首を失ったまま夜の道を走り続けるという亡霊。各地で語られる現代の怪談。

首なしライダーとはどんな妖怪か
首なしライダーは、首の無い乗り手です。
頭部を欠損した二輪車の乗り手として描写される亡霊の名であり、それにまつわる話の題名でもあります。
都市伝説、つまり近い時代に生まれて広まった噂話の一種で、同じ話が日本各地に見られます。
話の骨格は決まっています。
ある道路を横断するようにピアノ線が張ってあり、そこに猛スピードの二輪車で突っ込んだ乗り手は首をはねられてしまった。
しかし、首のない体を乗せたまま、車体はしばらく走り続けた。
亡霊となった彼は、夜ごと、あるいは死亡時刻や命日に、その道路を猛スピードでさまよい続けている。
首が切断される原因は、道路標識やガードレール、トラックなどからの落下物とされることもあります。
首なしライダーの漢字表記と読み方
読みは「くびなしらいだー」です。
「ライダー」は乗り手を意味する外来の語です。二輪車の運転者だけでなく、馬などの動物に乗る騎手も指します。
そのため、首の無い乗り手の話は二輪車に限りません。
首なし騎馬武者、首無し武者は、戦国時代から言い伝えられてきた怪異です。
つまり「首なしライダー」という呼び名は新しくても、首の無い乗り手という発想そのものは古いということになります。
なお、首の無い亡霊の話は外国にも伝わります。アイルランドの首なし妖精デュラハンや、ニューヨーク北部のスリーピー・ホロウの話も古くから伝えられています。
首なしライダー(くびなしらいだー)
もっとも一般的な呼び方。
首なし暴走族(くびなしぼうそうぞく)
福岡県英彦山に伝わる集団版の呼び方。
首無し武者(くびなしむしゃ)
戦国時代から伝わる、馬に乗る首なしの亡霊。
首なしライダーの姿と特徴
首なしライダーの姿は、名のとおりです。
体 … 二輪車にまたがっている。
首 … 無い。
速さ … 猛スピード。
現れる時 … 夜ごと、あるいは死亡時刻・命日。
現れる場所 … 事故があったとされる道路。
する事 … 自分を殺した相手、あるいは切り落とされた自分の頭部を探して走り回る。
首が無いことだけが、この怪異のすべてです。 ほかに特徴はありません。
福岡県の英彦山の山道には、首なしライダーの集団が爆走する「首なし暴走族」の話もあります。
また、刎ねられた首が飛んで来るというものもあります。これはほとんどが、二輪車が登場するのとは別の場所に、断末魔の叫びとともに飛んでくるという形です。その際、兜の有無は話ごとに変わります。
姿の説明がこれだけ単純であることが、この話が全国に広まった理由の一つと考えられます。
誰でも思い浮かべられる姿です。
首なしライダーの伝承物語
ピアノ線を張ったのは誰か
首なしライダーの話の中心には、道路に張られた線があります。
ピアノ線、あるいはワイヤーやロープ。呼び方は語り手によって変わります。
そして、張った者は話ごとに入れ替わります。
変質者
愉快犯
暴走族
近隣住民
この四つが、語られる犯人の主な顔ぶれです。
このうち「近隣住民」という説明には、実際の出来事との結び付きが指摘されています。
この都市伝説は、暴走族に悩まされた近隣住民が妨害を目的に道路に渡したロープで二輪車が転倒するという実際の事故が発端であるという説があります。
張った者は話ごとに変わる
原型となった事故については様々な説がありますが、実はただ偶然そこで発生した二輪車の死亡事故が、おもしろおかしく伝えられただけという説もあります。
なお、線を張って車両の転倒を狙う仕掛けは、古くから存在します。
映画『大脱走』にも、主人公が敵兵から二輪車を奪う場面にこの描写があります。
戦いの場では、走る車両の上から首を出した兵の首を切断する目的でワイヤーを張ることがあります。 これに対抗するため、陸上自衛隊の軽装甲機動車の一部にはワイヤーカッターが取り付けられています。
話の中の仕掛けは、現実に存在するものです。
いつから語られ始めたのか
首なしライダーの噂が、いつ広まり始めたのか。これについては手がかりがあります。
先駆的な使用例として、一九七六年に日本の放送局で放映された海外の連続番組の一挿話があります。夜の街を舞台とする怪奇物で、爆走する首なしの乗り手が登場するものでした。
そして、噂が本格的に広まったのは、一九七四年にオーストラリアで公開された映画『マッドストーン』からだといわれます。 日本での公開は一九八一年です。
この映画には、道路に仕掛けたピアノ線で乗り手の首を刎ね飛ばす場面があります。
これが各地の二輪車事故にまつわる噂と結びついて広まったとも言われます。
つまり、映画の場面が先にあり、噂が後から付いた可能性があります。
暴走族の時代と重なる
ほかにも成立についての説があります。
黒いヘルメットの見間違いとする説 … 真っ暗な道で黒い全面型のヘルメットをかぶった乗り手を、首なしライダーと誤認したことが発祥とするものです。実際、黒い全面型のヘルメットをかぶって運転する乗り手には、自分が首なしライダーだと誤認された体験談を話す者もいます。
わざとやる者がいるとする説 … これを狙い、わざと夜間に黒い、それも光の反射を抑えるように加工したヘルメットをかぶる愉快犯的な乗り手もいるといいます。
前傾姿勢の見間違いとする説 … 夜間に競走用の形の二輪車に、燃料タンクの上に伏せた体勢で運転していた乗り手を、目撃者が首なしライダーと見間違えたのではないかという意見もあります。
