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全国に伝わるもの

がしゃどくろとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

がしゃどくろ  / ガシャドクロ

幽霊と霊 現代の噂話

死者の骨が集まったと説明される巨大な骸骨。戦後の妖怪図鑑で広まった。

がしゃどくろの姿を描いた図

歌川国芳 「相馬の古内裏」 江戸時代 / パブリックドメイン 出典

がしゃどくろとはどんな妖怪か

がしゃどくろは、葬られなかった骨が集まった骸骨です。戦や飢えで死んだ者たちの骨と怨みが寄り集まったとされます。

夜中にガチガチと音を立てて歩き、生きた人間を見つけると襲いかかり、握りつぶして食べるといいます。

ただし、がしゃどくろを古い土地伝承の妖怪として扱うことはできません。 国立国会図書館の書誌で確認できる1960年代後半以降の児童向け怪奇本や、1972年刊の『日本妖怪図鑑』など、戦後の出版物を通じて姿と説明が広まった妖怪です。

「いつ、誰が作ったか」については複数の解説がありますが、公開された書誌だけでは初出記事の本文と成立事情のすべてを確定できません。確認できるのは、1960年代後半以降の出版物に名が現れ、1970年代の妖怪図鑑を通じて巨大な骸骨の像が広まったことです。

がしゃどくろの漢字表記と読み方

読みは「がしゃどくろ」です。

名前は、骨がぶつかる「がしゃがしゃ」という擬音を連想させます。公開された公的資料には命名者による語源説明がなく、名前の由来は確定していません。

髑髏(どくろ)はしゃれこうべ、頭蓋骨のことです。

漢字表記の「餓者髑髏」は、後に意味を取りやすく当てられたものです。現在広く見られる、音に漢字を当てた表記です。

がしゃどくろ(がしゃどくろ)

現在もっとも広く使われる表記。戦後の出版物でもこの形が用いられた。

餓者髑髏(がしゃどくろ)

「餓えた者の髑髏」を連想させる漢字表記。古い伝承名とは確認できない。

がしゃ髑髏(がしゃどくろ)

交ぜ書きの表記。

がしゃどくろの姿と特徴

がしゃどくろの姿は、次のように語られます。

全体 … 人の何十倍もある巨大な骸骨。
… 歩くたびにガチガチと鳴る。
… 眼窩の暗い骸骨として描かれるほか、目玉を伴う図もあります。
行動 … 夜中にさまよい歩き、人を見つけると握りつぶして食べる。

巨大骸骨のイメージを考えるうえで欠かせないのが、浮世絵師歌川国芳の『相馬の古内裏』です。千葉市美術館は、巨大な骸骨が三枚続きの画面を横断する大胆な描き方を、国芳の創意として紹介しています。

ただし、国芳の絵に「がしゃどくろ」という名はありません。 絵が表すのは滝夜叉姫と大宅太郎光国の物語です。江戸時代の巨大骸骨の図像と、戦後に広まった妖怪名は成立した時期が異なります。

がしゃどくろの成立と広まり

  1. 戦後の出版物で形になった巨大骸骨
  2. 『相馬の古内裏』と、がしゃどくろを分けて見る
  3. 古い髑髏説話は、同じ名前の伝承ではない

戦後の出版物で形になった巨大骸骨

がしゃどくろは、土地ごとの採話記録をたどる妖怪というより、戦後の雑誌や児童書をたどる妖怪です。

国立国会図書館には、講談社の雑誌『別冊少女フレンド』、山内重昭『世界のモンスター』(秋田書店、1968年)、佐藤有文編『日本妖怪図鑑』(立風書房、1972年)の書誌が残っています。これらは、がしゃどくろが広まった時代の出版文化を確かめる手がかりです。

『別冊少女フレンド』1966年11月号は初出候補として挙げられます。ただし、国立国会図書館の公開書誌で確認できるのは雑誌の存在と刊行情報で、当該記事の全文や命名の経緯までは公開されていません。現在の説明が一度に完成したのか、複数の出版物を通じて整ったのかは確定していません。

『相馬の古内裏』と、がしゃどくろを分けて見る

がしゃどくろのイメージと重ねて紹介される作品に、歌川国芳の『相馬の古内裏』があります。

歌川国芳の『相馬の古内裏』は、三枚続きの浮世絵です。滝夜叉姫が呼び出した骸骨が、御簾の向こうから顔を出して武士に迫る場面を描きます。

千葉市美術館の収蔵品解説が示す通り、この作品では巨大な骸骨が三枚続きの各画面を横断します。一枚ごとの枠に収まらない描き方が、骸骨の大きさと迫力を際立たせています。

作品名にも物語にも「がしゃどくろ」という名はありません。江戸時代の『相馬の古内裏』は巨大骸骨の図像を考える重要な作品ですが、がしゃどくろという妖怪名が江戸時代に存在した証拠にはなりません。

古い髑髏説話は、同じ名前の伝承ではない

日本の古い説話には、声を発する髑髏や、死者の骨を弔う話があります。だからといって、それらをすべてがしゃどくろの物語にまとめることはできません。

古い髑髏説話には、弔われない骨が人へ訴える話や、死者の骨を供養した人が報われる話があります。しかし「がしゃどくろ」という名称、巨大な全身骨格、骨の集合体という三点は一致しません。

