顔に三つの目を持つ童子姿の妖怪。タヌキが化けるという。

尾形月耕 「月耕漫画 三つ目小僧」 1894〜1903年 / パブリックドメイン 出典
三つ目小僧とはどんな妖怪か
三つ目小僧は、顔に三つの目を持つ童子の妖怪です。
資料は、多くありません。
長野県東筑摩郡教育会による調査資料に名前がありますが、名前があるのみで解説は無く、どのような妖怪かは詳細には語られていません。
しかし、江戸には具体的な話があります。
東京の下谷にあった高厳寺という寺では、タヌキが三つ目小僧に化けて現れたといいます。
このタヌキには、来歴がありました。
本来は百年以上前の修行熱心な和尚が境内に住まわせて寵愛していたために寺に住みついたものです。
ところが、それ以来、性格が変わりました。
三つ目小僧の漢字表記と読み方
読みは「みつめこぞう」です。
三つの目を持つ小僧。 名前が、姿そのものです。
「小僧」は、江戸の妖怪によくつく呼び方です。
そして、この名には言葉遊びもあります。
工具の錐の一種である三目錐を略して「三目」ということから、江戸時代の狂歌本『狂歌百物語』には、三つ目小僧と三目錐をかけた狂歌があります。
助けてと錐もむさまに合はす手も 穴おそろしの三ツ目小僧や
錐と、揉む手と、穴。
三つ目小僧(みつめこぞう)
もっとも一般的な表記。
高厳寺小僧(こうごんじこぞう)
東京の下谷にあった高厳寺での呼び名。
三目(さんもく)
工具の三目錐を略した言い方。狂歌に掛けられる。
三つ目小僧の姿と特徴
三つ目小僧の姿は、名前の通りです。
目 … 三つ。
姿 … 童子。
それ以上は、資料に書かれていません。
長野県の調査資料には、名前があるのみで解説は無いとされます。
そして、化けたタヌキには芸があります。
高厳寺のタヌキは、こうしました。
体の大きさを変えたり、提灯を明滅させて人を脅したり、人を溝に放り込んだりしました。
大きさを変えます。
提灯を点滅させます。
溝に落とします。
人はこれを高厳寺小僧と呼んで恐れました。
三つ目小僧の伝承物語
寺を荒らす者に
高厳寺のタヌキには、理由がありました。
本来は、百年以上前の修行熱心な和尚が境内に住まわせて寵愛していたために寺に住みついたものです。
可愛がられていました。
そして、それ以来こうなりました。
寺を汚したり荒らしたりする者に対しては、妖怪となって現れるようになりました。
誰にでも出るのではありません。
寺を粗末にする者にだけ出ます。
体の大きさを変えたり、提灯を明滅させて人を脅したり、人を溝に放り込んだりしました。
人はこれを「高厳寺小僧」と呼んで恐れました。
そして、困った寺は、このタヌキを「小僧稲荷」として境内に祀りました。
この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転しています。
置行堀のタヌキ
江戸には、もう一つ話があります。
本所七不思議の一つ・置行堀の近くに住んでいたタヌキが、三つ目小僧に化けて人を脅したという言い伝えです。
本所七不思議は、江戸の本所(現・東京都墨田区)に伝わる七つの怪異です。
置行堀は、そのひとつです。
釣り上げた魚を持って帰ろうとすると、堀から「置いてけ、置いてけ」という声がするというものです。
その近くに、タヌキが住んでいました。
そして、三つ目小僧に化けて人を脅しました。
江戸の三つ目小僧は、二例ともタヌキです。
下谷と本所。どちらも江戸の町中です。
仏具屋の店員たち
大阪府大阪市には、まったく違う話があります。
見世物小屋の親方が客を呼び込むため、小屋にいる小僧に作り物の目玉を付け、三つ目小僧に仕立て上げようとしました。
小僧は、嫌がりました。
そこで、小僧は演出を提案します。
「親方が洞窟で三つ目小僧を発見して捕獲する」という筋書きです。
同意した親方は、買って来た目玉を小僧の額に付け、洞窟に隠しました。
そして、見物人たちを率いて洞窟へ向かいます。
