関東から中部に伝わる怪火。触れると高熱を出すという。
天狗火とはどんな妖怪か
天狗火の漢字表記と読み方
読みは「てんぐび」です。
天狗の火。 怪火のうち、天狗の仕業とされるものです。
日本の怪火には、それぞれ主がついています。
同じ光でも、誰の仕業とするかで名が変わります。
山口県では「テンビ」といい、火柱状の怪火とされます。
「天火」と書くこともあります。
そして、静岡県では「天狗の火」といいます。
川原で提灯を持って歩いていると、天狗が提灯の火を取ってしまうといいます。
天狗火(てんぐび)
もっとも一般的な表記。
天狗の火(てんぐのひ)
静岡県・岐阜県での言い方。
テンビ(てんび)
山口県での呼び名。
天狗礫(てんぐつぶて)
火ではなく石が飛ぶ怪異。天狗の仕業とされる点が共通する。
天狗火の姿と特徴
天狗火の現れ方は、土地によって違います。
愛知県 … 遭った者は高熱を出して寝込む。知多郡では大火の前兆。
神奈川県・山梨県の山間部 … 川天狗によるもの。
静岡県 … 川原で提灯の火を取られる。
岐阜県揖斐郡 … 山中に赤い火が点々と連なって現れる。
山口県 … 火柱状の怪火。テンビという。
点々と連なるものと、火柱状のものがあります。
岐阜の赤い火が点々と連なるという姿は、山の稜線に沿って見えたのでしょう。
そして、静岡では火を奪われます。
明かりが消えれば、夜道は歩けません。
天狗火の伝承物語
遭うと熱が出る
天狗火の害は、病です。
愛知県では、天狗火に遭った者は高熱を出して寝込むといわれました。
見ただけで、熱が出ます。
そして、火事の前触れでもありました。
知多郡では、天狗火は大火の前兆とされました。
怪火が出れば、火事が来ます。
この二つは、繋がっています。
火の見えた夜に、実際に火事が起これば、あれは前兆だったということになります。
そして、熱を出した者がいれば、天狗火のせいになります。
怪火は、後から意味を与えられます。
山で光が見えることは、実際にあります。 火の玉、球電、ガスの発光。
説明のつかない光に、名前がつきました。
提灯の火を取る
静岡県の「天狗の火」は、具体的な害があります。
川原で提灯を持って歩いていると、天狗が提灯の火を取ってしまうといいます。
明かりを取られます。
夜の川原で、明かりを失えば動けません。
そして、増えることもあります。
提灯の火がいくつにも分かれて見えるという怪異は、各地にあります。
岐阜県揖斐郡では、山に連なって見えました。
山中に赤い火が点々と連なって現れるといい、これを天狗の火と呼びました。
列になって、山を移動します。
天狗の行列とも、松明の列とも見えます。
山の稜線に沿って点々と光れば、そう見えるでしょう。
誰の火とするか
日本の怪火は、主の名で分かれます。
狐なら狐火。人の霊なら人魂。天狗なら天狗火。
光は同じでも、名が違います。
そして、天狗火の主も一定ではありません。
神奈川県や山梨県の山間部では、天狗火は川天狗によるものといわれます。
川天狗は、天狗の中でも水辺に好んで住み着くものです。
山の天狗ではなく、川の天狗です。
神奈川県津久井郡内郷村では、夜に人が川で漁をしていると、大きな火の玉が突然転がって来るといい、これが川天狗の仕業とされました。
そして、対処法があります。
河原の石の上を洗い清め、獲れた魚を供えると、この怪異は失せたといいます。
天狗火の伝承地域
天狗火は、関東地方から中部地方にかけて伝わります。
愛知県 … 遭った者は高熱を出して寝込むといい、知多郡では大火の前兆とされました。
神奈川県・山梨県の山間部 … 川天狗によるものといわれます。
静岡県 … 川原で提灯の火を取られるといいます。
岐阜県揖斐郡 … 山中に赤い火が点々と連なって現れ、天狗の火と呼ばれました。
山口県 … テンビといい、火柱状の怪火とされます。
いずれも山や川原そのものが舞台であり、天狗火を祀った碑や祠は確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。
天狗火の正体と考えられているもの
天狗火については、次のように整理できます。
一つめは、天狗の仕業です。関東地方から中部地方にかけて伝わる怪火で、天狗の仕業とされます。
二つめは、川天狗です。神奈川県や山梨県の山間部では、この天狗火は川天狗によるものといわれます。 山の天狗ではなく、水辺に住む天狗です。
三つめは、火事の前兆です。愛知県知多郡では、天狗火は大火の前兆とされました。 そして、遭った者は高熱を出して寝込むといわれます。
四つめは、山の光です。岐阜県揖斐郡では、山中に赤い火が点々と連なって現れるといいます。 山の稜線に沿った光であれば、そう見えたでしょう。
天狗火が何であったかは、わかっていません。 ただ、怪火の名は、誰の仕業とするかで決まるという点は、狐火や人魂と同じです。
天狗火をめぐる妖怪のつながり
天狗火が登場する作品
天狗火は、広い範囲に伝わる怪火です。
関東から中部、そして山口まで。土地ごとに、害も姿も違います。
資料は各地の民俗の記録が中心です。
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天狗火についてよくある質問
天狗火に遭うとどうなりますか。
愛知県では、天狗火に遭った者は高熱を出して寝込むといわれました。知多郡では、天狗火は大火の前兆とされました。
川天狗とはどういう関係ですか。
神奈川県や山梨県の山間部では、この天狗火は川天狗によるものといわれます。 川天狗は天狗の中でも水辺に好んで住み着くものです。
静岡ではどう伝わりますか。
「天狗の火」といいます。川原で提灯を持って歩いていると、天狗が提灯の火を取ってしまうといいます。
狐火とはどう違いますか。
主が違います。 狐の仕業とされるのが狐火、天狗の仕業とされるのが天狗火です。光そのものは似ていても、誰の仕業とするかで名が変わります。
天狗火と併せて覚えたい言葉・用語
怪火(かいか)
説明のつかない火。狐火、人魂、天狗火など。
テンビ(てんび)
山口県での天狗火の呼び名。火柱状とされる。
知多郡(ちたぐん)
愛知県の郡。天狗火を大火の前兆とした。