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石川県

火取り魔(ひとりま)とはどんな妖怪か|姿と伝承

火取り魔  / ヒトリマ

火の妖怪 各地の伝説

提灯の火が吸い取られるように細くなる。通り過ぎると元に戻る。

火取り魔の姿を描いた図

Bio06940 「こおろぎ橋(石川県加賀市山中温泉)」 2020年 / CC BY-SA 出典

火取り魔とはどんな妖怪か

火取り魔は、石川県江沼郡山中町に伝わる怪現象です。

現在の加賀市にあたります。

場所が決まっています。

こおろぎ橋の近くに姥の懐と呼ばれる場所があります。

そこを通ると、起きます。

夜にここを人が提灯を灯して通ると、提灯の火がまるで吸い取られるように細くなり、そこを通り過ぎるとまた元通り明るくなるといいます。

細くなって、戻ります。

消えるわけではありません。

土地の住民からは、この現象は火取り魔という妖怪の仕業と呼ばれています。

加賀山中温泉ではキツネが悪さをしているともいい、河童が正体ともいわれます。

火取り魔の漢字表記と読み方

読みは「ひとりま」です。

火を取る魔、という形の名です。

同じ現象は各地にあります。

新潟県三条市の翁坂砂撒きイタチが正体とされます。
石川県能美郡今江村(現・小松市) … 茯苓の精(ぶくりょうのせい)と呼ばれます。
高知県 … 「魔が憑く」と呼ばれます。
愛知県北設楽郡三輪村大字川合(現・新城市) … 「火を貸せ」といいます。

そして、沖縄にも似た伝承があります。

キジムナーも、夜道を行く人から提灯を奪って逃げるという伝承があります。

火取り魔(ひとりま)

もっとも一般的な表記。

火取魔(ひとりま)

送り仮名を省いた形。

火を貸せ(ひをかせ)

愛知県の同様の怪異の呼び名。

茯苓の精(ぶくりょうのせい)

石川県能美郡の同様の怪異の呼び名。

火取り魔の姿と特徴

火取り魔には、姿がありません。

あるのは、火の変化だけです。

提灯の火がまるで吸い取られるように細くなる
そこを通り過ぎるとまた元通り明るくなる

正体には諸説あります。

キツネが悪さをしている(加賀山中温泉)。
河童が正体。
砂撒きイタチ(新潟県三条市)。
茯苓の精(石川県能美郡)。

水木しげるの妖怪画には、姿があります。

上半身が炎で下半身が着流し姿の人間といった姿に描かれています。
この妖怪画は、元は山東京伝による草双紙『妬湯仇討話』にある二本足幽霊です。

火取り魔の伝承物語

  1. 姥の懐で細くなる
  2. 火を吹き消してつけ直す
  3. 砂撒きイタチと茯苓の精

姥の懐で細くなる

火取り魔の起きる場所は、きわめて限られています。

こおろぎ橋の近くに姥の懐と呼ばれる場所があります。

そこだけです。

夜にここを人が提灯を灯して通ると、提灯の火がまるで吸い取られるように細くなり、そこを通り過ぎるとまた元通り明るくなるといいます。

その場所を過ぎれば戻ります。

そして、説明がついています。

妖怪漫画家・水木しげるの説によれば、かつては夜道を照らす照明といえば提灯くらいしかなかったため、
その提灯の火が細くなることは人の恐怖心を煽り、そのためにこのような妖怪伝承が生まれたとされます。

明かりが弱まることは、命に関わりました。

風の通り道や湿った空気でも、炎は細くなります。

火を吹き消してつけ直す

同じ現象は、各地にあります。

高知県の対処法が、具体的です。

高知県でも同様に提灯の火が細くなる現象が伝えられており、こちらでは「魔が憑く」と呼ばれます。

細くなった火を一度吹き消してから火をつけ直すと、この怪異を逃れられるといいます。

一度消してから、つけ直します。

愛知県では、少女が出ます。

愛知県北設楽郡三輪村大字川合(現・新城市)では「火を貸せ」という怪異が伝わります。

ある男が夜、亀淵という地の付近を通ると、小さな少女が現れ「火を貸せ」と言いました。

男は付近に河童が出るという噂を思い出し、大煙管で少女の頭を打ちつけると、少女の姿は消え、男のほうが気絶しました。

その少女は、淵の主、または淵の神の子と噂されました。

砂撒きイタチと茯苓の精

正体とされるものは、土地ごとに違います。

新潟県三条市の翁坂です。

砂撒きイタチというイタチが、人に砂をかけたり人の蝋燭の火を奪うといい、これが正体だといいます。

イタチです。

石川県能美郡では、植物です。

江戸時代の奇談集『三州奇談』によれば、能美郡今江村(現・小松市)で、
夜半に湖畔の切り通しを通ると、人の呼び声が聞こえるとともに、松のきつい香りがして提灯の火が奪われるといいます。

