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新潟県

蟷螂坂(かまきりざか)とはどんな妖怪か|姿と伝承

蟷螂坂  / カマキリザカ

そのほか 各地の伝説

旧片貝町の坂で転ぶと鎌のような傷を負うという、大雪で死んだ大蟷螂に由来する場所の怪異。

蟷螂坂の姿を描いた図

佐藤莞嬴 「小千谷大橋(新潟県小千谷市)」 2017年 / CC BY-SA 出典

蟷螂坂とはどんな妖怪か

蟷螂坂は、転ぶと鎌の傷を負う坂です。新潟県の旧片貝町に伝わります。その坂で転ぶと、鎌で切ったような傷ができ、黒い血が流れて苦しむとされます。地名そのものを妖怪の体とするより、場所と出来事が一組になった怪異として読むのが正確です。

蟷螂坂の漢字表記と読み方

読みは「かまきりざか」です。「蟷螂坂」と「鎌切坂」の二表記が紹介されています。

「蟷螂」は昆虫のカマキリ、「鎌切」は鎌で切る動作を思わせる字です。伝承では、大きな蟷螂の死と、鎌で切られたような傷の両方が語られるため、二つの表記が物語の別の部分を表しています。

蟷螂坂(かまきりざか)

蟷螂を「かまきり」と読む漢字表記。

鎌切坂(かまきりざか)

鎌で切られたような傷という筋に対応する別表記。

蟷螂坂の姿と特徴

蟷螂坂で恐れられたものは、坂に立つ怪物の姿ではなく、そこで転んだ人の身体に残る不自然な傷です。傷は鎌で切られたようで、黒い血が流れ、ひどく苦しむとされます。

物語の過去には巨大な蟷螂が登場します。雪国の大雪に押しつぶされて死に、その後、坂で転ぶ人に切り傷が生じるようになったという筋です。蟷螂の色、大きさ、誰が最初に見たかは確認できません。

語られてきたのは、昔の坂での出来事です。大蟷螂の死後に残った災いが、転倒と傷として現れる場所の怪異です。

蟷螂坂の伝承物語

  1. 片貝町の坂で転んだ者を襲う傷
  2. 大雪に押しつぶされた大蟷螂
  3. 鎌鼬は風、蟷螂坂は場所

片貝町の坂で転んだ者を襲う傷

舞台は、新潟県の旧三島郡片貝町にあったとされる坂です。そこを通る者が足を滑らせて転びます。すると、ただ擦りむくのではなく、鎌で切られたような傷ができました。

傷口からは黒い血が流れ、転んだ者はひどく苦しんだといいます。目の前に刃物を持った者はいません。転倒という日常の事故と、原因の見えない切り傷が重なることで、坂そのものが恐れられる場所になりました。

物語の中心は「坂を通る」「転ぶ」「鎌のような傷を負う」「黒い血を流して苦しむ」という順序です。傷の数、治るまでの日数、命を落とした者がいたかは伝わっていません。

大雪に押しつぶされた大蟷螂

なぜ坂で鎌の傷を負うのか。その由来として、かつてこの場所に巨大な蟷螂がいたという話が続きます。

大蟷螂を倒したのは、鶏でした。雪国の大雪に押しつぶされ、そのまま死んだとされます。そして大蟷螂が死んだ後から、坂で転んだ者に鎌で切られたような傷が現れるようになりました。

カマキリの前脚は鎌の形をしています。物語は、大蟷螂の鎌と人の切り傷を結び、過去の死がその場所へ災いを残したと説明します。坂の名、昆虫の形、雪、転倒、傷が一つにつながる由来譚です。

鎌鼬は風、蟷螂坂は場所

蟷螂坂と鎌鼬は、気付かないうちに鋭い切り傷を負う点で似ています。どちらも、目の前に人間の加害者や刃物が見えない怪異です。

蟷螂坂は、旧片貝町の特定の坂で転ぶこと、大雪で死んだ大蟷螂が由来になっていること、黒い血を流して苦しむことが筋の中心です。鎌鼬は風の中で傷を負う伝承として広く語られ、特定の坂や大蟷螂の死を必要としません。

共通するのは鎌で切られたような傷です。蟷螂坂は「場所と由来を持つ怪異」、鎌鼬は「風と切り傷を結ぶ怪異」という違いがあります。

蟷螂坂の伝承地域

伝承地は旧三島郡片貝町、現在の新潟県小千谷市片貝町にあたる地域です。

確認できる資料は坂の現住所、現在名、道筋を示していません。地図は片貝町という伝承地域を示します。

旧片貝町(きゅうかたかいまち)

蟷螂坂の伝承地域

地図で開く

旧片貝町の所在地:新潟県小千谷市片貝町

旧三島郡片貝町に伝わると記録されます。坂の現位置は推測しません。

示しているのは伝承の残る地域です。

蟷螂坂の正体と考えられているもの

蟷螂坂の正体は、特定の生物や現象として確定していません。坂道の転倒、雪、凍結、石や草による裂傷は現実の危険として考えられますが、黒い血や大蟷螂の由来までを説明する資料はありません。

伝承が残したのは、傷と、その理由を語る言葉です。そこに大雪で死んだ大蟷螂の過去を置くことで、なぜ鎌のような傷が生じるのか、なぜ坂が恐れられるのかを物語にしています。

蟷螂坂は、雪国の坂で起こる転倒と切り傷を、大蟷螂の死後に残った災いとして語る場所の怪異です。

蟷螂坂をめぐる妖怪のつながり

蟷螂坂が記録された資料

『日本怪談集 妖怪篇』は1981年に社会思想社から刊行された今野円輔編著の伝承集です。蟷螂坂は、旧片貝町の坂での転倒、大蟷螂の死、鎌のような傷を結ぶ話として紹介されています。

蟷螂坂が記録された伝承資料

日本怪談集 妖怪篇

今野円輔が編著した妖怪伝承集。旧片貝町の蟷螂坂の筋を確認する資料。

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蟷螂坂についてよくある質問

蟷螂坂とはどんな妖怪ですか。

新潟県の旧片貝町に伝わる坂の怪異です。坂で転ぶと鎌で切られたような傷ができ、黒い血を流して苦しむとされ、その由来は大雪で死んだ大蟷螂に結び付けられます。

蟷螂坂は何と読みますか。

「かまきりざか」と読みます。「蟷螂坂」は昆虫のカマキリ、「鎌切坂」は鎌で切るような傷を思わせる表記で、どちらも物語の内容に対応しています。

蟷螂坂はどの資料にありますか。

今野円輔編著『日本怪談集 妖怪篇』に紹介されています。同書は1981年に社会思想社から刊行され、国立国会図書館サーチで書誌情報を確認できます。

蟷螂坂の正体は分かっていますか。

確定していません。伝承は坂での転倒と鎌のような切り傷を、大雪で死んだ大蟷螂の災いとして説明しますが、傷が生じる現実の原因までは記録していません。

蟷螂坂と併せて覚えたい言葉・用語

蟷螂坂(かまきりざか)

新潟県の坂で転ぶと鎌で切られたような傷を負うという、巨大な蟷螂の死に結びつく怪異。

片貝町(かたかいまち)

蟷螂坂が伝わる旧三島郡の町。現在は新潟県小千谷市の一部。

鎌鼬(かまいたち)

風の中で鎌に切られたような傷を負う怪異。蟷螂坂とは傷が似る一方、場所と由来が異なる。

蟷螂坂の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館サーチ『日本怪談集 妖怪篇』