斬られた盗賊の魂とされた虫。後ろ手に縛られた姿に見えた。

山崎美成 「三養雑記 常元虫」 1839年 / パブリックドメイン 出典
常元虫とはどんな妖怪か
常元虫は、江戸の書物にある怪虫です。
江戸時代の書物『三養雑記』や『煙霞綺談』にあります。 浄元虫とも書きます。
話は、一人の侍から始まります。
天正年間、近江国志賀郡別保村(現・滋賀県大津市)にいた南蛇井源太左衛門という侍がいました。
戦乱で主家を離れて浪人となり、数百人の仲間を率い、諸国で盗賊や殺人など悪事の限りを尽くしていたといいます。
そして、改心します。
やがて老いた源太左衛門は人の勧めにより改心し、出家して常元(浄元)と改名し、故郷の別保村で暮していました。
常元虫の漢字表記と読み方
読みは「じょうげんむし」です。
人の名がそのまま虫の名になっています。
「常元」は、出家してからの名です。
出家して常元(浄元)と改名したとあります。
もとの名は、別にあります。
南蛇井源太左衛門です。
そして、虫の名は改心後の名で呼ばれました。
悪事を働いていたころの名ではありません。
村人たちはこれを常元の魂と考えて常元虫と呼んだといいます。
斬られたときの名で呼ばれています。
常元虫(じょうげんむし)
もっとも一般的な表記。
浄元虫(じょうげんむし)
出家名の字を当てた形。
常元屋敷(じょうげんやしき)
常元の住んでいた土地の呼び名。
常元虫の姿と特徴
常元虫の姿は、縛られた人に見えました。
常元の遺体を埋めた木の根元から、おびただしい数の虫が現れたといいます。
大量に出ました。
そして、形が話に合っていました。
それはまるで、人間が後ろ手に縛られたような姿に見えたといいます。
後ろ手に縛られた姿です。
常元は、縛られて斬られました。
見せしめのために木に縛りつけられたとあります。
そのままの形をしています。
やがて虫たちは羽化して飛び去ったといいます。
常元虫の伝承物語
改心しても捕えられた
源太左衛門は、やり直そうとしました。
老いた源太左衛門は人の勧めにより改心し、出家して常元(浄元)と改名し、故郷の別保村で暮していました。
故郷に戻りました。
ところが、時代が変わります。
だが慶長5年、諸国の姦族が捕えられ始め、常元も過去の多数の悪行を問われて捕えられました。
過去を問われました。
そして、見せしめにされます。
見せしめのために木に縛りつけられた常元は、見物人たちの前で罵詈雑言を吐きつつ斬罪に処されました。
罵りながら死にました。
遺体は木の根元に埋められたといいます。
その木が、次の話の場所になります。
木の根元から虫が出た
翌年の夏、虫が出ました。
翌年の夏、常元の遺体を埋めた木の根元から、おびただしい数の虫が現れました。
埋めた場所からです。
姿が、死に方と重なっていました。
それはまるで、人間が後ろ手に縛られたような姿に見えたといいます。
縛られた形です。
一度きりでは終わりませんでした。
やがて虫たちは羽化して飛び去りましたが、その後も毎年必ず同じ虫たちが現れました。
毎年です。
そこで、村人は名をつけます。
村人たちはこれを常元の魂と考えて常元虫と呼び、因果の怖ろしさを噂しあいました。
誰も住まなかった屋敷跡
常元虫の話には、土地の話がついています。
常元の住んでいた土地は常元屋敷と呼ばれました。
名が残りました。
そして、避けられます。
そこに家を建てた者は必ず災いに遭うといわれました。
必ず、とあります。
そのため、その地に住もうとする者は誰もいなかったといいます。
空き地になりました。
虫と土地の、二つが残っています。
虫は毎年出て、土地は使われませんでした。
因果の怖ろしさという言葉が、この話の締めくくりです。
悪事の記憶が、形になって残りました。
常元虫の伝承地域
常元虫は、近江国志賀郡別保村(現・滋賀県大津市)に伝わります。
南蛇井源太左衛門が戦乱で主家を離れて浪人となり、のちに故郷の別保村で暮していたとされます。
常元の住んでいた土地は常元屋敷と呼ばれ、そこに家を建てた者は必ず災いに遭うといわれました。
屋敷跡の現在地は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
常元虫の正体と考えられているもの
常元虫については、次のように整理できます。
一つめは、出どころです。江戸時代の書物『三養雑記』や『煙霞綺談』にある怪虫です。
二つめは、生前です。南蛇井源太左衛門は戦乱で主家を離れて浪人となり、数百人の仲間を率い、諸国で盗賊や殺人など悪事の限りを尽くしていたといいます。
三つめは、死に方です。見せしめのために木に縛りつけられた常元は、見物人たちの前で罵詈雑言を吐きつつ斬罪に処され、遺体は木の根元に埋められました。
四つめは、虫の姿です。翌年の夏、常元の遺体を埋めた木の根元から、おびただしい数の虫が現れ、人間が後ろ手に縛られたような姿に見えたといいます。
五つめは、屋敷跡です。常元の住んでいた土地は常元屋敷と呼ばれ、そこに家を建てた者は必ず災いに遭うといわれ、その地に住もうとする者は誰もいなかったといいます。
この虫は、死に方の形をしています。 縛られた姿のまま、毎年出ました。
常元虫をめぐる妖怪のつながり
常元虫が登場する作品
常元虫は、死に方が形になった虫です。
後ろ手に縛られた姿で、毎年同じ木の根元から現れました。
資料は江戸の随筆に集まります。
常元虫が登場する古典
三養雑記
江戸時代の随筆。常元虫を記します。
煙霞綺談
江戸時代の随筆。同じ話を載せます。
常元虫が登場する研究
常元虫が登場する漫画・アニメ
怨霊を扱う作品
処刑された者が虫になる話として取り上げられます。
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常元虫についてよくある質問
常元虫とは何ですか。
江戸時代の書物『三養雑記』や『煙霞綺談』にある怪虫です。浄元虫とも書きます。
常元とは誰ですか。
近江国志賀郡別保村にいた南蛇井源太左衛門という侍で、諸国で盗賊や殺人など悪事の限りを尽くし、のちに出家して常元と改名しました。
どんな虫ですか。
人間が後ろ手に縛られたような姿に見えたといいます。常元は見せしめのために木に縛りつけられて斬られました。
屋敷跡はどうなりましたか。
そこに家を建てた者は必ず災いに遭うといわれ、その地に住もうとする者は誰もいなかったといいます。
常元虫と併せて覚えたい言葉・用語
天正(てんしょう)
1573年から1592年までの年号。
浪人(ろうにん)
主家を離れた武士。
羽化(うか)
さなぎから成虫になること。