土佐で傘ほどの火が数十の星のような光へ弾け、低い空へ広がるとされた野の怪火。

野火とはどんな妖怪か
野火は、土佐国長岡郡、現在の高知県中東部に伝わる怪火です。傘ほどの火の玉が突然弾け、数十の星のような光へ分かれ、地上から四、五尺ほどの低い空に広がるとされます。草履へ唾を付けると招けるとも語られました。野焼きなどの一般名詞「野火」とは別に、分裂して低空を舞う光へ与えられた土地固有の名です。
野火の漢字表記と読み方
読みは「のび」です。同じ「野火」の字は野焼きや野原の火にも使われますが、土佐の伝承では、一つの火から多数の光へ分かれる怪火を指します。
野火(のび)
土佐国長岡郡の怪火に用いられた表記。
野火 (妖怪)
一般名詞の野火と区別するため、説明語を添えた表記。
野火の姿と特徴
最初は傘ほどの丸い火で、弾けた後は多数の星のような小光になります。低い位置へ広く散る点が特徴です。現在の長さへ換算しても、口承上の目安にとどまります。
野火の伝承物語
一つの火が数十へ分かれる
最初に現れるのは傘ほどの大きさの火です。それが突然弾け、数十の小さな光へ変わります。一つの火の玉と、星のように散った後の光という二段階の姿が、野火の大きな特徴です。
伝承の「数十」は、数えた結果ではなく見た印象です。多数へ分裂したように見えたことを強調する語りです。
低い空を星のように舞う
分かれた光は星にたとえられますが、飛ぶのは低い場所です。地上から四、五尺ほどの高さへ広がり、低い場所を舞うとされます。
四、五尺は約一・二〜一・五メートルです。ただし口承に現れる目安の数字です。人に近い低空へ多数の光が散るため、遠くの星とは異なる不気味さを持ちます。
草履へ唾を付ける招き方
野火は偶然目にするだけでなく、草履へ唾を付けると招けるとも語られました。すると光が人の頭上へ来て舞うとされます。
この行為は、唾や履物に特別な働きを認めた俗信の一例です。野火の伝承で特徴的なのは、追い払う方法ではなく、自分の近くへ呼び寄せる方法が伝わっている点です。
野火の伝承地域
伝承地は土佐国長岡郡です。旧郡域は現在の南国市を中心に香美市・香南市・高知市・大豊町などへまたがります。
野火の正体と考えられているもの
野火の正体を特定の自然現象とした同時代の観測記録は確認できません。伝承としては、傘ほどの一つの火が数十へ分かれること、地上四、五尺の低空を舞うこと、草履と唾で招けることが一組になっています。
野火をめぐる妖怪のつながり
野火が記録された資料
『近世土佐妖怪資料』は、土佐の怪異をまとめた民俗資料です。野火の記述では、単に「火が見えた」とするのではなく、最初の大きさ、分裂する数、地面からの高さ、招き方までが一続きに語られています。
傘ほどの火が数十の星のような光へ弾けるという変化は、土佐の野火を他の怪火から見分ける手掛かりです。また、草履へ唾を付けると頭上へ来るという話は、人が怪火へ働きかける俗信を伝えます。野焼きや山火事を指す一般名詞の野火とは、同じ表記でも内容が異なります。
野火が記録された原典・記録
広江清編『近世土佐妖怪資料』
土佐の妖怪伝承を集めた土佐民俗叢書第6巻。野火の姿と招き方を確認する基礎資料です。
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野火についてよくある質問
野火とはどんな妖怪ですか。
土佐国長岡郡に伝わる怪火です。傘ほどの一つの火が弾け、数十の星のような光へ分かれ、地上四、五尺ほどの低い空を舞うとされます。
野火は何と読みますか。
「のび」と読みます。野焼きなどを指す一般名詞と同じ表記ですが、伝承では一つから多数へ分裂する怪火の名です。
野火はどの資料にありますか。
広江清編『近世土佐妖怪資料』に、土佐国長岡郡の怪火として収められています。傘ほどの火、分裂後の光、低空を舞う高さ、草履で招く方法が記録の要点です。
野火の正体は分かっていますか。
分かっていません。記録にあるのは、一つの火が多数へ分かれて低空を舞う姿と、草履へ唾を付けて頭上へ招くという俗信です。
野火と併せて覚えたい言葉・用語
野火(のび)
土佐で傘ほどの火が数十の星のような光へ弾け、低い空へ広がるとされた野の怪火。
長岡郡(ながおかぐん)
土佐国にあった郡。野火の伝承地として記録され、旧郡域は現在の南国市周辺へ広がる。
四、五尺(し、ごしゃく)
約一・二~一・五メートル。野火が地面から浮かぶ高さの目安として語られた。
野火の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。