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全国に伝わるもの

天邪鬼(あまのじゃく)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

天邪鬼  / アマノジャク

人型の妖怪 各地の伝説和漢三才図会

わざと逆らう者を指す言葉。もとは山でこだまを返す山姥の口まねだった。

天邪鬼の姿を描いた図

十返舎一九 「天邪鬼」 江戸時代 / パブリックドメイン 出典

天邪鬼とはどんな妖怪か

天邪鬼はひとことで言えば山びこの正体です。

夕方、山に向かって大声で何かわめくと、あちらでも同じことを言い返してきます。ふつうはこだまと呼ぶ現象です。

ところが子どもたちは、これを山姥がからかっているのだと思っていました。

言うことにいちいち逆らってくる。 そこから、素直でない子のあだ名になりました。

この「あまん」は「おまん」と同じで、どちらも姥神さまのことです。

山にいる大きな女が、子どもの言葉を返してくる。 それが天邪鬼の始まりでした。

天邪鬼の漢字表記と読み方

読みは「あまのじゃく」です。柳田国男はあまんじゃくと書きました。

この「あまん」は、「おまん」と同じで、どちらも姥神さまのことです。

東京のような山から遠い土地でも、夕焼け小焼けのことを「おまんが紅」といいました。空が半分ほど真赤になるのを、山の大女が紅を溶かしているのだと言ってたわむれたのです。

天邪鬼(あまのじゃく)

広く使われる書き方。

あまんじゃく(あまんじゃく)

柳田国男が記した、素直でない子を指す言い方。

おまん(おまん)

姥神を指す言葉。「あまん」と同じ。

天邪鬼の姿と特徴

姿の描写は残っていません。

聞こえるのはだけです。こちらが言ったことを、そのまま言い返してきます。

姿の代わりに、口まねが残りました。

天邪鬼の伝承と変遷

  1. 夕方の山へ叫ぶと、言い返してくる
  2. 山姥のいたずらだと思われた
  3. 山姥は、少年の知り人だった
  4. 夕焼けは、大女が紅を溶かした色

夕方の山へ叫ぶと、言い返してくる

子どもが夕方、山の方を向いて大きな声で何かわめきます。

するとすぐにあちらでも口まねをします。

ふつうこれはこだまと呼ばれます。柳田国男は、そのこだまも山の神のことだと書きました。

もとはそれをだと想像していたのです。

因幡の山奥には、布晒し岩から立て岩動ぎ石まで、二里ばかりにわたって山姥が布を張って乾したという話があります。近くの谷にはいつも灰汁の色をした水がたまり、その水で布を晒したといいます。

広島の双三郡では、山の高いところに白いものが掛かってひらめいていることがあるといいました。これも山姥の布です。

山にかかる白いものが、そのまま話になりました。

こうした話を子どもまでが大笑いして聴くようになると、伝説はだんだん嘘らしくなっていきます。山の崩れたところを山姥が踏ん張った足跡といい、小便をしたあとだという話まで出てきました。

山姥のいたずらだと思われた

こだまの正体は、子どもたちにとって山姥でした。

山姥は少し意地悪だ。いつも子供のいやがる様な、にくらしい口答えをよくする

言うことに、いちいち逆らってくる。その口答えが「あまんじゃく」という言葉になりました。

そして素直でない子のあだ名として定着します。柳田国男は、この反響こそが始まりだと書いています。

山姥の話は、笑いながら聴かれるようになると形を変えました。山の崩れたところを山姥が踏ん張った足跡といい、土佐の韮生では岩の自然の溝を山姥が麦を作った畝の跡だといいます。

山姥は、少年の知り人だった

山姥は、恐ろしいだけの存在ではありませんでした。

春に子どもが紙鳶をあげるとき、「山の神さん風おくれ」という土地があります。「山んぼ風おくれ」という土地もあります。

呼びかける相手なのです。春の空へ向かって、風をくれと頼みます。

遠州の秋葉の山奥では、山姥が三人の子を生み、その三人がそれぞれ大きな山の主になっているといいます。恐ろしいだけの相手ではありません。

柳田国男はこう書いています。

今では山姥は少年の知り人のように、呼びかけられているのであります

からかい返してくる相手であり、風をくれる相手でもありました。

夕焼けは、大女が紅を溶かした色

「あまん」と「おまん」が同じ姥神だという証拠を、柳田国男は空に見つけます。

東京のような山から遠い土地でも、昔は夕焼け小焼けのことを「おまんが紅」といいました。

天が半分ほども真赤になるのを、どこかで山の大女が紅を溶かしているのだと言ってたわむれたのです。

山から離れた町でも、夕暮れの空には山の女がいました。

意地悪な口答えをする相手と、風をくれる相手と、夕焼けを染める大女。同じ一つの姥神が、三つの顔で子どもの生活に入っていました。

山を見ない日でも、空が赤くなれば名前を呼びます。

天邪鬼の伝承地域

柳田国男が挙げた山姥の伝説は、広島県双三郡(芸藩通志)、鳥取県岩美郡(因幡志)、高知県香美郡(南路志)などにあります。「おまんが紅」は東京のような山から遠い土地でも使われました。

天邪鬼の正体と考えられているもの

天邪鬼は、言葉が返ってくることそのものです。

山へ叫べば言い返される。その口答えを意地悪と受け取り、山姥のしわざとし、やがて素直でない子のあだ名になりました。

恐れる相手ではなく、からかい合う相手として残った怪です。

天邪鬼をめぐる妖怪のつながり

天邪鬼が登場する作品

天邪鬼は、昔話と古典の両方に足をかけています

昔話では、瓜子姫に化けて入れ替わる悪者として現れます。 一方、名の由来は『古事記』『日本書紀』の天探女にさかのぼるという説があります。

人の心を探り、逆らう。 寺の仁王像や四天王像が踏みつけている小鬼も天邪鬼と呼ばれ、踏まれる側として造形が残りました。

天邪鬼が登場する古典

古事記

天探女(あまのさぐめ)が登場します。天邪鬼の名は、この人の心を探る神から来たとする説があります。

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日本書紀

天稚彦の使いとして天探女が現れます。名の由来をたどるときの手がかりになります。

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天邪鬼についてよくある質問

天邪鬼とは何ですか。

わざと人に逆らう者を指す言葉です。柳田国男は、山でこだまが言い返してくるのを山姥の口答えと受け取ったのが始まりだとしています。

なぜ素直でない子を天邪鬼と呼ぶのですか。

山姥が子どもの嫌がる憎らしい口答えをするとされ、その反響が「あまんじゃく」という言葉になったためだと柳田国男は書いています。

「おまんが紅」とは何ですか。

東京などで夕焼け小焼けを指した言い方です。空が真赤になるのを、山の大女が紅を溶かしているのだと言ってたわむれました。「おまん」は「あまん」と同じ姥神を指します。

天邪鬼と併せて覚えたい言葉・用語

こだま(こだま)

山などで声が反響すること。柳田国男は、これも山の神のことだと書いた。

姥神(うばがみ)

老女の姿の神。「あまん」「おまん」はどちらもこれを指す。

おまんが紅(おまんがべに)

夕焼けの古い言い方。山の大女が紅を溶かしているとした。

天邪鬼の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 青空文庫 柳田国男『日本の伝説』(一九二九年)