鳥取城に仕えた飛脚の狐。城の書状を江戸まで運んだという。

Tottori tanuki11 「中坂神社(鳥取市久松山)」 2013年 / CC BY-SA 3.0 出典
桂蔵坊とはどんな妖怪か
桂蔵坊は、鳥取県に伝わる狐です。
鳥取城に仕え、城の書状を江戸まで運ぶ飛脚をつとめたといいます。
鳥取城下の久松山に棲んでいたとされます。
そして、藩主に見出されました。
飛脚の役目を与えられ、鳥取から江戸までを一日で往復したといいます。
一日です。
人には、できません。
そして、書状を確実に届けることで、藩に重宝されました。
狐が、公の役目についています。
多くの化け狐の話とは、逆の立場です。
桂蔵坊の漢字表記と読み方
読みは「けいぞうぼう」です。
狐に「坊」がつくのは、名のある狐の証です。
澤蔵司(沢蔵司)、宗旦狐、桂蔵坊。 どれも、人と交わった狐です。
そして、この狐には役目がありました。
鳥取城の飛脚です。
飛脚は、書状や荷物を運ぶ人です。
藩の書状を運ぶのは、重い役目です。
藩主から江戸屋敷へ、江戸から国元へ。 急ぎの知らせを運びます。
それを、狐が務めました。
桂蔵坊(けいぞうぼう)
もっとも一般的な表記。
圭蔵坊(けいぞうぼう)
別の書き方。
桂蔵坊稲荷(けいぞうぼういなり)
鳥取市の栗谿神社境内に祀られる社の名。
桂蔵坊の姿と特徴
桂蔵坊の姿については、多くが語られていません。
正体 … 狐。
棲み処 … 鳥取城下の久松山。
役目 … 城の飛脚。
速さ … 鳥取から江戸までを一日で往復。
人の姿に化けたともいわれます。
飛脚として城に出入りするには、人の姿が必要でした。
そして、最期には罠にかかりました。
狐の姿に戻っていたということです。
役目を持つときは人、山にいるときは狐。
その境目で、命を落としました。
桂蔵坊の伝承物語
一日で江戸へ
桂蔵坊の働きは、速さにありました。
鳥取から江戸までを一日で往復したといいます。
鳥取から江戸まで、人の足では十日以上かかります。
それを、一日です。
藩にとって、これは大きな利です。
急ぎの知らせが、その日のうちに届きます。
そして、確実でした。
書状を確実に届けることで、藩に重宝されました。
多くの化け狐の話は、人を騙すものです。
狐火で迷わせ、道を失わせ、食べ物を奪う。
桂蔵坊は、逆です。
人の役に立ち、藩に仕えました。
そのため、いまも祀られています。
罠にかかる
桂蔵坊の最期は、罠でした。
油揚げの仕掛けられた罠にかかったという話が伝わります。
狐の好物です。
役目の途中だったとも、山に戻ったときだったともいいます。
仕掛けたのは、狐の害に困った者だったとも、桂蔵坊と知らなかった者だったともいいます。
藩に仕えた狐が、罠で死にました。
藩は、これを悼みました。
そして、社を建てて祀りました。
鳥取市の栗谿神社の境内にある「桂蔵坊稲荷」です。
稲荷は、狐を神使とする社です。
桂蔵坊は、そこに納まりました。
名のある狐たち
日本には、名を持つ狐がいくつもいます。
澤蔵司(東京都文京区)… 伝通院で学んだ狐。慈眼院澤蔵司稲荷に祀られる。
宗旦狐(京都市)… 千宗旦に化けて茶をたてた狐。相国寺に伝わる。
桂蔵坊(鳥取市)… 鳥取城の飛脚をつとめた狐。栗谿神社に祀られる。
おさん狐(島根県)、刑部狸(愛媛県)… 各地に名のある獣がいます。
共通することがあります。
どれも、人と親しく交わっています。
そして、死後に社を建てて祀られています。
騙す狐は、祀られません。
役に立った狐だけが、名を残しました。
桂蔵坊の伝承地域
桂蔵坊に関わる場所は、鳥取県鳥取市にあります。
栗谿神社の境内には、桂蔵坊を祀る「桂蔵坊稲荷」があります。
久松山は、桂蔵坊が棲んでいたとされる山です。鳥取城の跡があります。
現在、久松山一帯は久松公園として整備され、鳥取城跡は国の史跡に指定されています。
桂蔵坊稲荷の正確な所在と参拝の可否は、確かめられていません。
確かめられていない住所を書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。訪ねる際は、鳥取市や社の案内をご確認ください。
桂蔵坊の正体と考えられているもの
桂蔵坊については、次のように整理できます。
一つめは、城の飛脚です。鳥取城に仕え、城の書状を江戸まで運ぶ飛脚をつとめたといい、鳥取から江戸までを一日で往復したとされます。
二つめは、久松山の狐です。鳥取城下の久松山に棲んでいたとされます。 城のすぐ裏の山です。
三つめは、罠にかかった狐です。油揚げの仕掛けられた罠にかかったという話が伝わります。 藩はこれを悼み、社を建てて祀りました。
四つめは、名のある狐の一つです。東京の澤蔵司、京都の宗旦狐、島根のおさん狐。 どれも人と親しく交わり、死後に祀られています。
桂蔵坊が何であったかは、わかっていません。 ただ、役に立った獣だけが名を残して祀られるという形は、各地に共通しています。
桂蔵坊をめぐる妖怪のつながり
桂蔵坊が登場する作品
桂蔵坊は、人の役に立った狐です。
藩に仕え、書状を運び、罠で死に、社に祀られました。 騙す狐の話とは、まったく違う筋です。
資料は鳥取の郷土史と伝説集が中心です。
桂蔵坊が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
名のある狐として、澤蔵司や宗旦狐と並べて取り上げられます。
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桂蔵坊についてよくある質問
桂蔵坊は何をしたのですか。
鳥取城に仕え、城の書状を江戸まで運ぶ飛脚をつとめたといいます。鳥取から江戸までを一日で往復したとされます。
どこに棲んでいたのですか。
鳥取城下の久松山です。鳥取城のある山で、現在は久松公園として整備され、鳥取城跡は国の史跡に指定されています。
最期はどうなったのですか。
油揚げの仕掛けられた罠にかかったという話が伝わります。藩はこれを悼み、社を建てて祀りました。
いまも祀られていますか。
祀られています。 鳥取市の栗谿神社の境内に、桂蔵坊を祀る「桂蔵坊稲荷」があります。
桂蔵坊と併せて覚えたい言葉・用語
久松山(きゅうしょうざん)
鳥取市の山。鳥取城跡がある。桂蔵坊が棲んだとされる。
飛脚(ひきゃく)
書状や荷物を運ぶ役。藩の急ぎの知らせを担った。
栗谿神社(くりたにじんじゃ)
鳥取市の神社。境内に桂蔵坊稲荷がある。