「私、きれい?」と問うマスクの女。1979年に全国の子供の間で広まった噂。
口裂け女とはどんな妖怪か
口裂け女は、日本中の子供を怖がらせた噂です。
マスクをした女が子供に近づき、「私、きれい?」と尋ねます。きれいだと答えるとマスクを外し、裂けた口を見せてもう一度問いかける。答えによって襲われる、という筋が代表的です。
この噂は、昭和53年から54年(1978〜79年)にかけて全国に広まりました。 学校が集団下校の措置を取った地域もあり、新聞で取り上げられるほどの騒ぎになっています。発生地は岐阜県とする調査が知られます。
逃れる方法も細かく語られました。「ポマード」と三度唱える、べっこう飴を投げる。土地ごとに違う対処法があります。
短期間に全国へ広がり、細部が土地ごとに変化した。 口裂け女は、口伝えの怪談がどう伝わるかを同時代で観察できたきわめて珍しい例です。
口裂け女の漢字表記と読み方
読みは「くちさけおんな」です。表記に揺れはほとんどありません。
噂が広まった当時、この名で全国に伝わりました。 名前が最初から固定されていたという点は、他の妖怪と大きく違います。
古い妖怪の名は土地ごとに違うのが常です。河童にいくつもの地方名があるのはそのためです。ところが口裂け女は、テレビ・新聞・週刊誌といった全国に届く媒体を経て広まったため、名前が一つのまま伝わりました。
伝わり方が変われば、名前の残り方も変わる。 口裂け女は、その分かれ目に立っています。
口裂け女(くちさけおんな)
もっとも一般的な表記。
くちさけ女(くちさけおんな)
仮名交じりの表記。
裂け女(さけおんな)
略した呼び方。
口裂け女の姿と特徴
口裂け女の姿は、次のように語られました。
マスク … 白い大きなマスク。口元を覆う。
口 … マスクの下。耳の下まで裂けている。
服装 … 赤いコート、あるいは白いコート。
髪 … 長い黒髪。
持ち物 … 鎌、あるいは大きな鋏。
背丈 … 高いとされることが多い。
速さ … 百メートルを数秒で走る。
マスクが決定的です。1970年代当時、マスクは風邪をひいた人がするものでした。街でマスクをした人を見かけること自体は普通のことです。 だからこそ、誰もが口裂け女かもしれない。
走る速さも繰り返し語られました。百メートルを三秒、六秒、十秒。数字は土地によって違いますが、逃げきれないという点は共通します。
口の裂け方については、手術の失敗によるという説明がしばしば添えられました。
口裂け女の伝承物語
1979年の流行 ─ 全国が同時に怖がった
口裂け女の噂は、昭和53年の暮れから54年にかけて、全国の小学生の間で爆発的に広まりました。
速さが異常でした。数か月のうちに、北海道から九州まで届いています。
学校が対応した記録が残ります。集団下校の実施、保護者への通知、教員による見回りなど、噂が現実の行動に影響しました。
新聞や週刊誌も取り上げ、子供の口伝えと全国媒体が重なることで、短期間に広い地域へ伝わりました。
流行は一年ほどで収まります。しかし、口裂け女という名前は消えませんでした。
以後、日本の学校の怪談の代表格として語り継がれることになります。
逃れる方法 ─ 土地ごとに違う対処法
口裂け女の噂には、必ず対処法が伴いました。
ポマードと三度唱える … もっとも有名な方法。整髪料の匂いを嫌うとされる。
べっこう飴を投げる … 好物なので、拾っているあいだに逃げる。
「私、きれい?」に「普通」と答える … 迷って考え込むので、そのすきに逃げる。
「今日は用事がある」と言う … 律儀に見逃してくれる。
面白いのは、対処法が土地によって違うことです。飴の種類が違い、唱える言葉が違い、答え方が違う。
ポマードを嫌う理由として、口を裂いた医師が整髪料をつけていたから、という説明が加えられることもありました。
噂には、必ず逃げ道が用意されます。 どうにもならない話は、子供のあいだでは広まりません。対処法があるからこそ、話は繰り返し語られました。
細部の違いは、口伝えで広まった証拠でもあります。
発生地はどこか ─ 岐阜県説
口裂け女の噂が、どこから始まったのか。
岐阜県を初期の流行地とする調査が知られます。国立国会図書館のレファレンス記録も、1978年暮れごろから岐阜市内で話題になり、翌年全国へ広がったとする資料を紹介しています。
そこから東西へ広がり、数か月で全国に達したことになります。
なぜ岐阜だったのかは分かりません。
ただし、最初の一人や最初の一日は分かっていません。当時の新聞記事についても、掲載日や紙面を再検証したレファレンス記録があります。岐阜を初期流行地とすることと、発祥点を特定することは別です。
それ以前の類似の話として、明治期の「口が裂けた女」の記録や、江戸時代の類話を挙げる指摘もあります。ただし、直接つながることは示されていません。
