山の妖怪は一声しか呼ばない。だから人は必ず二声続けて呼ぶ。
一声呼びとはどんな妖怪か
一声呼びは、岐阜県大野郡の山間部に伝わる民間信仰です。一声叫びともいいます。
山中の妖怪が人に呼びかける時には一声しか声をかけないといわれます。
一声だけです。
そこから、決まりが生まれました。
山中で働く人々は、お互いを呼ぶ際に一声のみで呼ぶことを禁じられ、必ず二声続けて呼ぶよう戒められています。
二回呼びます。
一声で呼べば、妖怪と間違われます。
山中での仕事の際、平地とは異なる山言葉という言葉遣いが用いられることがありますが、この一声呼びもその一つとされます。
一声呼びの漢字表記と読み方
読みは「ひとこえよび」です。「ひとこえさけび」ともいいます。
一声だけ呼ぶことを指します。
それが、妖怪のしるしです。
だから、人は二声呼びます。
「おーい、おーい」と重ねます。
山言葉は、山中での仕事の際に用いられる、平地とは異なる言葉遣いです。
山では、平地と同じ言い方をしません。
忌み言葉や言い換えが多く使われます。 一声呼びも、その決まりの一つです。
一声呼び(ひとこえよび)
もっとも一般的な表記。
一声叫び(ひとこえさけび)
同じものの別の言い方。
カヨーオヤシ(かよーおやし)
樺太アイヌでの呼び名。人呼びおばけの意。
一声呼びの姿と特徴
一声呼びには、姿がありません。
山中の妖怪が人に呼びかけるという、声だけの怪異です。
わかっているのは、次の一点です。
一声しか声をかけない。
それだけです。
だから、判別できます。
一声で呼ばれたら、人ではありません。
二声で呼ばれたら、人です。
この単純な決まりが、山での身を守る手立てになりました。
返事をするかどうかを、声の数で決めます。
一声呼びの伝承物語
必ず二声続けて呼ぶ
一声呼びの戒めは、人の側の作法です。
山中で働く人々は、お互いを呼ぶ際に一声のみで呼ぶことを禁じられ、必ず二声続けて呼ぶよう戒められています。
禁じられています。
理由は、はっきりしています。
山中の妖怪が人に呼びかける時には一声しか声をかけないからです。
一声は、妖怪の呼び方です。
だから、人が一声で呼ぶと危険です。
呼ばれた側が妖怪と思って返事をしないか、逆に妖怪と間違えられます。
山言葉の一つとされます。
山言葉は、山中での仕事の際に用いられる、平地とは異なる言葉遣いです。
山では、話し方まで変わります。
三度目に返事をする
同じ形の戒めは、他の地域にもあります。
樺太アイヌの場合です。
山狩りの際に「おーい」と呼ばれたとき、うっかり声に釣られて行くと命が危ないといいます。
「人呼びおばけ」の意味でカヨーオヤシといいます。
北海道のアイヌでは、名前がありません。
しかし、決まりがあります。
山中で何者かわからないものに呼ばれたときには、1度目と2度目は聞き流し、3度目に人間だとわかったら初めて返事をするよう伝えられています。
三度目です。
岐阜では声の数、アイヌでは回数で判じます。
どちらも、すぐに返事をしないという点で同じです。
もしもしと呼び合う
この戒めは、現代にも引かれています。
荒俣宏の組織した「日本妖怪巡礼団」では、団員同士の挨拶の際に一声のみでは妖怪に間違われるとし、重ね言葉で「もしもし」と呼び合う慣わしがあります。
「もしもし」です。
これは、もともと重ね言葉です。
「申す申す」が縮まった形とされます。
電話でも使います。
そして、この語には同じ由来の説があります。
一声では妖怪に間違われるため、二度繰り返したという説です。
日常の言葉に、山の戒めが残っています。
山言葉が、そのまま挨拶になった形です。
一声呼びの伝承地域
一声呼びは、岐阜県大野郡の山間部に伝わります。
山中で働く人々のあいだの決まりであり、特定の場所に結びついたものではありません。
同じ形の戒めは、他の地域にもあります。
樺太アイヌでは「人呼びおばけ」の意味でカヨーオヤシといい、
北海道のアイヌでは、山中で何者かわからないものに呼ばれたときには、1度目と2度目は聞き流し、3度目に人間だとわかったら初めて返事をするよう伝えられています。
山そのものが舞台であり、碑や祠は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
一声呼びの正体と考えられているもの
一声呼びについては、次のように整理できます。
一つめは、声の数です。山中の妖怪が人に呼びかける時には一声しか声をかけないといわれます。
二つめは、人の側の作法です。山中で働く人々は、お互いを呼ぶ際に一声のみで呼ぶことを禁じられ、必ず二声続けて呼ぶよう戒められています。
三つめは、山言葉です。山中での仕事の際、平地とは異なる山言葉という言葉遣いが用いられることがあり、一声呼びもその一つとされます。
四つめは、アイヌの戒めです。樺太アイヌでは「人呼びおばけ」の意味でカヨーオヤシといい、北海道のアイヌでは1度目と2度目は聞き流し、3度目に人間だとわかったら初めて返事をするよう伝えられています。
五つめは、現代の慣わしです。荒俣宏の「日本妖怪巡礼団」では、一声のみでは妖怪に間違われるとして重ね言葉で「もしもし」と呼び合う慣わしがあります。
この信仰は、姿を持ちません。 呼び方の決まりだけが伝えられてきました。
一声呼びをめぐる妖怪のつながり
一声呼びが登場する作品
一声呼びは、姿のない妖怪です。
語られているのは、呼び方の決まりだけです。 それでも、山で働く人の身を守ってきました。
資料は岐阜の民俗の記録と、アイヌの伝承に分かれます。
一声呼びが登場する研究
一声呼びが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
山で呼びかける怪異として、山彦や呼子と並べて取り上げられます。
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一声呼びについてよくある質問
一声呼びとは何ですか。
山中の妖怪が人に呼びかける時には一声しか声をかけないといわれる、岐阜県大野郡の山間部の民間信仰です。
人はどう呼ぶのですか。
一声のみで呼ぶことを禁じられ、必ず二声続けて呼ぶよう戒められています。 山中での仕事の際に用いられる山言葉の一つとされます。
アイヌにも同じ戒めがありますか。
あります。 樺太アイヌでは「人呼びおばけ」の意味でカヨーオヤシといい、北海道のアイヌでは1度目と2度目は聞き流し、3度目に人間だとわかったら初めて返事をするよう伝えられています。
現代にも残っていますか。
荒俣宏の組織した「日本妖怪巡礼団」では、団員同士の挨拶の際に一声のみでは妖怪に間違われるとし、重ね言葉で「もしもし」と呼び合う慣わしがあります。
一声呼びと併せて覚えたい言葉・用語
山言葉(やまことば)
山中での仕事の際に用いる、平地とは異なる言葉遣い。
カヨーオヤシ(かよーおやし)
樺太アイヌで「人呼びおばけ」の意。
日本妖怪巡礼団(にほんようかいじゅんれいだん)
荒俣宏の組織した団体。「もしもし」と呼び合う慣わしがある。