八丈島の山小屋に出るいたずら者。斬られた手を返され、飢饉で恩を返した。
テンジとはどんな妖怪か
テンジは、八丈島に伝わる民話に登場する妖怪です。
かつて八丈島の山奥には、防災のための山小屋がありました。
そこに、毎晩出ました。
夜になるとここにテンジが現れ、小屋の番人の耳や足をつねるなどのいたずらをしていました。
つねります。
番人が怒っても、こたえません。
番人が驚いてテンジを怒鳴りつけても、テンジは「ヒャッ、ヒャッ」と笑いながら逃げて行くだけでした。
笑って逃げます。
そして、ある晩のことです。
美しい少女が村の名主の娘を名乗り、ぼたもちの差し入れといって重箱を届けに来ました。
テンジの漢字表記と読み方
読みは「てんじ」です。
八丈島の言葉です。
名の由来は伝わっていません。
姿の記述も、多くありません。
わかるのは、次のことです。
人の姿に化けられる(美しい少女になった)。
手が竹でできている。
「ヒャッ、ヒャッ」と笑う。
竹の手が、正体を明かします。
八丈島は、伊豆諸島の島です。
東京都に属し、本土から遠く離れています。
テンジ(てんじ)
もっとも一般的な表記。
てんじ(てんじ)
ひらがなで書くこともある。
テンジの姿と特徴
テンジの姿は、化けた形でしか語られません。
化けた姿
美しい少女。村の名主の娘を名乗る。
正体を示すもの
手が竹で出来ている。
声
「ヒャッ、ヒャッ」という笑い声。
そして、重箱の中身が違いました。
残された重箱にはぼたもちではなく、牛の糞が入っていたといいます。
ぼたもちではありませんでした。
いたずらの中身が、そこに出ています。
テンジの伝承物語
手は竹だった
ある晩、テンジは娘に化けて来ました。
美しい少女が村の名主の娘を名乗り、ぼたもちの差し入れといって重箱を届けに来ました。
山番は、疑いました。
こんな夜に娘が1人で山を訪れるわけがない、テンジに違いないと考えます。
そこで、試します。
重箱を受け取ると見せかけ、娘を小屋に引き入れようと手をつかむと、その手は竹で出来ていました。
竹です。
山番がナタで竹の手を斬り落とすと、テンジは悲鳴を上げて逃げていきました。
そして、重箱を確かめます。
ぼたもちではなく、牛の糞が入っていました。
ただのいたずらでした。
手を返してやる
翌晩、テンジは戻って来ました。
テンジが自分の手を求めて小屋へやってきたのです。
取り返しに来ました。
山番の対応が、この話の要です。
山番は小屋に残されていた竹の手を投げ付けてやりました。
返しました。
テンジは手を受け取り、いつもの笑い声を上げて山へ帰って行きました。
「ヒャッ、ヒャッ」です。
恨みませんでした。
斬った側も返し、斬られた側も笑って帰る。 後を引きません。
この一場面が、後の展開につながります。
飢饉に食べ物が届く
その年、八丈島を大飢饉が襲いました。
山番の番人も飢えに耐えかね、小屋で死を待つばかりでした。
動けません。
ある夜のことです。
小屋に何かが投げ入れられたような音がしました。
よく見ると、そこにありました。
山芋や木の実がどっさりとあったのです。
山のものです。
番人はテンジがくれた物と確信して礼を言うと、いつものようなテンジの笑い声と、山の方へ駆けて行く足音が聞こえました。
「ヒャッ、ヒャッ」と笑って帰りました。
番人はその食料の差し入れのおかげで、飢饉を乗り越えて生き延びたといいます。
手を返したことが、命を救いました。
テンジの伝承地域
テンジは、八丈島に伝わります。
東京都に属する伊豆諸島の島です。
舞台は、八丈島の山奥にあった防災のための山小屋です。
山小屋そのものが現存するかは確かめられていません。
山と小屋が舞台であり、テンジを祀った社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
テンジの正体と考えられているもの
テンジについては、次のように整理できます。
一つめは、いたずら者です。夜になると山小屋に現れ、番人の耳や足をつねるなどのいたずらをし、怒鳴られると「ヒャッ、ヒャッ」と笑いながら逃げていきました。
二つめは、竹の手です。美しい少女に化けて名主の娘を名乗りましたが、手をつかむとその手は竹で出来ていました。 重箱の中身もぼたもちではなく牛の糞でした。
三つめは、手を返す話です。翌晩、自分の手を求めて小屋へやってきたテンジに、山番は竹の手を投げ付けて返してやりました。
四つめは、恩返しです。その年の大飢饉で番人が死を待つばかりのとき、小屋に山芋や木の実がどっさりと投げ入れられ、飢饉を乗り越えて生き延びたといいます。
この話は、いたずら者が助け手になる筋です。 斬っても、返せば恨まれないという一点が中心にあります。
テンジをめぐる妖怪のつながり
テンジが登場する作品
テンジは、恩を返す妖怪です。
つねられ、化かされ、手を斬られ、それでも笑って帰り、飢饉には食べ物を届けました。
資料は八丈島の民話の採録が中心です。
テンジが登場する研究
テンジが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
島の妖怪として、伊豆諸島の伝承と並べて取り上げられます。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
テンジについてよくある質問
テンジは何をするのですか。
夜になると山小屋に現れ、小屋の番人の耳や足をつねるなどのいたずらをします。怒鳴りつけても「ヒャッ、ヒャッ」と笑いながら逃げて行くだけでした。
どうやって正体がわかったのですか。
美しい少女が村の名主の娘を名乗って重箱を届けに来たときに、山番が手をつかむとその手は竹で出来ていました。 重箱にはぼたもちではなく牛の糞が入っていました。
斬られた手はどうなりましたか。
翌晩、テンジが自分の手を求めて小屋へやってきたので、山番は小屋に残されていた竹の手を投げ付けてやりました。 テンジは手を受け取り、笑い声を上げて山へ帰りました。
その後どうなったのですか。
その年、八丈島を大飢饉が襲い、番人が死を待つばかりのとき、小屋に山芋や木の実がどっさりと投げ入れられました。 番人は飢饉を乗り越えて生き延びたといいます。
テンジと併せて覚えたい言葉・用語
八丈島(はちじょうじま)
東京都に属する伊豆諸島の島。
名主(なぬし)
村の長。テンジはその娘を名乗った。
ぼたもち(ぼたもち)
餅菓子。テンジが差し入れと偽ったもの。