幅があります。どちらが正しいというより、「見た者が言葉にできる限度を越えていた」ことの表現とみるのが自然です。

虻田郡豊浦町礼文華のエコリ岬では、イタクネップと名乗る男が、クジラを丸のみにする二十間四方のものを見たと伝わります。そのときあたりの潮は泡立って凄まじいことになっていたといいます。

赤い色が繰り返し語られるのは、遠くからでも見分けられる目印だったためです。

アッコロカムイの伝承物語

  1. クモが海へ移された ─ 起こりの話
  2. 投げ捨てた帯がタコになった ─ もう一つの起こり
  3. 噴火湾のほかの主たち

クモが海へ移された ─ 起こりの話

アッコロカムイの起こりとして、次の話が伝わります。

かつて礼文華の地に、ヤウシケプという巨大なクモの怪物が現れました。家々を壊し、土地を荒らし回ります。

北の積丹の村長が旅の途中に訪れ、洞窟に隠れていた五人の男から事情を聞き出し、彼らを連れて洞爺湖にいる自分の息子を頼りました。

サマイクルカムイとオキクルミにクモを小さくしてほしいと頼みましたが、命じられたニッネカムイの力は及びませんでした。

そこで次に頼まれた海のレプンカムイが、地上の人々を救うためにヤウシケプを海へ引き取ればよいという話になります。噴火湾へ引き入れられたヤウシケプは、姿をタコに変えられました。

これがアッコロカムイとして威を振るうようになったのだといいます。陸の災いを海へ移した、という筋書きです。

投げ捨てた帯がタコになった ─ もう一つの起こり

まったく別の起こりの話も伝わります。

コタンカルカムイが熊に傷つけられたとき、その妻が駆けつけて介抱しました。しかし地上でつけた衣服は天の世界へ持ち込めないため、妻は着ていたものを脱ぎ捨てます。

このとき脱いだ「ポンクッ」、つまり肌帯を海に投げると、それがアッコルカムイ、すなわちタコになったとされます。

この肌帯は八本の組紐で編んだものでした。タコの足が八本であることと、組紐が八本であることが重ねられています。

同じ形の話は、ほかの海の怪物にも語られます。川から流れてきた女の肌着が化けた「アツゥイカクラ」という巨大ナマコがいて、流木などに口をつけて海に浮かび、近づいた漁船をひっくり返すといいます。

身につけていたものが海の主になるという語り方が、この土地には繰り返し現れます。

噴火湾のほかの主たち

アイヌには、噴火湾の大きな化け物の話がほかにも伝わります。

アツゥイコロエカシ … 室蘭近海の主。船を飲み込む巨大な赤い化け物とされます。大ダコとは別のものと考えられていますが、次に述べるレブンエカシの別名である可能性も指摘されています。

レブンエカシ … 「沖の長老」を意味します。八頭ものクジラを飲み込むといいます。

レブンエカシには、こんな話が残ります。あるとき二人の漁師が飲み込まれましたが、腹の中で火を焚いたので吐き出され、命拾いしました。ただし毒にあたったのか、頭髪がすべて抜けて頭が禿げ上がってしまったといいます。

これらは別々の名を持ちますが、いずれも噴火湾という一つの海をめぐる話です。船を飲み込む何かが、この海には確かにいると考えられていました。

アッコロカムイの伝承地域

アッコロカムイの伝承地は、北海道の内浦湾(噴火湾)です。特定の建物や祠があるわけではなく、海そのものが伝承地です。

具体的な地名が出てくるのは、虻田郡豊浦町礼文華とその近くのエコリ岬、それに室蘭近海です。いずれも湾の南側にあたります。

会いに行ける場所というより、見えたら近寄ってはいけない場所として語られてきました。

内浦湾(噴火湾)(うちうらわん(ふんかわん))

アッコロカムイの伝わる海

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内浦湾(噴火湾)の所在地:北海道南西部 渡島半島と胆振地方に囲まれた湾

アッコロカムイの伝承地は、この湾です。ここが主の海です。

渡島半島と胆振地方に囲まれた大きな湾で、正式には内浦湾、通称で噴火湾と呼ばれます。まわりに火山が並ぶことからこの通称がつきました。

ブリなどの群れる漁場であり、漁に出る場所と、恐れられた場所がそのまま重なっています。

湾を望む道は各所にあり、車で回ることができます。

湾そのものが伝承地であり、特定の一点を指す施設はありません。

エコリ岬(礼文華)(えこりみさき(れぶんげ))

