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片葉の葦とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

片葉の葦  / カタハノアシ

器物と草木幽霊と霊 怪談・百物語

殺された娘の恨みで、葦が片側にしか葉をつけなくなったという怪異。

片葉の葦の姿を描いた図

三代歌川国輝 「本所七不思議之内 片葉の葦」 1886年 / パブリックドメイン 出典

片葉の葦とはどんな妖怪か

片葉の葦はひとことで言えば、土地に残った傷あとです。

本所(いまの東京都墨田区)を舞台とする本所七不思議の一つ。姿を持つ妖怪ではありません。

江戸時代、本所にお駒という美しい娘が住んでいました。近所の留蔵という男が幾度も迫りましたが、お駒はなびきません。ついに逆上した留蔵は、外出したお駒を追い、駒止橋のあたりで襲いかかりました。

そして片手片足を切り落として殺し、亡骸を堀へ投げ込んでしまいます。

それ以来、その堀のまわりに生い茂る葦は、なぜか片方にしか葉をつけなくなったといいます。

片葉の葦の漢字表記と読み方

読みは「かたはのあし」です。「かたばのあし」と読まれることもあります。

「葦」はヨシとも読みますが、この怪談ではアシと読みます。「悪し」に通じるとして「よし」と言い換える習わしがありますが、この話ではあえて「あし」のままです。

片手片足を切られた娘と、片側にしか葉をつけない葦。「片」という字が、この怪談の芯にあります。

片葉の葦(かたはのあし)

もっとも一般的な表記。

かたはのあし(かたはのあし)

仮名書き。

片葉葦(かたばあし)

「の」を省いた表記。

片葉の葦の姿と特徴

片葉の葦には、妖怪としての姿がありません。あるのは草の形だけです。

場所 … 駒止橋付近の堀のまわり。
… 葦の葉が片側にしか生えない。
時期 … お駒が殺されて以後。

本所七不思議のほかの話は、音・光・姿の怪異です。片葉の葦だけが、目に見える形として土地に残り続けます。

その気になれば、いつでも確かめられる怪異だった点が、ほかと違います。夜を待つ必要も、条件をそろえる必要もありません。

なお、葦が片側にしか葉をつける現象そのものは、強い風が一方向から吹き続ける場所で実際に起こります。 川筋や堀端は、まさにそうした場所です。

片葉の葦の伝承物語

  1. お駒と留蔵 ─ 話の筋
  2. 恨みが草に移る
  3. 七不思議のなかでの位置

お駒と留蔵 ─ 話の筋

江戸時代のことです。

本所にお駒という美しい娘が住んでいました。近所に住む留蔵という男が恋心を抱き、幾度も迫りましたが、お駒は一向になびきません。

ついに爆発した留蔵は、所用で外出したお駒を追いました。

そして隅田川からの入り堀にかかる駒止橋の付近で襲いかかり、片手片足を切り落として殺した挙げ句、堀に投げ込んでしまいました。

駒止橋は、現在の両国橋付近の脇堀にかかっていた橋です。

それ以降、駒止橋付近の堀のまわりに生い茂る葦は、なぜか片方だけの葉しかつけなくなったといいます。

話はここで終わります。留蔵がどうなったかは語られません。罰も報いもなく、ただ草の形だけが変わったまま残ります。

恨みが草に移る

片葉の葦の変わっているところは、恨みの行き先です。

怪談では多くの場合、恨みは人に憑きます。殺した相手を苦しめ、祟ります。

しかしこの話では、恨みは人へ向かいません。恨みは土地の草へ移り、その形を変えてしまいました。

葦は毎年枯れ、毎年生えます。にもかかわらず、片側にしか葉をつけない性質だけが受け継がれます。

一度きりの出来事が、繰り返し目に見える形で戻ってくる。 これがこの話の恐ろしさです。

同じ形の伝えは各地にあります。ある人が死んだ場所の草木の形が変わる、実がならなくなる、といった話です。

土地は忘れないという考え方が、そこにはあります。

七不思議のなかでの位置

本所七不思議には、置行堀送り提灯燈無蕎麦足洗邸狸囃子などが数えられます。

これらはいずれも夜に起きる怪異です。

置行堀は「置いてけ」という声、送り提灯は追いつけない明かり、燈無蕎麦は主のいない屋台、狸囃子は出所のない音。

そのなかで片葉の葦だけが、昼でも見える、動かないものです。

なぜこれが七不思議に数えられたのでしょうか。

一つには、説明のつかなさがあります。なぜこの場所の葦だけが片側にしか葉をつけないのか。理由が分からない以上、これは不思議です。

もう一つには、話の残酷さがあります。ほかの六つが人を驚かせる程度で済むのに対し、片葉の葦の背景には殺人があります。七不思議のなかで、いちばん人が死んでいる話です。

