半田の酒蔵に忍び込んで元酒を飲んだ化け狸。許されて店を守る約束をした。
のた坊主とはどんな妖怪か
のた坊主は、化け狸です。
現在の愛知県半田市堀崎町付近に伝わります。
やることが決まっています。
人間に化けて、白と黒のだんだら模様のでんちを着て、毎年酒蔵に勝手に入ってきて元酒を飲んでしまうといいます。
でんちは、袖のない羽織のような上着です。
毎年です。
時期も決まっています。
味がよく出来上がる2、3月になると、竹藪の穴から出てきた狸が子供に化けて酒蔵に忍び込んで酒を盗み飲んでしまい、酒屋は悩まされました。
捕まえられませんでした。
のた坊主の漢字表記と読み方
読みは「のたぼうず」です。
名の由来には、説があります。
「のた」とは、逃げる姿が、のたのたしているという意味ともされます。
酔って逃げる姿です。
ただし、注意が必要です。
原資料となる『半田の伝説』には言及がなく、1978年の小島勝彦の編著『尾張の民話』にはみられます。
これについて、愛知の伝承などの研究や周知を目的とするあいち妖怪保存会は、疑問点があるとしています。
後から付けられた説明かもしれません。
原資料に無いことは、原資料に無いと書いておきます。
のた坊主(のたぼうず)
もっとも一般的な表記。
ノタ坊主(のたぼうず)
カタカナを交えた書き方。
のた坊主の姿と特徴
のた坊主の姿は、次のように伝わります。
正体 … 狸。
化けた姿 … 人間。子供に化けることもある。
着るもの … 白と黒のだんだら模様のでんち。
目当て … 元酒。
だんだら模様は、縞や段の模様です。
そして、狸には事情がありました。
捕まったとき、のた坊主は酒蔵の近くの藪の穴には自分を必要とするまだ幼い狸が二匹いると訴えました。
子がいます。
のた坊主の伝承物語
竹藪を刈れない
酒屋には、動けない事情がありました。
上半田の酒蔵が並んでいた地域の北側に竹藪があり、桶の箍をつくるために重宝していました。
箍は、桶を締める輪です。
竹が要ります。
ところが、その竹藪には狸の棲む穴もありました。
味がよく出来上がる2、3月になると、そこから出てきた狸が子供に化けて酒蔵に忍び込みます。
酒屋は、二重に困りました。
蔵で狸を殺すわけにはいかず、箍作りのことがあるために竹藪を刈り取って穴を埋めるわけにもいかなかったのです。
蔵は商売の場です。
竹藪は道具の元です。
どちらも壊せません。
酔って捕まる
利口な狸は、なかなか捕まりませんでした。
しかし、ある日のことです。
ある酒蔵に忍び込んだのた坊主は、すっかり酔いがまわって逃げることもままならなくなったときに、待ち構えていた男たちに捕まりました。
飲みすぎました。
そこで、のた坊主は訴えます。
酒蔵の近くの藪の穴には、自分を必要とするまだ幼い狸が二匹いる。
今後は盗みもしないし、一族のものにもそんなことはさせないので、助けてくれ。
子のことを言いました。
その酒蔵の男たちは、のた坊主のその様子を哀れに思い、のた坊主を許すことにしました。
たぬき祭りになる
許されたのた坊主は、恩返しをしました。
その恩返しに、その酒蔵の商売が繁盛するように守ると約束しました。
そして、実際にそうなります。
その家は本当にますます繁盛しました。
狸の行いに、主人が感心します。
いつしか毎年たぬき祭りを催して、そのときには元酒を狸の穴に贈っていたといいます。
祭りになりました。
この話は、テレビにもなりました。
『まんが日本昔ばなし』(1990年3月3日放送)では、民話には出てこない酒蔵の主人の母親が登場します。
のた坊主が捕まった時に主人の母親がのた坊主を解放して、のた坊主に酒を届けてやることを提案し、主人が毎年酒を届けるようになり、その後その酒屋が繁盛したという結末になっています。
のた坊主の伝承地域
のた坊主は、現在の愛知県半田市堀崎町付近に伝わります。
上半田の酒蔵が並んでいた地域の北側に竹藪があり、そこに狸の棲む穴があったとされます。
半田市は、知多半島の醸造の町です。
1974年の小栗久夫の著書『半田の伝説』が原資料とされ、それまで活字化はほぼなされていなかった民話とみられます。1978年の小島勝彦の編著『尾張の民話』にも収められています。
たぬき祭りが現在も行われているかは確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。
のた坊主の正体と考えられているもの
のた坊主については、次のように整理できます。
一つめは、酒を飲む狸です。人間に化けて、白と黒のだんだら模様のでんちを着て、毎年酒蔵に勝手に入ってきて元酒を飲んでしまうとされます。
二つめは、殺せない事情です。蔵で狸を殺すわけにはいかず、桶の箍をつくるために竹藪も刈り取れなかったという、酒屋の側の事情が語られます。
三つめは、幼い狸です。捕まったのた坊主は藪の穴に自分を必要とするまだ幼い狸が二匹いると訴え、男たちはその様子を哀れに思って許しました。
四つめは、たぬき祭りです。許された狸は商売が繁盛するように守ると約束し、主人は毎年たぬき祭りを催して元酒を狸の穴に贈ったといいます。
この話は、名の由来だけが後付けの疑いを持たれています。 「のたのたしている」という説明は原資料の『半田の伝説』になく、あいち妖怪保存会は疑問点があるとしています。
のた坊主をめぐる妖怪のつながり
のた坊主が登場する作品
のた坊主は、許された狸の話です。
盗んだ狸が、子のことを訴えて助けられ、恩返しに店を守る。 罰ではなく、取り引きで終わります。
資料は半田・尾張の民話集が中心です。
のた坊主が登場する研究
半田の伝説
小栗久夫、1974年。のた坊主の原資料とされる書です。
尾張の民話
小島勝彦編著、1978年。名の由来の説が見られます。
のた坊主が登場する漫画・アニメ
まんが日本昔ばなし
1990年3月3日放送。酒蔵の主人の母親が登場する形に脚色されています。
妖怪をまとめて扱う作品
酒を好む化け狸として、各地の名のある狸と並べて取り上げられます。
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のた坊主についてよくある質問
のた坊主は何をするのですか。
人間に化けて、白と黒のだんだら模様のでんちを着て、毎年酒蔵に勝手に入ってきて元酒を飲んでしまうといいます。
なぜ酒屋は狸を退治しなかったのですか。
蔵で狸を殺すわけにはいかず、桶の箍をつくるために竹藪を刈り取って穴を埋めるわけにもいかなかったためです。竹藪は道具の元でした。
どうやって許されたのですか。
酔って捕まったのた坊主が、藪の穴には自分を必要とするまだ幼い狸が二匹いること、今後は盗みもしないし一族にもさせないことを訴え、男たちはその様子を哀れに思って許しました。
名前の由来は何ですか。
「のた」は逃げる姿がのたのたしているという意味ともされます。ただし原資料の『半田の伝説』には言及がなく、あいち妖怪保存会は疑問点があるとしています。
のた坊主と併せて覚えたい言葉・用語
でんち(でんち)
袖のない羽織のような上着。
箍(たが)
桶を締める輪。竹で作る。
元酒(もとざけ)
酒造りの元になる酒。のた坊主の目当て。