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全国に伝わるもの

網切(あみきり)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

網切  / アミキリ

そのほか 鳥山石燕の絵

鳥山石燕が、鋏のような頭と節のある細長い身体で描いた、説明文を持たない妖怪。

網切の姿を描いた図

鳥山石燕 「画図百鬼夜行 網切」 1776年 / パブリックドメイン 出典

網切とはどんな妖怪か

網切は、石燕が『画図百鬼夜行』に描いた妖怪です。大きな鋏のような頭、甲殻に見える節、曲がった尾を持ち、紙面の上から下へ泳ぐように身体をくねらせています。

絵に添えられた物語はなく、「網切」という名だけが行動を想像させます。現在は網や蚊帳を切る妖怪として知られますが、石燕の画面には切られた網も人もありません。名と姿から物語が育った妖怪です。

網切の漢字表記と読み方

「あみきり」と読みます。「網剪」「網切り」と書かれることもあります。

網切(あみきり)

『画図百鬼夜行』に記された名。

網剪(あみきり)

「剪」に切る意味を持たせた異表記。

網切り(あみきり)

送り仮名を加えた現代的な表記。

網切の姿と特徴

頭には左右へ開く鋏のような突起があり、その後ろへ丸い節が連なります。胴は細長く、尾の先まで大きく曲がっています。脚や翼ははっきりせず、カニ、エビ、サソリ、昆虫の特徴を一つに組み合わせたような姿です。

網切の伝承記録

  1. 紙面を泳ぐように身体を曲げる
  2. 大きな鋏と節のある身体を持つ
  3. 「網切」の二文字が物語を作る
  4. 切られる網や蚊帳は後から加わった
  5. 髪切りとは切る対象が異なる

紙面を泳ぐように身体を曲げる

『画図百鬼夜行』の網切は、地面に立っていません。長い身体を大きく折り曲げ、紙面の上から下へ滑り込むように描かれています。

背景には海も家もなく、網切がどこにいるのかは分かりません。周囲の景色を消したことで、鋏の形と節の連なりだけが強く目に入ります。人を襲う瞬間ではなく、正体のつかめない形そのものを見せる一枚です。

大きな鋏と節のある身体を持つ

顔に当たる部分は、左右へ開く二枚の刃のようです。その後ろには硬い殻を思わせる節が続き、細い胴の先は針のない尾へつながります。

複数の生き物の特徴を重ねた姿です。カニの鋏、エビの腹節、サソリの曲がる尾を思わせる特徴を重ねることで、見覚えがあるのに名前を付けにくい身体になっています。網を断ち切りそうな鋭さは、まずこの頭部から伝わります。

「網切」の二文字が物語を作る

石燕は網切の絵に長い詞書を添えていません。残された言葉は「網切」という名前です。見る者はその二文字から、鋏のような頭で網を切る場面を自然に思い浮かべます。

名前と姿が互いを説明するため、物語が書かれていなくても妖怪の働きが伝わります。網切は誰かと戦った主人公ではなく、一枚の絵を見た人の想像によって動き始める妖怪です。

切られる網や蚊帳は後から加わった

後の妖怪図鑑では、漁師が干した網、家に掛けた蚊帳、簾などを切る妖怪として説明されるようになりました。どれも「網切」という名と鋏の姿にはよく合います。

しかし、石燕の原図に網や蚊帳は描かれません。被害を受けた人物も、切られた場所も示されていません。原図がはっきり伝えるのは、名前と外見までです。網を切る行動は、空白の多い一枚に後の語り手が与えた物語として広まりました。

髪切りとは切る対象が異なる

網切と名前が近い妖怪に、髪切りがあります。髪切りは、人の結った髪が知らない間に切られる怪異です。網切は石燕の妖怪画に名と姿があり、人の髪を切った話は持ちません。

二つを結ぶのは「切る」という動作と、鋭い道具を思わせる印象です。網切は網、髪切りは髪と、名前が示す対象は明確に異なります。似た名を並べると、石燕が一枚の姿と二文字の名だけで網切を成立させた巧みさが見えてきます。

網切の伝承地域

『画図百鬼夜行』には網切の出現地が書かれていません。後世に語られた土地を原図の伝承地へ置き換えず、推測の地図は置きません。

網切の正体と考えられているもの

網切は、鋏を思わせる頭と節のある身体へ「網切」という名を与えた、鳥山石燕の妖怪画です。原図に長い話がないため、名を読んだ人が網や蚊帳を切る姿を想像し、その行動が後の説明として育ちました。伝承の少なさそのものが、一枚の絵から妖怪が広がる過程をよく見せています。

網切をめぐる妖怪のつながり

網切が登場する作品

網切の作品は、石燕の一枚と、そこへ後から加えられた説明です。

石燕が残したのは、名と姿だけでした。 網や蚊帳を切る妖怪という説明は、後の妖怪図鑑が名前と鋏の形から組み立てたものです。

名前と姿が互いを説明するため、物語が無くても働きが伝わります。 髪切りとは、切る対象が名ではっきり分かれています。

網切が登場する妖怪画

画図百鬼夜行

鳥山石燕の妖怪画集。鋏のような頭と節のある身体を持つ姿を、背景なしで描いています。

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網切についてよくある質問

網切とはどんな妖怪ですか。

鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれた、鋏のような頭と節のある細長い身体を持つ妖怪です。地面に立たず、紙面を泳ぐように長い尾を曲げています。

網切は何と読みますか。

「あみきり」と読みます。「網剪」「網切り」と書かれることもあります。名前の「網」と鋏のような姿が、網を切る行動を想像させます。

網切は本当に網を切りますか。

後の図鑑では網や蚊帳を切ると説明されますが、石燕の原図に切られた網や被害者は描かれず、行動を説明する長い詞書もありません。

網切と髪切りは同じ妖怪ですか。

別のものです。髪切りは人の結い髪が知らない間に切られる怪異です。網切は石燕が鋏に似た姿と名を描いた妖怪で、髪を切る話は持ちません。

網切と併せて覚えたい言葉・用語

画図百鬼夜行(がずひゃっきやぎょう)

鳥山石燕が妖怪を一体ずつ名と絵で示した江戸時代の妖怪画集。

詞書(ことばがき)

絵に添えて、場面や由来を説明する文章。網切の図には長い詞書がない。

髪切り(かみきり)

人の結い髪が知らない間に切られる怪異。網切とは切られる対象が異なる。

網切の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. ジャパンサーチ「画図百鬼夜行 前編」
  2. 国立国会図書館サーチ『百鬼夜行』
  3. 国立国会図書館サーチ「鳥山石燕の妖怪変化図録『画図百鬼夜行』」