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高知県

遊火(あそびび)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

遊火  / アソビビ

火の妖怪 各地の伝説

土佐の三谷山に現れ、近づけば遠ざかり、一つから無数へ分かれて戻る青白い怪火。

遊火の姿を描いた図

京浜にけ 「桂浜(高知県高知市浦戸)」 2010年 / CC BY-SA 3.0 出典

遊火とはどんな妖怪か

遊火は、土佐の『南路志』にある怪火です。高知の三谷山に青白い火が現れ、一つだった光が数十へ分かれ、やがて一つへ戻ります。すぐ近くに見えたかと思えば遠くへ移り、城下や海の上まで瞬く間に場所を変えました。

人を焼く火でも、山奥へ誘って命を奪う火でもありません。追えば離れ、数を変え、山・城下・海上を行き来する。その捕まえられない動きが、火が自ら遊んでいるように見えた怪異です。

遊火の漢字表記と読み方

「あそびび」と読みます。火の出る場所を燃やすのではなく、人との距離や火の数を次々に変える動きが、遊ぶという名に表れています。

遊火(あそびび)

遠近と数を変えて遊ぶように見える火を表す名。

遊び火(あそびび)

送り仮名を添えた表記。

三谷山の遊火(みたにやまのあそびび)

『南路志』の怪異譚を紹介する高知県立図書館の案内に見える呼び方。

遊火の姿と特徴

暗い三谷山に浮かぶ青白い火です。群れのように増えた光が再び集まり、人や獣の輪郭を見せないまま、色、数、距離だけを変えます。

遊火の伝承記録

  1. 三谷山に、青白い火が一つ浮かぶ
  2. 一つの火が数十へ分かれ、また一つへ戻る
  3. 近くに見えた次の瞬間、城下や海の上へ移る
  4. 遊火は人を焼かず、追いつかせない
  5. 野火とは、火の動きと物語の中心が違う

三谷山に、青白い火が一つ浮かぶ

夜の三谷山に、青白い火が現れます。松明を持つ人の姿も、火をたく場所も見えません。暗い山の中で光だけが浮かび、じっと同じ所に留まらず、見る者との距離を変え始めます。

遊火は、遠くから目を引く小さな光です。遠くから目を引く一つの光が、追いかければ動き、見ているうちに形を変えるところから怪異が始まります。

一つの火が数十へ分かれ、また一つへ戻る

一つだった遊火は、突然いくつもの火へ分かれます。数十の光が暗がりへ散り、それぞれ別の火になったように見えた後、再び集まって元の一つへ戻ります

燃え広がる山火事なら、火は地面や木へ沿って残ります。遊火には燃え跡も煙もなく、数だけが増減します。分かれることと戻ることが一組になっているため、偶然見えた複数の明かりでは終わりません。

近くに見えた次の瞬間、城下や海の上へ移る

遊火は、手が届きそうな近さに見えたかと思うと、次の瞬間には遠くへ離れます。山の中だけをさまようのではなく、城下の上や海上へ移ったと語られました。人の足では追いつけない速さです。

近づけば逃げ、諦めて離れるとまた近く見える。どこを燃やしているかではなく、見る人との間合いを変え続けることが遊火の動きです。名前の「遊び」は、この追いつけない往復にあります。

遊火は人を焼かず、追いつかせない

遊火には、触れた人を焼く場面も、旅人を崖へ誘う結末もありません。危害を加えないから弱い怪異なのではなく、人が近づいて正体を確かめようとしても、その試みだけをすり抜けます

光は分かれ、戻り、遠ざかります。最後まで手元へ捕らえられず、何が燃えていたのかも残しません。遊火の話は退治や死で締める物語ではなく、山の火を見た人が不可解なまま見送る怪異です。

野火とは、火の動きと物語の中心が違う

土佐には野火など別の怪火も伝わります。どちらも夜の火というだけで同じものにすると、遊火の一つから数十へ分かれ、また一つへ戻る動きが失われます。

遊火の舞台は三谷山から見える山・城下・海上の広い眺めです。人への危害ではなく、遠近と数を自在に変える光の動きが、この怪火を見分ける印です。

遊火の伝承地域

地図は遊火が記された三谷山周辺を示します。火は城下や海上へも移るため、現在の建物や登山道を出現地点として案内することはできません。

三谷山周辺(みたにやましゅうへん)

遊火の伝承地域

地図で開く

三谷山周辺の所在地:高知県高知市三谷

三谷山から城下や海上へ動く怪火として『南路志』に記された地域。

示しているのは三谷山から見える範囲です。

遊火の正体と考えられているもの

遊火は、青白い光が山・城下・海上の間で数と距離を変える怪火です。人を襲う生き物ではなく、最後まで距離を測らせず、火元も残さない光の動きそのものが正体です。

遊火をめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

遊火が登場する作品

遊火は、追いつかせない火です。

一つの光が数十へ分かれ、また一つへ戻る。近づけば逃げ、諦めれば近く見える。 名前の「遊び」は、この追いつけない往復にあります。

土佐には野火など別の怪火も伝わります。どちらも夜の火というだけで同じにすると、分かれてまた戻るという遊火の動きが失われます。

遊火が登場する事典

日本妖怪大事典

村上健司による大部の事典。地方の小さな伝承まで、出典を添えて収めています。

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妖怪事典

村上健司による事典。全国の妖怪を採録元とともに整理しており、土地の伝承をたどる入口になります。

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遊火についてよくある質問

遊火とはどんな妖怪ですか。

土佐の三谷山に現れる青白い怪火です。一つから数十へ分かれてまた戻り、近くと遠く、山・城下・海上の間を移ります。

遊火は人を襲いますか。

『南路志』の遊火には、人を焼いたり命を奪ったりする結末はありません。近づこうとする人との距離を変え、正体を捕らえさせない火です。

遊火はどこに現れますか。

高知市の三谷山に結びつく怪火です。城下や海上へも見えたとされ、出現地点は広い範囲にわたります。

遊火と野火は同じですか。

別の呼び名です。遊火は分裂と合流、遠近の変化を繰り返すことが中心で、野火とは現れ方が違います。

遊火と併せて覚えたい言葉・用語

遊火(あそびび)

遠近と数を変え、遊ぶように見える土佐の怪火。

三谷山(みたにやま)

高知市三谷に結びつく山地。遊火の舞台。

南路志(なんろし)

土佐の地理、産物、寺社、怪異譚などを集めた近世の地誌。

遊火の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 高知市「歴史万華鏡 『南路志』」
  2. 国立国会図書館サーチ『南路志 闔国之部 上巻』