山の中に出るサメのような悪魚。剣豪の退治話で語られた。

歌川国芳 「英雄日本水滸伝 宮本無三四」 1843年ごろ / パブリックドメイン 出典
山鮫とはどんな妖怪か
山鮫は、日本に伝わる妖怪です。
山のなかに出現する存在として各地で語られていました。
わかっていることは、多くありません。
名前からわかるように、山に出るもの、サメのような悪魚だとされている点は共通しているが、はっきりした情報は多く残されていないといいます。
共通するのは、二点です。
山に出ること。
サメのような悪魚であること。
土地の話が、二つ残っています。
福井県大野市の柿ヶ島と、
兵庫県東粟倉村(現・美作市)です。
山鮫の漢字表記と読み方
読みは「やまざめ」です。
山にいるサメ、という形の名です。
海の魚の名が、山についています。
山に出るもの、サメのような悪魚だとされている点は共通しているといいます。
同じ作りの名は、ほかにもあります。
水のものが、山に移る形です。
そして、山鮫は絵になりました。
歌川国芳による浮世絵『本朝水滸伝剛勇八百人一個 宮本無三四』に山鮫魚(やまざめ)が描かれています。
山鮫(やまざめ)
もっとも一般的な表記。
山鮫魚(やまざめ)
歌川国芳の浮世絵での表記。
山鮫の姿と特徴
山鮫の姿は、はっきりしません。
サメのような悪魚とされる点だけが共通します。
捕まえたという記録が一つあります。
兵庫県東粟倉村(現・美作市)で、田んぼに出たので打ち殺した山鮫であると称された生物があります。
ウリのような楕円形で鱗があり、足はなかったといいます。
足がありません。
絵では、また違います。
明治時代に入っても、『宮本左門之助武勇伝』をはじめとしたボール表紙本や児童向けの絵本で、宮本左門之助あるいは宮本武蔵が大きな鰐のような山鮫を退治する場面の絵が描かれているのを確認する事ができます。
山鮫の伝承物語
池ができて、消えた
福井県大野市の柿ヶ島には、土地の話が残っています。
滝ノ谷と呼ばれる場所に山鮫が住んでいたとされます。
そこを、開こうとしました。
滝ノ谷でやぶを焼き畑して切り拓いたところ、突然に大きな池ができるという不思議な現象が起こった事があります。
池ができました。
村人は、理由をつけました。
「山鮫のせいだ」と思った村人たちが農地にするのを辞めて、やぶに戻したといいます。
戻しました。
すると、池も消えます。
池は消えてなくなったといいます。
手をつけなければ、元通りでした。
打ち殺したものが残った
兵庫県東粟倉村(現・美作市)には、捕らえた話があります。
夏になると山鮫がまれに出て来ると言われていたといいます。
夏です。
そして、田んぼに出ました。
田んぼに出たので打ち殺した山鮫であると称された生物は、
ウリのような楕円形で鱗があり、足はなかったといいます。
足のない、鱗のあるものです。
これに、学者が意見を出しました。
博物学者の大上宇市は、これについて実在の有肺類の生物・プロトプテラス(肺魚の仲間)のような生物なのではないか――という雑録報告を寄せています。
ただし、確かめられていません。
捕獲されたものが山鮫とされて来たものであったのかの確証は特に示されておらず、想像の域を出ていません。
宮本武蔵が退治した
山鮫は、芸能の中で長く生きました。
江戸時代から語られていた剣豪が各地を武者修業していたという設定の作品群のなかで、山鮫退治の話は語られつづけていました。
剣豪ものです。
浮世絵にもなりました。
歌川国芳による浮世絵『本朝水滸伝剛勇八百人一個 宮本無三四』に描かれている山鮫魚(やまざめ)です。
場所も決まっています。
穴間越という美濃国・飛騨国・越前国のちょうど中間にあたる峠道で宮本武蔵が山鮫退治をするという『絵本二島英雄記』(1803年)にもある物語を画題にしています。
峠道での退治です。
そして、明治にも続きました。
ボール表紙本や児童向けの絵本で、宮本左門之助あるいは宮本武蔵が大きな鰐のような山鮫を退治する場面の絵が描かれています。
山鮫の伝承地域
山鮫は、各地で語られました。
福井県大野市の柿ヶ島 … 滝ノ谷と呼ばれる場所に山鮫が住んでいたとされます。
兵庫県美作市(旧・東粟倉村) … 夏になると山鮫がまれに出て来ると言われていました。
穴間越 … 美濃国・飛騨国・越前国のちょうど中間にあたる峠道で、宮本武蔵が山鮫退治をすると『絵本二島英雄記』にあります。
山そのものが舞台であり、この名で祀られた社や碑は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
山鮫の正体と考えられているもの
山鮫については、次のように整理できます。
一つめは、共通点です。山に出るもの、サメのような悪魚だとされている点は共通しているが、はっきりした情報は多く残されていないといいます。
二つめは、福井の池です。滝ノ谷でやぶを焼き畑して切り拓いたところ、突然に大きな池ができ、農地にするのを辞めて、やぶに戻したところ、池は消えてなくなったといいます。
三つめは、兵庫の捕獲です。田んぼに出たので打ち殺した山鮫であると称された生物は、ウリのような楕円形で鱗があり、足はなかったといいます。
四つめは、学者の見立てです。博物学者の大上宇市はプロトプテラス(肺魚の仲間)のような生物なのではないかとしましたが、確証は特に示されておらず、想像の域を出ていません。
五つめは、剣豪ものです。歌川国芳の浮世絵や『絵本二島英雄記』(1803年)で、宮本武蔵が山鮫退治をすると語られました。
この妖怪は、伝えより絵のほうがよく残りました。 退治される役として描かれ続けています。
山鮫をめぐる妖怪のつながり
山鮫が登場する作品
山鮫は、退治される役です。
土地の伝えは短く、剣豪ものの絵のほうが多く残りました。
資料は福井・兵庫の民俗の記録と、江戸から明治の読み物に分かれます。
山鮫が登場する古典
絵本二島英雄記
1803年。穴間越で宮本武蔵が山鮫を退治する話があります。
山鮫が登場する漫画・アニメ
剣豪ものの作品
宮本武蔵の退治する怪物として取り上げられます。
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山鮫についてよくある質問
山鮫とは何ですか。
山のなかに出現する存在として各地で語られていた妖怪で、サメのような悪魚だとされている点は共通しているといいます。
福井にはどんな話がありますか。
滝ノ谷でやぶを焼き畑して切り拓いたところ、突然に大きな池ができ、やぶに戻したところ、池は消えてなくなったといいます。
捕まえた記録はありますか。
兵庫県東粟倉村で田んぼに出たので打ち殺した山鮫であると称された生物は、ウリのような楕円形で鱗があり、足はなかったといいます。
宮本武蔵と関係がありますか。
穴間越という美濃国・飛騨国・越前国のちょうど中間にあたる峠道で宮本武蔵が山鮫退治をするという『絵本二島英雄記』(1803年)の物語があり、歌川国芳が画題にしています。
山鮫と併せて覚えたい言葉・用語
悪魚(あくぎょ)
人を害する魚。退治譚に出る。
ボール表紙本(ぼーるびょうしぼん)
明治期の、厚紙表紙の安価な本。
肺魚(はいぎょ)
えらのほかに肺を持ち、空気呼吸をする魚。