片葉の葦の伝承地域

片葉の葦の伝承地は、東京都墨田区の駒止橋付近、現在の両国橋付近です。

ただし、その堀も橋もすでに残っていません。 埋め立てられて市街地になり、葦の生える水辺はありません。

本所七不思議をたどる散策の一点として訪ねる形になります。片葉の葦そのものを見ることはできません。

駒止橋跡(両国橋付近)(こまどめばしあと(りょうごくばしふきん))

お駒が殺されたとされる場所

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駒止橋跡(両国橋付近)の所在地:東京都墨田区 両国橋付近

お駒が殺され、葦が片葉になったとされる場所です。

駒止橋は、隅田川からの入り堀にかかっていた橋で、現在の両国橋付近の脇堀にかかっていました。

その堀も橋も、いまは残っていません。 埋め立てられて市街地になっています。

両国駅から歩ける範囲にあり、本所七不思議をたどる散策の一点として訪ねられます。

当時の堀は埋め立てられており、葦の生える水辺は残っていません。

片葉の葦の正体と考えられているもの

片葉の葦の正体については、次のように考えられています。

風による現象とする見方が、もっとも現実的です。葦が片側にしか葉をつける現象は、強い風が一方向から吹き続ける場所で実際に起こります。川筋や堀端はまさにそうした場所であり、説明としては十分に成り立ちます。

日当たりによるとする見方もできます。片側だけ建物や堤に遮られて日が当たらなければ、そちら側の葉は育ちにくくなります。

恨みが土地に残ったとする語り方は、その現象に理由をつけたものと考えられます。目に見える不思議が先にあり、それを説明する話が後から作られた、という順序です。

「片」という字の重なりは、話を作るうえで大きな役割を果たしています。片手片足を切られた娘と、片葉の葦。この重なりがあるからこそ、話は覚えられ、語り継がれました。

お駒と留蔵が実在したかは分かっていません。 二人の名を裏づける記録は見つかりませんでした。

片葉の葦をめぐる妖怪のつながり

片葉の葦が登場する作品

片葉の葦は、単独で作品の主題になることが少ない怪異です。

姿を持たず、動きもないため、映像や絵にしにくいことが理由とみられます。

一方、本所七不思議をまとめて扱う作品では必ず入ります。 七つのうちで唯一、殺人を背景に持つ話として位置づけられます。

片葉の葦が登場する浮世絵

本所七不思議を描いた諸作

七つのうちの一つとして取り上げられます。

片葉の葦が登場する漫画・アニメ

本所七不思議を扱う諸作

七不思議をまとめて扱う話の中に現れます。

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片葉の葦についてよくある質問

片葉の葦とは何ですか。

殺された娘の恨みで、堀のまわりの葦が片側にしか葉をつけなくなったという怪異です。本所七不思議の一つで、姿を持つ妖怪ではありません。

片葉の葦はどこにありますか。

東京都墨田区の駒止橋付近、現在の両国橋付近とされます。ただし堀も橋も埋め立てられており、葦の生える水辺は残っていません。

なぜ片側にしか葉がつかないのですか。

殺された娘の恨みによると語られます。実際には、強い風が一方向から吹き続ける場所や、片側に日が当たらない場所で起こりうる現象です。

留蔵はどうなったのですか。

語られていません。この話には罰も報いもなく、草の形が変わったまま残るところで終わります。

片葉の葦と併せて覚えたい言葉・用語

駒止橋(こまどめばし)

隅田川からの入り堀にかかっていた橋。現在の両国橋付近。すでに残っていない。

お駒(おこま)

片葉の葦の話で殺される娘の名。実在を裏づける記録は見つかっていない。

(あし)

水辺に生える草。ヨシとも読むが、この怪談ではアシと読む。