居ついた家を貧しくするとされた神。茶碗を叩く音が呼び寄せると忌まれた。
貧乏神とはどんな妖怪か
貧乏神はひとことで言えば音で呼んでしまう神です。
姿を見た話より、呼び寄せない作法のほうが広く伝わりました。
茶碗を叩くな。飯櫃を叩くな。この禁忌は、ずいぶん広い区域にわたって行われていました。
貧乏神の漢字表記と読み方
読みは「びんぼうがみ」です。
沖縄ではヒンスー神と呼ばれ、対になる福の神はウェーキ神といいます。
貧乏神(びんぼうがみ)
一般的な表記。
ヒンスー神(ひんすーがみ)
沖縄の民話での呼び方。
貧乏神の姿と特徴
姿かたちを伝える採録は多くありません。
代わりに残ったのは、近づいてくる合図のほうでした。食器を叩く音がそれです。
貧乏神の伝承記録
茶碗を叩くな ─ 音が貧乏神を呼ぶ
柳田国男は、農家に広く残る禁忌を書き留めています。
今も多くの農家で茶碗を叩き、また飯櫃や桝の類を叩くことを忌む風習が、ずいぶん広い区域にわたって行われている
なぜ忌むのかの説明は、土地によって違いました。
叩くと貧乏する、貧乏神がくるというもののほかに、この音を聴いて狐がくる、オサキ狐が集まってくるという地方も関東には多い
叩く音は、もとは招く合図だった
柳田はこの禁忌を、逆側から読みます。
食器を叩くことは、もともと食べ物を与えようという信号でした。それが転じて、小さな神を招き降ろす方式になったのだろう、と。
だからこそ、むやみに真似することを戒める土地がある一方で、同じ方法で子を隠す神を呼んだ土地もありました。
呼ぶ作法と、呼ばない作法は同じ動作です。
沖縄では、福の神と住みかを取り替える
沖縄には、二柱が入れ替わる話が伝わります。
ヒンスー神のいる家には利口な息子がいて、ウェーキ神の家にはおろかな息子がいました。
それぞれの神が自分の家に見切りをつけて出ていく途中、道でばったり出会います。互いにわけを話し、住みかを取り替えました。
この話を語ったのは金城ヨシ(一八九八年生)で、沖縄口承文芸学術調査団が一九七四年八月十日に書き取りました。
貧乏神の伝承地域
食器を叩くことを忌む風習は、柳田国男が「ずいぶん広い区域」と書くとおり全国に及びます。狐が来るという説明は関東に多いとされます。福の神と住みかを取り替える話が伝わるのは沖縄です。
貧乏神の正体と考えられているもの
貧乏神は、動作に宿る神です。
姿の記録は乏しく、残ったのは茶碗を叩くという一つの動作でした。同じ動作が、招くことにも遠ざけることにも使われています。
貧乏神をめぐる妖怪のつながり
貧乏神が登場する作品
貧乏神は、祀って追い出す神です。
退治するのではなく、丁重にもてなしてから送り出す。 この形は、祟るものを格上げして鎮めるという日本の信仰と同じ手にあたります。
上田秋成『雨月物語』の「貧福論」には、金の精霊が老人の姿で現れ、富と徳をめぐって語り合う場面があります。石燕の金霊も、同じ時代に富を精霊として描いた一枚です。
貧乏神が登場する古典
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貧乏神についてよくある質問
貧乏神はどうすると来るとされましたか。
茶碗や飯櫃、桝の類を叩くと貧乏する、貧乏神が来ると言われました。関東には、その音で狐やオサキ狐が集まるという地方もあります。
なぜ食器を叩くことが忌まれたのですか。
柳田国男は、食器を叩くのがもともと食べ物を与える合図であり、それが小さな神を招き降ろす方式に転じたためだろうと見ています。
貧乏神が出ていく話はありますか。
沖縄では、ヒンスー神とウェーキ神がそれぞれの家に見切りをつけ、道で出会って住みかを取り替える話が伝わります。
貧乏神と併せて覚えたい言葉・用語
飯櫃(めしびつ)
炊いた飯を移して保つ木の器。これを叩くことも貧乏神を呼ぶとして忌まれた。
ウェーキ神(うぇーきがみ)
沖縄で福の神を指す呼び方。ヒンスー神と住みかを取り替える話がある。
貧乏神の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。