目撃談の伝わる岬

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エコリ岬(礼文華)の所在地:北海道虻田郡豊浦町礼文華

イタクネップと名乗る男が、クジラを丸のみにする巨大なものを見たと伝わる場所です。

礼文華は、起こりの話に出てくるヤウシケプが荒らした土地でもあります。つまりこの一帯は、アッコロカムイの話の始まりと目撃談の両方が重なる場所ということになります。

内浦湾に面した海沿いの土地で、峠道から海を見下ろすことができます。

岬そのものは自然地形で、案内板の有無は現地で確かめてください。

アッコロカムイの正体と考えられているもの

アッコロカムイの正体については、いくつかの見方があります。

実在の大ダコとする見方が、もっとも素直なものです。北の海には大きなタコがおり、それを見た驚きが誇張されて伝わったとするものです。畑一町という大きさは明らかに誇張ですが、船から見上げるほどの生きものであれば、そう語られても不思議ではありません。

赤い色が繰り返し語られる点も、この見方を支えます。ミズダコは興奮すると体色を変えます。

海の危険そのものを形にしたとする見方もあります。噴火湾は良い漁場である一方、天候の急変で舟が転覆する海でもありました。「アッコロカムイのせいだ」と語ることは、海で人が失われる理由を説明する言葉でもありました。

陸の災いを海へ移した話という読み方もできます。クモの怪物ヤウシケプが海へ引き取られてタコになったという起こりの話は、まさにそう語っています。

はっきりしていないこともあります。 アツウイナ、アッコロカムイ、アトイコルエカシ、レブンエカシといった名がどこまで同じものを指すのかは、資料によって食い違い、定まっていません。

アッコロカムイをめぐる妖怪のつながり

アッコロカムイが登場する作品

アッコロカムイは、作品での知名度が伝承そのものに追いついていない妖怪です。

巨大なタコという分かりやすい姿を持ちながら、ゲゲゲの鬼太郎や妖怪ウォッチのような広く知られた作品での代表的な登場例は確認できませんでした。

近年は海の巨大生物を扱うゲームや読み物で名を見かけるようになりましたが、伝承の細部まで踏まえたものは多くありません。

アッコロカムイが登場する書物

更科源蔵『アイヌ伝説集』

一九七一年刊。「アドイ・イナウ」の名でこの話を伝えています。

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吉田巌の記録(一九一四年)

「アツウイナまたはアッコロカムイとも」として説話を載せた早い記録です。

アッコロカムイが登場するゲーム

日本の妖怪を扱う各種のゲーム

巨大な海の妖怪として実装されることがあります。

北海道を舞台にした作品

アイヌの伝承を題材にした作品で名が使われることがあります。

アッコロカムイが登場する観光・地域

噴火湾一帯の観光案内

湾の名の由来とあわせて紹介されることがあります。

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アッコロカムイについてよくある質問

アッコロカムイとは何ですか。

北海道の内浦湾(噴火湾)の主とされる巨大なタコです。船やクジラを丸のみにすると恐れられました。名はアイヌ語で「紐(触手)をもつもの」を意味します。

アッコロカムイはどこに出ますか。

北海道の内浦湾です。とくに虻田郡豊浦町礼文華のエコリ岬に目撃談が伝わります。特定の建物ではなく、湾そのものが伝承地です。

アッコロカムイの大きさはどれくらいですか。

伝えによって幅があります。畑一町(およそ一ヘクタール)とするものと、二十間四方(およそ四十メートル四方)とするものがあります。どちらも誇張とみられます。

なぜ体が赤いのですか。

理由ははっきりしていません。赤い色が空まで照り返すので遠くからでも居場所が分かった、と語られます。近寄らないための目印として語られていたと考えられます。

アッコロカムイはもとは何だったのですか。

陸を荒らした巨大なクモ、ヤウシケプが海へ引き取られてタコに変えられたとする話があります。また、脱ぎ捨てられた八本組の肌帯が化けたとする話もあります。

アッコロカムイと併せて覚えたい言葉・用語

噴火湾(ふんかわん)

北海道南西部の内浦湾の通称。まわりに火山が並ぶことによる。アッコロカムイの伝わる海。

ヤウシケプ(やうしけぷ)

礼文華を荒らしたとされる巨大なクモの怪物。海へ引き取られてアッコロカムイになったとされる。

レブンエカシ(れぶんえかし)

「沖の長老」の意。八頭のクジラを飲み込むという噴火湾の化け物。

イナウ(いなう)

木を削って作る幣。アッコロカムイの別名アツウイナは「海のイナウ」の意かとされる。