長崎県福江島の化け物。親の言葉を真に受け、育った子を取り立てに来る。
ゲドガキのバケモンとはどんな妖怪か
ゲドガキのバケモンは、長崎県福江島に伝わる妖怪です。
南松浦郡岐宿町二本楠(現・五島市)と玉之浦町字荒川(現・同)との間にあるゲドガキという土地に住んでいたとされます。
「バケモン」は「化け物」の意味です。
話は、子供の夜泣きから始まります。
昔、玉之浦中須にいた丑松という子供がある晩に大泣きしたので、父親が「そんなに泣くとゲドガキのバケモンに食わすぞ」と叱りつけました。
すると、返事がありました。
家の外から「そんなら俺に食わせろ」と大声が返ったのです。
驚いた父は、その場しのぎの言葉を口にします。
「これが一人前になったら食わすで」
ゲドガキのバケモンの漢字表記と読み方
読みは「げどがきのばけもん」です。
ゲドガキは土地の名です。 南松浦郡岐宿町二本楠と玉之浦町字荒川との間にあります。
いまはどちらも五島市です。
「バケモン」は「化け物」の島言葉です。
名も姿も伝わっておらず、住む場所だけで呼ばれています。
これは、この妖怪の性質をよく表しています。
姿ではなく、そこを通ると出るということだけが伝えられました。
峠道の危険が、そのまま名前になっています。
ゲドガキのバケモン(げどがきのばけもん)
もっとも一般的な表記。
ゲドガキの化け物(げどがきのばけもの)
字を当てた形。
ゲドガキのバケモンの姿と特徴
ゲドガキのバケモンには、姿の記述がありません。
わかっているのは、次のことだけです。
ゲドガキという土地に住んでいる。
外から大声で話しかけてくる。
約束を覚えていて、取り立てに来る。
人を捕らえて食べる。
声と、力です。
丑松と組み合ったことから、体はあるとわかります。
丑松を捕らえようと背の荷物に手をかけたという記述があり、手があることがわかります。
それ以上は、語られていません。
ゲドガキのバケモンの伝承物語
一度は逃げきる
父の言葉から、年月が経ちます。
やがて一人前の若者に育った丑松が、ある日、用事で荷物を背負って帰宅する途中にゲドガキを通りました。
バケモンが現れます。
「汝の父から汝は貰ったぞ」と襲いかかってきました。
丑松も腕に覚えがありました。
大格闘となります。
ところが、バケモンが丑松を捕らえようと背の荷物に手をかけたところ、背負い紐が切れたので、丑松は逃げることができました。
紐が切れて助かりました。
弱い紐だったことが、命を救いました。
これが一度目です。
丈夫な紐が仇になる
丑松は、同じ道をまた通ります。
後日、丑松が同じように酒樽を背負ってゲドガキを通ったところ、バケモンが再び襲ってきました。
このときは、条件が違いました。
背負い紐が切れにくい丈夫な紐であったことが災いします。
紐が切れません。
そのうえ、こうなりました。
バケモンが引っ張った酒樽から酒がこぼれ、滑って転んだ丑松は、バケモンに捕まって食べられてしまいました。
丈夫な紐と、こぼれた酒です。
そして、家に声が届きます。
丑松の家にいる父のもとには「お前の子を貰ったぞ!」とバケモンの声が響いたといいます。
言ってしまった言葉
この話の中心は、父の一言にあります。
「そんなに泣くとゲドガキのバケモンに食わすぞ」
子供を黙らせるための、よくある脅し文句です。
ところが、返事がありました。
「そんなら俺に食わせろ」
そして、父は逃げ道を作ったつもりで約束してしまいます。
「これが一人前になったら食わすで」
先延ばしにしただけです。
十数年後、バケモンはその言葉を覚えていました。
この筋は、子を脅す親への戒めとして読めます。
言ってはいけないことを言うと、聞いている者がいる。 それが、この島の話の教えです。
ゲドガキのバケモンの伝承地域
ゲドガキのバケモンは、長崎県福江島に伝わります。
ゲドガキは、南松浦郡岐宿町二本楠(現・五島市)と玉之浦町字荒川(現・同)との間にある土地の名です。
丑松の住んでいたのは玉之浦中須とされます。
いずれも五島市内にあたりますが、ゲドガキという地名の現在の正確な位置は確かめられていません。
確かめられていない場所を、伝承地として挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。
ゲドガキのバケモンの正体と考えられているもの
ゲドガキのバケモンについては、次のように整理できます。
一つめは、土地の名で呼ばれるものです。姿も名も伝わっておらず、ゲドガキという土地に住んでいたということだけが語られます。
二つめは、約束を取り立てるものです。父が「これが一人前になったら食わすで」と言い逃れをし、十数年後にその言葉を覚えていて取り立てに来ました。
三つめは、紐です。一度目は背負い紐が切れたので逃げられ、二度目は切れにくい丈夫な紐であったことが災いして捕まりました。
四つめは、親への戒めです。「そんなに泣くと化け物に食わすぞ」という脅し文句は、どこの家にもありました。 その言葉を、外で聞いている者がいたという話です。
この妖怪が何であったかは、わかっていません。 ただ、言ってしまった言葉は取り消せないという一点が、この話の芯にあります。
ゲドガキのバケモンをめぐる妖怪のつながり
ゲドガキのバケモンが登場する作品
ゲドガキのバケモンは、姿の伝わらない妖怪です。
土地の名と、声と、約束だけが残りました。 そのぶん、話の筋がはっきりしています。
資料は五島の民俗の記録が中心です。
ゲドガキのバケモンが登場する研究
ゲドガキのバケモンが登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
子供を脅す言葉から現れる化け物として取り上げられます。
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ゲドガキのバケモンについてよくある質問
名前の意味は何ですか。
ゲドガキは土地の名、「バケモン」は「化け物」の意味です。南松浦郡岐宿町二本楠と玉之浦町字荒川との間にある土地に住んでいたとされます。
どんな話ですか。
父親が泣く子を「そんなに泣くとゲドガキのバケモンに食わすぞ」と叱ると、外から「そんなら俺に食わせろ」と声が返り、父は「これが一人前になったら食わすで」と言い逃れをしました。 やがて育った丑松は、ゲドガキで食べられます。
なぜ一度目は逃げられたのですか。
バケモンが背の荷物に手をかけたところ、背負い紐が切れたためです。二度目は切れにくい丈夫な紐であったことが災いしました。
最後はどうなりますか。
バケモンが引っ張った酒樽から酒がこぼれ、滑って転んだ丑松は、バケモンに捕まって食べられてしまいます。 父のもとには「お前の子を貰ったぞ!」と声が響いたといいます。
ゲドガキのバケモンと併せて覚えたい言葉・用語
福江島(ふくえじま)
長崎県五島列島の島。現在の五島市。
バケモン(ばけもん)
化け物の意の島言葉。
背負い紐(せおいひも)
荷物を背に負うための紐。この話の分かれ目になる。