がしゃどくろは、古い髑髏説話そのものではなく、戦後の妖怪図鑑が死者の怨みという説明と巨大骸骨の図像を結びつけて形づくった妖怪です。

がしゃどくろの伝承地域

がしゃどくろは、特定の土地で採録された伝承としては確認できません。

戦後の出版物で広まった妖怪のため、伝承地を示す公的な採話記録や、名称に対応する塚・祠は見つかっていません。

姿のもとになった歌川国芳の『相馬の古内裏』は、平将門の遺児・滝夜叉姫の物語を題材としています。そのため茨城県や千葉県の将門ゆかりの地と結びつけて語られることがありますが、これは絵の題材にまつわる話です。

『相馬の古内裏』の物語は平将門と滝夜叉姫に結びつきます。がしゃどくろ自体の採録地は分かっていません。がしゃどくろに対応する地域伝承・塚・祠は確認されていないため、伝承地域として示せる地点はありません。

がしゃどくろの正体と考えられているもの

がしゃどくろは、古い地域伝承ではなく、戦後の出版文化のなかで輪郭を得た妖怪です。

1960年代後半の怪奇児童書、1972年の『日本妖怪図鑑』、そして巨大骸骨を描いた国芳の浮世絵。確認できる資料を年代順に置くと、現在の姿が一つの古典からそのまま伝わったのではないことが分かります。

では、なぜ定着したのでしょうか。

一つめは、姿の力です。歌川国芳の『相馬の古内裏』という迫力ある巨大骸骨の絵が、後世の紹介でがしゃどくろのイメージと重ねられました。

二つめは、説明の分かりやすさです。葬られなかった死者の骨と怨みが集まるという筋は、巨大な骸骨の姿に理由を与えます。

三つめは、名前の響きです。がしゃがしゃという音がそのまま名になっており、聞いた瞬間に姿が想像できます。

この三つが結びつき、古い土地伝承を持たなくても、一目で分かる現代の妖怪像として定着しました。江戸時代の絵と、戦後に広まった名称は成立時期が異なります。

がしゃどくろをめぐる妖怪のつながり

がしゃどくろが登場する作品

『別冊少女フレンド』1966年11月号、『世界のモンスター』、『日本妖怪図鑑』は、がしゃどくろが戦後の出版物を通じて広まった経路をたどる資料です。

歌川国芳の『相馬の古内裏』は、それより一世紀以上前の浮世絵です。巨大骸骨の視覚的な源流として並べて語られます。作品内では別の名で呼ばれています。

がしゃどくろが登場する成立をたどる出版物

別冊少女フレンド 1966年11月号

がしゃどくろの初出候補として挙げられる号。公開書誌では雑誌の刊行情報を確認できます。

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世界怪奇スリラー全集2 世界のモンスター

1968年、秋田書店刊。がしゃどくろが広まり始めた時期の怪奇児童書です。

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日本妖怪図鑑

佐藤有文編、1972年刊。巨大骸骨の図像とともに、がしゃどくろの姿を広く印象づけました。

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がしゃどくろが登場する図像を比べる

相馬の古内裏(歌川国芳)

巨大骸骨の図像として一緒に語られますが、作品自体は滝夜叉姫の物語を描いた浮世絵です。

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がしゃどくろについてよくある質問

がしゃどくろとは何ですか。

葬られなかった死者の骨と怨みが集まって巨大な骸骨になったとされる妖怪です。昭和中期に作られたもので、古い伝承はありません。

がしゃどくろは昔から伝わる妖怪ですか。

古い地域伝承としては確認されていません。1960年代後半以降の怪奇児童書や1972年刊の『日本妖怪図鑑』など、戦後の出版物を通じて広まりました。

あの巨大な骸骨の絵は何ですか。

歌川国芳の浮世絵『相馬の古内裏』です。滝夜叉姫の物語を描いた作品で、絵自体に「がしゃどくろ」という名はありません。

「餓者髑髏」という漢字は正しいですか。

後から当てられた字です。本来、この妖怪に漢字表記はありませんでした。

がしゃどくろに会える場所はありますか。

特定の伝承地を示す採話記録は確認されていません。『相馬の古内裏』が題材とする将門伝説の土地が各地にあります。がしゃどくろ自体の伝承地は分かっていません。

がしゃどくろと併せて覚えたい言葉・用語

相馬の古内裏(そうまのふるだいり)

歌川国芳の浮世絵。巨大な骸骨を描き、がしゃどくろの姿のもとになった。

滝夜叉姫(たきやしゃひめ)

平将門の遺児とされる物語上の人物。骸骨を呼び出す。

髑髏(どくろ)

しゃれこうべ。頭蓋骨。

日本霊異記(にほんりょういき)

平安初期の説話集。髑髏の恩返しの話が載るが、がしゃどくろとは無関係。

がしゃどくろの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館 NDLサーチ「別冊少女フレンド」
  2. 国立国会図書館 NDLサーチ「世界のモンスター」
  3. 国立国会図書館 NDLサーチ「日本妖怪図鑑」
  4. 国立国会図書館リサーチ・ナビ「古典籍資料室所蔵の錦絵(浮世絵)」