ところがそこには、小僧だけでなく数人もの三つ目人間がいて襲いかかり、親方は驚いて逃げ出しました。
種明かしがあります。
小僧は、親方が仏具屋で作り物の目玉を買っているのを知り、仏具屋の主人や店員たちに事情を話して、三つ目人間に成りすましてもらったのです。
三つ目小僧の伝承地域
三つ目小僧に関わる場所としては、次の記録があります。
東京・下谷の高厳寺 … タヌキが三つ目小僧に化けて現れ、「高厳寺小僧」と呼ばれました。困った寺はこのタヌキを「小僧稲荷」として境内に祀りました。 この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転しています。
東京・本所の置行堀 … 本所七不思議の一つで、その近くに住んでいたタヌキが三つ目小僧に化けて人を脅したという言い伝えがあります。
長野県東筑摩郡 … 教育会の調査資料に名前がありますが、名前があるのみで解説は無く、詳細は語られていません。
大阪府大阪市 … 見世物小屋の民話が伝わります。
確かめられていない場所を、伝承地として挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。
三つ目小僧の正体と考えられているもの
三つ目小僧については、次のように整理できます。
一つめは、タヌキです。東京の下谷の高厳寺、本所の置行堀。江戸の三つ目小僧は、二例ともタヌキが化けたものとされます。
二つめは、寺の守りです。高厳寺のタヌキは、寺を汚したり荒らしたりする者に対して妖怪となって現れました。 誰にでも出るのではありません。後に「小僧稲荷」として祀られました。
三つめは、名前だけです。長野県東筑摩郡教育会の調査資料には名前があるのみで解説は無く、どのような妖怪かは詳細には語られていません。
四つめは、言葉遊びです。工具の三目錐を略して「三目」ということから、『狂歌百物語』に三つ目小僧と掛けた狂歌があります。
三つ目小僧が何であったかは、わかっていません。 ただ、目が一つ増えるという単純な変化だけで、十分に不気味です。
三つ目小僧をめぐる妖怪のつながり
三つ目小僧が登場する作品
三つ目小僧は、江戸の町の話です。
下谷の高厳寺、本所の置行堀。どちらもタヌキが化けたものとされます。 そして、高厳寺のタヌキは後に稲荷として祀られました。
資料は江戸の伝聞と、長野の調査資料に分かれます。
三つ目小僧が登場する古典
狂歌百物語
江戸時代の狂歌本。三つ目小僧と三目錐をかけた狂歌があります。
三つ目小僧が登場する研究
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三つ目小僧についてよくある質問
三つ目小僧とはどんな妖怪ですか。
顔に三つの目を持つ童子姿の妖怪です。ただし長野県の調査資料には名前があるのみで解説は無く、どのような妖怪かは詳細には語られていません。
高厳寺の話とは何ですか。
東京の下谷にあった高厳寺で、タヌキが三つ目小僧に化けて現れました。 このタヌキは百年以上前の和尚が寵愛したもので、寺を汚したり荒らしたりする者に対して現れ、「高厳寺小僧」と呼ばれました。
そのタヌキはどうなったのですか。
困った寺が、このタヌキを「小僧稲荷」として境内に祀りました。 この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転しています。
大阪の民話はどんな話ですか。
見世物小屋の親方が小僧に作り物の目玉を付けて三つ目小僧に仕立てようとしたところ、洞窟には数人もの三つ目人間がいて襲いかかりました。 実は小僧が仏具屋の主人や店員たちに三つ目人間に成りすましてもらったのです。
三つ目小僧と併せて覚えたい言葉・用語
置行堀(おいてけぼり)
本所七不思議の一つ。堀から「置いてけ」という声がするという。
三目錐(さんもくぎり)
工具の錐の一種。略して「三目」という。
小僧稲荷(こぞういなり)
高厳寺がタヌキを祀った稲荷。巣鴨町に移転した。