これは植物の怪異として「茯苓の精」(ぶくりょうのせい)と呼ばれます。

茯苓は、松の根に生えるキノコです。

松の香りがする、という点と結びついています。

火取り魔の伝承地域

火取り魔は、石川県江沼郡山中町(現・加賀市)に伝わります。

こおろぎ橋の近くに姥の懐と呼ばれる場所があり、そこで起きるとされます。

こおろぎ橋は、山中温泉の渓谷にかかる橋です。

同様の怪異は、各地にあります。

新潟県三条市の翁坂砂撒きイタチ)。
石川県能美郡今江村、現・小松市茯苓の精)。
愛知県新城市、旧・北設楽郡三輪村大字川合の亀淵(「火を貸せ」)。
高知県(「魔が憑く」)。

訪ねる際は、現地の案内をご確認ください。

こおろぎ橋(こおろぎばし)

近くの「姥の懐」で火取り魔が出るとされた橋

地図で開く

こおろぎ橋の所在地:石川県加賀市山中温泉こおろぎ町

鶴仙渓にかかる総ヒノキ造りの橋です。

山中温泉を代表する名勝で、橋から眺める鶴仙渓は絶景です。

名の由来は、行路が危なかったので「行路危」と呼ばれたとも、秋の夜に鳴くコオロギからともいわれます。

火取り魔の正体と考えられているもの

火取り魔については、次のように整理できます。

一つめは、火が細くなることです。夜に提灯を灯して通ると、提灯の火がまるで吸い取られるように細くなり、そこを通り過ぎるとまた元通り明るくなるといいます。

二つめは、正体の諸説です。加賀山中温泉ではキツネ河童が正体ともいわれ、新潟県三条市では砂撒きイタチ石川県能美郡では茯苓の精とされます。

三つめは、恐怖心です。水木しげるは、かつては夜道を照らす照明といえば提灯くらいしかなかったため、その火が細くなることは人の恐怖心を煽り、このような妖怪伝承が生まれたとしています。

四つめは、逃れ方です。高知県では細くなった火を一度吹き消してから火をつけ直すと、この怪異を逃れられるといいます。

五つめは、絵の出どころです。水木しげるの妖怪画の火取り魔は、元は山東京伝による草双紙『妬湯仇討話』にある二本足の幽霊です。

この怪異は、明かりが弱まる不安そのものです。 通り過ぎれば戻るという点が、危険の少なさを示しています。

火取り魔をめぐる妖怪のつながり

火取り魔が登場する作品

火取り魔は、明かりの怪異です。

提灯の火が細くなり、通り過ぎれば戻ります。 正体はキツネ、河童、イタチ、松のキノコと、土地ごとに違います。

資料は江戸の奇談集と、各地の民俗の記録に分かれます。

火取り魔が登場する古典

三州奇談

江戸時代の奇談集。能美郡今江村の茯苓の精を記します。

火取り魔が登場する研究

妖怪事典

村上健司編著、2000年。石川の怪現象として整理しています。

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水木しげるの妖怪画

火取り魔を上半身が炎で下半身が着流し姿の人間として描いています。

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火取り魔が登場する漫画・アニメ

妖怪をまとめて扱う作品

火にまつわる怪異として、送り提灯やキジムナーと並べて取り上げられます。

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火取り魔についてよくある質問

火取り魔とは何ですか。

石川県江沼郡山中町(現・加賀市)に伝わる怪現象で、夜に提灯を灯して通ると、提灯の火がまるで吸い取られるように細くなり、そこを通り過ぎるとまた元通り明るくなるといいます。

どこで起きるのですか。

こおろぎ橋の近くに姥の懐と呼ばれる場所です。

正体は何ですか。

加賀山中温泉ではキツネが悪さをしているともいい、河童が正体ともいわれます。 新潟県三条市では砂撒きイタチ石川県能美郡では茯苓の精とされます。

逃れる方法はありますか。

高知県では、細くなった火を一度吹き消してから火をつけ直すと、この怪異を逃れられるといいます。

火取り魔と併せて覚えたい言葉・用語

こおろぎ橋(こおろぎばし)

山中温泉の渓谷にかかる橋。

茯苓(ぶくりょう)

松の根に生えるキノコ。その精が火を奪うとされた。

砂撒きイタチ(すなまきいたち)

人に砂をかけ、蝋燭の火を奪うとされるイタチ。