動物が人に懸想して憑くこと。絶世の美女の姿で現れるという。
コシンプとはどんな妖怪か
コシンプの漢字表記と読み方
読みは「こしんぷ」です。
地域によって「コシンプウ」「コシンプイ」ともいいます。
そして、頭に語が付いて分かれます。
イワは「山」。イワコシンプは、キツネなどの山林の動物のもの。
ルルは「波」。ルルコシンプは、アザラシなどの海の動物のもの。
棲む場所で呼び分けられます。
そして、善悪の両方があります。
人に憑いて様々な悪事を働く一方、好きな男のトゥレンペ(憑き神)になることもあります。
トゥレンペは、その人につく守り神です。
コシンプ(こしんぷ)
もっとも一般的な表記。
コシンプウ(こしんぷう)
地域による言い方。
コシンプイ(こしんぷい)
地域による言い方。
イワコシンプ(いわこしんぷ)
山林の動物のもの。イワは山の意。
ルルコシンプ(るるこしんぷ)
海の動物のもの。ルルは波の意。
コシンプの姿と特徴
コシンプの姿は、現れるときに変わります。
姿を現す際には絶世の美女となって現れるといいます。
正体は動物です。
キツネなどの山林の動物(イワコシンプ)。
アザラシなどの海の動物(ルルコシンプ)。
ルルコシンプは、人魚のようなものともいわれます。
そして、憑かれた人の様子が伝わります。
ある伝説によれば、ルルコシンプに憑かれた女が良い声で「海へ来い、海へ来い」と誘う歌を歌うことがよくあり、潮の響きのような良い声であったが、呆気のように無表情だったといいます。
声だけが美しく、顔が動きません。
コシンプの伝承物語
何年かのうちに必ず死ぬ
コシンプに憑かれることは、重い意味を持ちます。
人間に憑いて様々な悪事を働くといい、これらに憑かれると、どんな者でも何年かのうちに必ず死んでしまうともいいます。
逃れられません。
アイヌの民俗には、こう考える枠組みがあります。
人間の気が狂うのは、他者に呪われたか妖魔が憑いたかのどちらかとされます。
二つに一つです。
そして、淫欲を司るパウチカムイとともに人間を狂気に陥れるものが、このコシンプとされています。
パウチカムイとコシンプ。
どちらも、人の心を乱すものとして並べられます。
懸想して憑くという性質が、淫欲の神と同じ枠に置かれたわけです。
海へ来いと歌う
ルルコシンプに憑かれた人の様子が、具体的に伝わっています。
ある伝説によれば、ルルコシンプに憑かれた女がいました。
その女は、歌いました。
良い声で「海へ来い、海へ来い」と誘う歌を歌うことがよくあったといいます。
海へ呼ぶ歌です。
潮の響きのような良い声であったといいます。
ところが、顔は動きません。
呆気のように無表情だったといいます。
声と表情が一致しません。
歌っているのは、女ではありません。
憑いているものが、女の声を借りて海へ呼んでいるという形です。
守り神にもなる
コシンプには、もう一つの面があります。
好きな男のトゥレンペ(憑き神)になることもあり、そのときには善神として、憑いた男を良い運命へと導くといいます。
守り神になります。
トゥレンペは、その人につく守り神です。
同じものが、害にも助けにもなります。
相手を殺すか、良い運命へ導くか。 その分かれ目は語られていません。
アイヌの伝承では、この形は珍しくありません。
熊も狐も、善い神にも悪い神にもなります。
コシンプは、懸想という一点で人と関わります。
その気持ちが、どちらへ向くかで結果が変わります。
コシンプの伝承地域
コシンプは、樺太や北海道のアイヌ民話に伝わります。
北海道ではキツネなどの山林の動物のものをイワコシンプ(イワは山の意)といいます。
オホーツク海岸から樺太にかけては、アザラシなどの海の動物のものをルルコシンプ(ルルは波の意)といいます。
山と海で呼び名が分かれます。
特定の土地に結びついた社や碑は確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。
コシンプの正体と考えられているもの
コシンプについては、次のように整理できます。
一つめは、懸想して憑くものです。動物が人間の異性に懸想して憑くことをいい、姿を現す際には絶世の美女となって現れるとされます。
二つめは、山と海です。イワコシンプはキツネなどの山林の動物、ルルコシンプはアザラシなどの海の動物のものです。 ルルコシンプは人魚のようなものともいわれます。
三つめは、狂気です。アイヌの民俗では人間の気が狂うのは他者に呪われたか妖魔が憑いたかのどちらかとされ、淫欲を司るパウチカムイとともに人間を狂気に陥れるものがコシンプです。
四つめは、守り神です。好きな男のトゥレンペ(憑き神)になることもあり、そのときには善神として、憑いた男を良い運命へと導くといいます。
コシンプは、惚れられることの恐ろしさを語る名です。 憑かれれば何年かのうちに必ず死ぬとされました。
コシンプをめぐる妖怪のつながり
コシンプが登場する作品
コシンプは、憑くことの両面を語る名です。
殺すこともあれば、良い運命へ導くこともあります。 同じものが、向きによって変わります。
資料はアイヌ文化の研究書が中心です。
コシンプが登場する研究
コシンプが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
アイヌの憑き物として、パウチカムイと並べて取り上げられます。
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コシンプについてよくある質問
コシンプとは何ですか。
動物が人間の異性に懸想して憑くことをいいます。樺太や北海道のアイヌ民話に伝わる精霊です。
イワコシンプとルルコシンプの違いは何ですか。
イワコシンプはキツネなどの山林の動物のもの(イワは山の意)、ルルコシンプはアザラシなどの海の動物のもの(ルルは波の意)です。
憑かれるとどうなりますか。
どんな者でも何年かのうちに必ず死んでしまうともいいます。アイヌの民俗では、淫欲を司るパウチカムイとともに人間を狂気に陥れるものとされます。
善い面もあるのですか。
あります。 好きな男のトゥレンペ(憑き神)になることもあり、そのときには善神として、憑いた男を良い運命へと導くといいます。
コシンプと併せて覚えたい言葉・用語
トゥレンペ(とぅれんぺ)
アイヌで、その人につく守り神。
イワ(いわ)
アイヌ語で山。イワコシンプの語頭。
ルル(るる)
アイヌ語で波。ルルコシンプの語頭。