顔の真ん中に目が一つあるお化け。もとは片方を潰された目が畏れられ、貴ばれた。

北尾政美 「一つ目小僧」 1788年 / パブリックドメイン 出典
一つ目小僧とはどんな妖怪か
一つ目小僧はひとことで言えば片目にされたもののしるしです。
顔の真ん中に目が一つ、という姿は後からできました。
柳田国男によれば、日本で最初に畏れられたのは片目の鮒のように、二つある目の片方が潰れたものでした。
わざわざ片方を潰したものほど、恐れられ、そして貴ばれたのです。
奥州では一つまなぐ、東京では一つ目小僧と呼びます。呼び名は違っても、指しているのは同じ「ふつうでないもののしるし」です。
筑紫には、その由来を語る大蛇の話が残りました。
一つ目小僧の漢字表記と読み方
読みは「ひとつめこぞう」です。奥州では一つまなぐといいます。
柳田国男は、この二つを同じ根から出たものと見ました。
何にもせよ、目が一つしかないということは、不思議なもの、またおそるべきもののしるしでありました。
しるしであって、種族ではありません。
一つ目小僧(ひとつめこぞう)
東京での呼び方。
一つまなぐ(ひとつまなぐ)
奥州での呼び方。「まなぐ」は目のこと。
片目(かため)
二つある目の片方が潰れた状態。もとの信仰はこちらに向いた。
一つ目小僧の姿と特徴
顔の真ん中に目が一つ、という姿で描かれます。
ただし柳田国男が古い形として挙げるのは、片目の鮒です。二つあるはずの目の、片方だけが潰れている。
欠けていること自体が、しるしになりました。
一つ目小僧の伝承と変遷
大蛇の嫁が右の目を抜いて置いていく
筑紫に、こういう話が伝わります。
狩人の家へ若く美しい娘が嫁に来ました。赤ん坊が生まれるとき、のぞいてはいけないと言います。
不審に思ってのぞくと、おそろしい大蛇がとぐろを巻いて生まれ子を抱えていました。
姿を見られた以上、もう行かなければならない。娘はそう言って、自分で右の眼を抜いて置いていきます。
子が泣いたらこの玉を嘗めさせてください、と言い残して、山の沼へ帰りました。
眼の玉が、そのまま乳の代わりになります。母は、体の一部を置いていったのです。
玉を取り上げられ、左の目も抜かせる
その玉の評判が高くなり、殿様に取り上げられてしまいます。
赤ん坊が腹をすかせて泣いても、嘗めさせるものがありません。
困り切った親子が山へ登り、沼の岸で泣いていると、大浪が立って片目の大蛇が現れました。話を聴いて、残った左の眼の玉を抜いてくれます。
喜んで持ち帰り、子を育てているうちに——その玉も、また殿様に取り上げられました。
これで大蛇は、両方の眼を失いました。子を育てるために、母は盲になっています。
盲の大蛇が怒り、山が崩れる
もう仕方がない。身を投げて死のうと思って、親子は同じ沼へ向かいます。
今度出てきたのは、盲の大蛇でした。
話を聴いて、非常に怒ります。そういうひどいことをするなら仕返しをしなければならない、二人は早く逃げて何々という所へ行きなさい、そこでは良い乳を貰える——そう言って親子をすぐに帰しました。
その後におそろしい噴火があり、山が崩れ、田も海も埋まりました。盲の大蛇の仕返しだったといいます。
大蛇は二度、自分の眼を抜きました。二度とも取り上げられ、最後に山を崩します。
母が子に渡したものを、人が二度奪った話です。
片目を潰したものを、恐れ、また貴んだ
この話が伝えているのは、目の玉の値打ちではありません。片目になることの意味です。
最初日本では、片目の鮒のように、二つある目の片方が潰れたもの、ことにわざわざ二つの目を、一つ目にした力のもとを、おそれもし、また貴みもしていたのであります
恐れると同時に、貴んでいました。
顔の真ん中に一つだけ目のあるお化けを想像するようになったのは、この後の話です。欠けたしるしが、いつのまにか生まれつきの姿になりました。
飛騨と遠州に残る同じ形
飛騨の萩原にも、この形が残ります。諏訪神社の社地に城を築こうとした武士が神輿を動かせず、社の前に大きな青大将がわだかまって退かない。武士は怒って梅の折り枝を手に取りました。
遠州の有玉郷にも、天竜川の大蛇を母として生まれた子が、二つの玉を貰って出世したという話が古くからあります。ただしそこでは、眼を抜いたとは語られませんでした。
同じ形の話が、眼の玉を伴う土地と、伴わない土地に分かれています。
一つ目小僧の伝承地域
大蛇が眼の玉を抜く話は筑紫(『筑紫野民譚集』)に伝わります。遠州の有玉郷には、天竜川の大蛇を母として生まれた子が二つの玉を貰う話がありますが、眼を抜いたとは語られません。「一つまなぐ」は奥州の呼び方です。
一つ目小僧の正体と考えられているもの
一つ目小僧は、しるしが姿に変わったものです。
もとは片方を潰された目が、ふつうでないもののしるしでした。恐れられ、同時に貴ばれています。
その意味が忘れられると、しるしだけが残り、顔の真ん中に目が一つある子どもの姿になりました。
一つ目小僧をめぐる妖怪のつながり
一つ目小僧が登場する作品
一つ目小僧は、柳田国男が最も深く考えた妖怪の一つです。
片目だけを潰された神を祀る習わしが各地にあり、そこから一つ目の姿が生まれたのではないか。 『一つ目小僧その他』は、その見方を組み立てた論集です。
創作では、恐ろしさより愛嬌が前に出ます。 豆腐小僧と並んで、子ども向けの妖怪の代表格になりました。
一つ目小僧が登場する民俗学
一つ目小僧が登場する漫画・アニメ
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一つ目小僧についてよくある質問
一つ目小僧とは何ですか。
顔の真ん中に目が一つあるお化けです。東京での呼び方で、奥州では一つまなぐといいます。柳田国男は、この姿より前に片目を潰されたものへの信仰があったと見ています。
もとは何だったのですか。
柳田国男は、日本で最初に畏れられたのは片目の鮒のように二つある目の片方が潰れたものだったとし、それを恐れると同時に貴んでいたと書いています。
大蛇が目を抜く話とはどんな話ですか。
筑紫の話です。狩人の嫁が大蛇で、正体を見られて去るとき右の眼を抜いて子に残します。玉を殿様に取り上げられ、左の眼も抜き、盲になった大蛇の怒りで噴火が起きたと語られます。
一つ目小僧と併せて覚えたい言葉・用語
一つまなぐ(ひとつまなぐ)
奥州で一つ目のお化けを指す言い方。「まなぐ」は目のこと。
片目の鮒(かためのふな)
片方の目が潰れた鮒。柳田国男は、これを一つ目信仰の古い形として挙げた。
筑紫野民譚集(つくしのみんだんしゅう)
筑紫の伝承を集めた本。大蛇が眼の玉を抜く話が載る。
一つ目小僧の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。