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長崎県

塗坊(ぬりぼう)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

塗坊  / ヌリボウ

そのほか山の妖怪 各地の伝説

壱岐島の夜道で、路側の山から突き出すと1938年の記録に残る、姿の定まらない道の怪異。

塗坊の姿を描いた図

Asanagi 「猿岩(長崎県壱岐市)」 2007年 / CC0 出典

塗坊とはどんな妖怪か

塗坊は、壱岐島の夜道に現れる怪異です。

読みは「ぬりぼう」。路側の山から何かが突き出します。国際日本文化研究センターのカードは、柳田國男「妖怪名彙(四)」に載る1938年の記録を伝えています。

その記録は、ヌリボウを塗壁に似たものとし、現れる場所が決まっていて、いろいろな言い伝えがあったと要約します。ただし、形、大きさ、色、顔、手足は記していません。人を襲う、追いかける、話しかけるといった筋も確認できません。

塗坊は、姿を持つ一体の怪物というより、壱岐島の特定の夜道で起こる「山側から突き出す」出来事として残った怪異です。

塗坊の漢字表記と読み方

読みは「ぬりぼう」です。公的データベースの呼称欄は片仮名の「ヌリボウ」で、漢字欄にも同じ表記を載せています。

「塗り棒」「ヌリ棒」という書き方は中心記録の表記ではありません。また、記録には名称の語源説明がないため、「棒の姿だからヌリボウと呼ばれた」とは断定できません。

ヌリボウ(ぬりぼう)

1938年の「妖怪名彙(四)」を整理した日文研カードの表記。

塗坊(ぬりぼう)

読みを漢字で表した一般的な表記。

塗坊の姿と特徴

塗坊の姿は、中心記録に詳しく書かれていません。分かるのは、夜、道の脇にある山から何かが突き出すことです。

棒、腕、壁、岩、木の枝のどれに見えたのか、道を完全に塞いだのか、触れられたのかも分かりません。塗壁に似たものと整理されていますが、壁のような四角い体や目鼻を持つという記述はありません。

塗坊を描くときに手掛かりとなるのは、壱岐島、夜道、路側の山、突き出す動きです。一定の身体像よりも、山際から突然進路へ現れる動きが、この怪異の輪郭を作っています。

塗坊の伝承記録

  1. 1938年「妖怪名彙(四)」に残る短い記録
  2. 「出る場所が決まっている」壱岐島の道の怪異
  3. 塗坊と塗壁に共通する点・異なる点

1938年「妖怪名彙(四)」に残る短い記録

日文研のカードは、柳田國男「妖怪名彙(四)」を典拠とします。掲載誌は『民間伝承』4巻1号・通巻37号、発行日は1938年9月20日です。引用文献として『続方言集』が記されています。

記録の舞台は長崎県の壱岐島です。夜になると、路側の山からヌリボウが突き出す。出る場所は決まっており、さまざまな言い伝えがある。カードに残る筋はここまでです。

誰が遭遇したのか、突き出したあと何が起きたのか、どうやって通り抜けたのかは記されません。一夜の長い昔話ではなく、土地で共有されていた出現場所と現れ方を記録した伝承です。

「出る場所が決まっている」壱岐島の道の怪異

ヌリボウは壱岐島のどこにでも現れるものではなく、記録では出る場所が決まっているとされます。特定の道と怪異が結び付いていた点は、塗坊を理解する重要な特徴です。

一方、カードには山名、集落名、坂名、道の方角がありません。現在の道路から「ここが塗坊の場所だ」と特定できる情報は残されていません。

場所の名が失われても、夜の山道の山側から突然何かが出るという場面は残りました。塗坊は、壱岐島の地形と夜道の不安が一組になった怪異として伝えられています。

塗坊と塗壁に共通する点・異なる点

1938年の記録は、ヌリボウを塗壁に似たものとします。共通するのは、夜道で進行を妨げるように現れる点です。

しかし、塗坊は路側の山から「突き出す」とされる一方、中心記録には道の正面へ壁が現れるとは書かれていません。どこまでも回り込めない、押しても動かない、消えるための言葉があるといった塗壁の説明もありません。

塗壁との近さは記録にある分類ですが、塗坊固有の特徴は、壱岐島の決まった場所で山側から突き出すことです。同じ妖怪の別名とまでは確認できません。

塗坊の伝承地域

伝承地域は長崎県の壱岐島です。日文研カードの地域欄は現在の壱岐市を示します。

記録には「出る場所も決まっている」とありますが、その地点名はカードにありません。地図は壱岐島という伝承範囲を示すもので、特定の道路、山、民家が塗坊の出現地点であることを示すものではありません。

壱岐島(いきのしま)

塗坊の伝承地域

地図で開く

壱岐島の所在地:長崎県壱岐市

日文研カードは伝承地域を長崎県壱岐市としています。

山名・坂名・道路名までは記録されていません。

塗坊の正体と考えられているもの

塗坊の正体は確定していません。中心記録には姿も原因もなく、枝、岩、倒木などの自然物だったと判断できる記述もありません。

確かなのは、壱岐島の夜道、路側の山、決まった出現場所、そこから何かが突き出すという四点です。塗壁に似るという整理も、同じ記録の中に残っています。

塗坊とは、壱岐島の夜道で山側から突き出すものに与えられた名であり、見える身体よりも場所と動作によって記憶された怪異です。

塗坊をめぐる妖怪のつながり

塗坊が記録された資料

「妖怪名彙(四)」のヌリボウは、『続方言集』を引用文献として、壱岐島での呼称、夜の出現、路側の山から突き出す動き、出る場所が決まっていたことを短く伝えています。

塗坊が記録された民俗資料

妖怪名彙(四)

柳田國男が1938年の『民間伝承』4巻1号へ掲載した、ヌリボウの中心記録。

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塗坊についてよくある質問

塗坊とはどんな妖怪ですか。

長崎県の壱岐島で、夜、路側の山から突き出すと記録された道の怪異です。出る場所は決まっていたとされますが、姿、大きさ、遭遇後の結末は詳しく残されていません。

塗坊は何と読みますか。

「ぬりぼう」と読みます。1938年の記録を整理した日文研カードでは、呼称欄と漢字欄の両方に片仮名で「ヌリボウ」と表記されています。

塗坊は塗壁と同じ妖怪ですか。

中心記録は塗壁に似たものとしますが、同じ妖怪の別名とは断定できません。塗坊は壱岐島の決まった場所で、路側の山から突き出す点が特徴です。

塗坊が出る場所はどこですか。

壱岐島と記録されています。出る場所は決まっていたとされますが、山名、坂名、道路名までは残っていないため、現在の特定地点へ絞ることはできません。

塗坊と併せて覚えたい言葉・用語

塗坊(ぬりぼう)

壱岐島の夜道で、路側の山から突き出すと記録された怪異。

妖怪名彙(四)(ようかいめいい よん)

柳田國男が各地の妖怪名と短い伝承をまとめ、1938年の『民間伝承』へ掲載した記録。

路側(ろそく)

道路の端や脇。ヌリボウは夜、路側の山から突き出すと記録されています。

塗坊の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「ヌリボウ」