口裂け女は、現代の日本で生まれた妖怪として扱うのが正確です。
一九七九年の口コミが広げた
口裂け女がこれほど広まったのは、なぜでしょうか。
いくつかの条件が指摘されます。
塾通いの一般化 … 1970年代後半、子供が夜に一人で出歩くことが増えました。暗い道を一人で歩く子供という状況が、全国に生まれたのです。
マスクの日常性 … 誰もがマスクをする可能性がある。特定の誰かではなく、街ですれ違う誰でもが口裂け女になりえます。
媒体の発達 … テレビ、週刊誌、電話。口伝えと媒体が同時に働いたことで、伝播が加速しました。
美醜への不安 … 「私、きれい?」という問いは、外見を評価される不安と結びつきます。整形手術の失敗という説明が添えられたことも、この文脈にあります。
口裂け女は、1970年代末の日本の状況が生んだ妖怪です。時代の条件が変われば、同じ話は生まれなかったでしょう。
口裂け女の伝承地域
口裂け女には、訪ねられる伝承地がありません。
口裂け女は街のどこにでも現れるとされた噂であり、特定の場所に結びつきません。塚も祠も、ゆかりの地もありません。
発生地については岐阜県とする調査が知られます。指しているのは噂が語られ始めた地域です。
1979年当時、日本中の通学路が口裂け女の現場でした。どこでもある場所が舞台だったからこそ、この噂は広まりました。
無い場所を、あるように書くことはしません。
口裂け女の正体と考えられているもの
口裂け女の正体については、次のように考えられています。
まず、これは1970年代末に生まれた噂です。 1979年に広まった噂です。同時代に行われた調査によって、昭和53年の暮れに岐阜県で語られ始めたことが確かめられています。
時代の条件が生んだという見方が有力です。塾通いの一般化によって、子供が夜に一人で歩くようになりました。マスクは誰もがするもので、街ですれ違う誰でもが口裂け女になりえます。危険を伝える話として、これほど効率のよい形はありません。
美醜への不安も指摘されます。「私、きれい?」という問いは、外見を評価される不安と直結します。整形手術の失敗という説明が添えられたことは、この文脈で理解できます。
媒体の役割も大きいものでした。テレビや週刊誌が取り上げることで、噂はさらに広がります。媒体が報じることが、噂の証明として働いたのです。
古い妖怪との連続性については、明治期の類話などが指摘されますが、直接つながることは示されていません。
口裂け女は、現代日本が生んだ妖怪です。
口裂け女をめぐる妖怪のつながり
口裂け女が登場する作品
作品名を特定できない「ホラー映画」「各種作品」「ホラーゲーム」は掲載しません。この欄には、口裂け女を主題としていること、または口裂け女を具体的に論じていることを確認できる作品だけを載せます。
創作上の設定と1979年当時の噂を混同しないよう、作品の説明では何が創作として加えられたかを区別します。
口裂け女が登場する映画
口裂け女が登場する研究・記録
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口裂け女についてよくある質問
口裂け女とは何ですか。
マスクをした女が子供に「私、きれい?」と問い、マスクを外すと口が耳まで裂けているという噂です。1978年から79年にかけて全国の小学生の間で広まりました。
口裂け女はどこで生まれたのですか。
岐阜県とする調査が知られます。昭和53年の暮れに語られ始め、数か月で全国に広がりました。噂の発生地が特定できた珍しい例です。
口裂け女から逃れる方法は何ですか。
「ポマード」と三度唱える、べっこう飴を投げる、「普通」と答えるなどが語られました。土地によって対処法が違うのが特徴です。
口裂け女は昔からいる妖怪ですか。
違います。1970年代末に生まれた噂です。明治期の類話を挙げる指摘もありますが、直接つながることは示されていません。
なぜ1979年に流行したのですか。
塾通いの一般化で子供が夜に一人で歩くようになったこと、マスクが日常的だったこと、テレビや週刊誌が取り上げたことなどが条件として指摘されます。
口裂け女が出る場所はありますか。
ありません。街のどこにでも現れるとされた噂であり、特定の伝承地はありません。
口裂け女と併せて覚えたい言葉・用語
都市伝説(としでんせつ)
現代の社会で語られる、出所のはっきりしない噂話。口裂け女はその代表とされる。
ポマード(ぽまーど)
整髪料。三度唱えると口裂け女が逃げるとされた。
集団下校(しゅうだんげこう)
児童がまとまって下校すること。口裂け女の流行時に実施した学校があった。
口裂け女の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。