アイヌ語で「小人」を意味する語。民話そのものは確認されていない。
ニングルとはどんな妖怪か
ニングルは、アイヌの伝承における小人です。
萱野茂の『萱野茂のアイヌ語辞典 増補版』には「ニングル」の項があり、「小人」との訳が当てられています。
言葉の作りもわかっています。
アイヌ語では「ニン」には「縮む」、「グル」には「ひと」を意味します。
縮んだ人、です。
ところが、ここに注意点があります。
「ニングル」という小人を意味する言葉自体はアイヌで伝承されてきたものですが、ニングルにまつわる民話自体を伝える資料は明らかになっていません。
言葉はあり、話がありません。
ニングルの漢字表記と読み方
読みは「にんぐる」です。
「ニン」=縮む、「グル」=ひと。
あわせて「縮んだ人」、つまり小人です。
辞典に載っている言葉です。
萱野茂の『萱野茂のアイヌ語辞典 増補版』に「小人」との訳が当てられています。
萱野茂は、アイヌ語の辞典を編み、アイヌ文化の記録に努めた人です。
そして、ここから先が慎重を要します。
言葉はアイヌで伝承されてきたものですが、その小人がどんなものだったかを伝える民話は見つかっていません。
ニングル(にんぐる)
もっとも一般的な表記。
ニン(にん)
アイヌ語で「縮む」。
グル(ぐる)
アイヌ語で「ひと」。
ニングルの姿と特徴
ニングルの姿は、アイヌの資料には伝わっていません。
辞典にあるのは「小人」という訳だけです。
いま広く知られている姿は、小説のものです。
倉本聰のいくつかの小説に森の妖精として登場し、小説の題名ともなり、演劇化もされました。
そこでの設定はこうです。
富良野地方のアイヌの民話に登場するとされますが、民話自体が実在するものかは不明です。
そして、絵になりました。
ニングルが涙を流している姿が、公共広告機構(現:ACジャパン)の森林破壊防止を訴えるCM及びポスターに用いられたことがあります。
ニングルの伝承物語
言葉はあり、話がない
ニングルは、扱いに注意が要る名です。
「ニングル」という小人を意味する言葉自体は、アイヌで伝承されてきたものです。
辞典に載っています。
萱野茂の『萱野茂のアイヌ語辞典 増補版』に「ニングル」の項があり、「小人」との訳が当てられています。
ところが、話がありません。
ニングルにまつわる民話自体を伝える資料は明らかになっていません。
どんな小人だったのか、何をしたのか。
書かれていません。
創作の設定では「富良野地方のアイヌの民話に登場する」とされますが、登場する民話の実在は確認されていないのです。
言葉と、後からついた物語を分けて読む必要があります。
涙を流すポスター
ニングルの姿が広まったのは、広告からでした。
ニングルが涙を流している姿が、公共広告機構(現:ACジャパン)の森林破壊防止を訴えるCM及びポスターに用いられたことがあります。
森を守るための広告です。
この広告は1999年に第52回広告電通賞の公共広告優秀賞を受賞しています。
賞を取りました。
そして、小説が先にありました。
倉本聰のいくつかの小説に森の妖精として登場し、小説の題名ともなり、演劇化もされました。
『ニングル』(1985年、理論社)です。
『ニングルの森』(2002年、集英社)もあります。
演劇は1993年に初演されました。
2024年2月には、日本オペラ協会によってオペラにもなっています。
土産物になる
ニングルは、物として売られるようになりました。
倉本による小説やCMで知名度が高まったこともあり、近年では、ニングルを象った木彫り人形なども土産物として販売されています。
木彫りの人形です。
ここに、一つの流れが見えます。
辞典の一語 → 小説の妖精 → 広告のポスター → 土産物の木彫り。
四十年ほどのあいだの変化です。
そして、元の話は見つかっていません。
土産物を手にした人が「アイヌの民話の小人」と受け取ることは自然ですが、その民話の実在は確認されていません。
この図鑑では、辞典にある言葉と、小説から広まった姿を、分けて記しています。
ニングルの伝承地域
ニングルは、北海道のアイヌ語に伝わる言葉です。
創作の設定においては富良野地方のアイヌの民話に登場するとされますが、登場する民話の実在は確認されていません。
そのため、伝承地を挙げることはできません。
近年では、ニングルを象った木彫り人形が土産物として販売されています。
確かめられていない土地を、伝承地として挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。
ニングルの正体と考えられているもの
ニングルについては、次のように整理できます。
一つめは、アイヌ語の言葉です。萱野茂の『萱野茂のアイヌ語辞典 増補版』に「ニングル」の項があり、「小人」との訳が当てられています。 ニンは「縮む」、グルは「ひと」です。
二つめは、見つかっていない民話です。言葉自体はアイヌで伝承されてきたものですが、ニングルにまつわる民話自体を伝える資料は明らかになっていません。
三つめは、小説の妖精です。倉本聰のいくつかの小説に森の妖精として登場し、小説の題名ともなり、演劇化もされました。 設定では富良野地方の民話とされますが、その実在は不明です。
四つめは、広告と土産物です。涙を流す姿が公共広告機構の森林破壊防止のCM及びポスターに用いられ、1999年に広告電通賞の公共広告優秀賞を受賞しました。 いまは木彫り人形が土産物として売られています。
ニングルは、言葉だけが古く、姿は新しいという珍しい例です。 どちらを指しているのかを分けて読む必要があります。
ニングルをめぐる妖怪のつながり
ニングルが登場する作品
ニングルは、創作を通して広まった名です。
辞典にある一語が、小説と広告を経て、いまは木彫りの土産物になっています。
資料はアイヌ語の辞典と、倉本聰の作品に分かれます。
ニングルが登場する研究
萱野茂のアイヌ語辞典
「ニングル」の項があり、「小人」との訳が当てられています。
ニングルが登場する小説
ニングル
倉本聰、1985年、理論社。森の妖精として描かれ、この名を広く知らせました。
ニングルの森
倉本聰、2002年、集英社。
ニングルが登場する舞台
ニングル(演劇)
1993年初演。原作・脚本は倉本聰。
ニングル(オペラ)
2024年2月初演。日本オペラ協会による。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
ニングルについてよくある質問
ニングルとは何ですか。
アイヌの伝承における小人です。萱野茂のアイヌ語辞典に項があり、「小人」との訳が当てられています。
名前の意味は何ですか。
アイヌ語で「ニン」は「縮む」、「グル」は「ひと」を意味します。あわせて「縮んだ人」です。
アイヌの民話に出てくるのですか。
言葉自体はアイヌで伝承されてきたものですが、ニングルにまつわる民話自体を伝える資料は明らかになっていません。 創作の設定では富良野地方の民話とされますが、その実在は確認されていません。
なぜ広く知られているのですか。
倉本聰の小説に森の妖精として登場し、公共広告機構(現:ACジャパン)の森林破壊防止のCM及びポスターに涙を流す姿が用いられたためです。この広告は1999年に広告電通賞の公共広告優秀賞を受賞しています。
ニングルと併せて覚えたい言葉・用語
萱野茂(かやのしげる)
アイヌ語の辞典を編み、アイヌ文化の記録に努めた人物。
倉本聰(くらもとそう)
脚本家・小説家。『ニングル』の著者。
ACジャパン(えーしーじゃぱん)
公共広告機構の現在の名称。ニングルの広告を制作した。