首の無い乗り手は、はるかに古い
「首なしライダー」という呼び名は新しいものです。しかし、首の無い乗り手という発想は、はるかに古くからあります。
「ライダー」は乗り手を意味する語で、二輪車の運転者だけでなく、馬などの動物に乗る騎手も指します。
日本では、首の無い騎手の亡霊が、戦国時代から言い伝えられてきました。
首なし騎馬武者
首無し武者
戦の場で首を取られた武者が、そのまま馬に乗って現れるという話です。
首を取ることが戦の作法であった時代に、首を取られた者の亡霊が語られるのは自然なことでした。
デュラハンと重なる
日本の外にも同じ形の話があります。
アイルランドの首なし妖精デュラハンは、首を小脇に抱えて馬車を駆るとされます。
ニューヨーク北部のスリーピー・ホロウの話も、首の無い騎手が登場するものとして古くから伝えられています。
このほか、単に首のない亡霊の例は南米の首なし女など、数え切れないほどあります。
乗り物が馬から二輪車に変わっただけで、話の骨格は変わっていません。
首なしライダーは、新しい話であると同時に、たいへん古い話でもあります。
首なしライダーの伝承地域
首なしライダーは、日本各地で語られています。
「うちの近くの道に出る」という形で語られるのが、この種の話の特徴です。特定の道路に結び付いた話でありながら、その道路は語り手ごとに変わります。
地名がはっきり語られる例として、福岡県の英彦山の山道に「首なし暴走族」の話があります。
どこの道の話かは、語られるたびに変わります。 そのため、この図鑑では一つの県に絞らず「全国」として扱います。
首なしライダーを供養する場所は確かめられませんでした。
英彦山の山道(ひこさんのやまみち)
首なし暴走族が語られる地
英彦山の山道の所在地:福岡県田川郡添田町
首なしライダーの集団が爆走する「首なし暴走族」の話が語られる場所です。
一体ではなく集団で現れるという点が、ほかの土地の話と違います。
同じ形の話が日本各地にあるなかで、地名がはっきり語られる数少ない例です。
山道であることが、この話の舞台としてふさわしいとされます。
示しているのは噂の広まった範囲です。
首なしライダーの正体と考えられているもの
首なしライダーの正体については、次のように考えられています。
実際の事故がもとになったとする見方があります。暴走族に悩まされた近隣住民が妨害のために道路に渡したロープで二輪車が転倒したという事故が発端とする説です。ただし、単に偶然そこで起きた死亡事故がおもしろおかしく伝えられただけという説もあります。
映画から広まったとする見方も有力です。一九七四年にオーストラリアで公開された映画には、道路に仕掛けたピアノ線で乗り手の首を刎ね飛ばす場面があり、これが各地の事故の噂と結びついて広まったといわれます。
見間違いとする見方もあります。真っ暗な道で黒い全面型のヘルメットをかぶった乗り手や、燃料タンクに伏せた姿勢の乗り手が、首なしに見えたというものです。
古い怪異が形を変えたものとする見方も成り立ちます。首なし騎馬武者は戦国時代から言い伝えられており、乗り物が馬から二輪車に変わっただけとも読めます。
速さへの恐れを語る話とする見方もあります。猛スピードで走ることの危うさが、この話の核にあります。
どれか一つに決めることはできません。 都市伝説は、複数の出どころが混ざり合って広まるものだからです。
首なしライダーをめぐる妖怪のつながり
首なしライダーが登場する作品
首なしライダーは、姿の説明が一言で済む怪異です。
首が無い。それだけで通じます。
この単純さが、日本各地への広がりを支えました。 語り手が細部を自由に足せるからです。
線を張った犯人、事故のあった道路、走り回る理由。どれも語り手ごとに変わります。変わらないのは、首が無いという一点だけです。
首なしライダーが登場するそのほか
各地で語られる噂話
「うちの近くの道に出る」という形で、日本各地に伝わっています。
首なし騎馬武者の伝承
戦国時代から言い伝えられてきた、馬に乗る首なしの亡霊です。
首なしライダーが登場する漫画・アニメ
学校の怪談を扱う各種の作品
口裂け女やトイレの花子さんと並ぶ現代の怪異として登場します。
首なしライダーが登場するゲーム
現代の怪異を扱う各種の作品
夜の道路に現れる亡霊として描かれます。
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首なしライダーについてよくある質問
首なしライダーとは何ですか。
頭部を欠損した二輪車の乗り手として描写される亡霊の名であり、それにまつわる話の題名でもあります。都市伝説や怪談の一種で、同じ話が日本各地に見られます。
どうして首が無いのですか。
道路を横断するように張られたピアノ線に猛スピードで突っ込み、首をはねられたとされます。原因は道路標識やガードレール、トラックなどからの落下物とされることもあります。
なぜ走り回っているのですか。
自分を殺害した犯人、もしくは切り落とされた自分の頭部を捜しているためとされることが多くあります。夜ごと、あるいは死亡時刻や命日に現れるといいます。
いつから語られていますか。
噂が本格的に広まったのは、一九七四年にオーストラリアで公開された映画からだといわれます。この映画には道路に仕掛けたピアノ線で乗り手の首を刎ね飛ばす場面があり、これが各地の事故の噂と結びついたとされます。
同じような古い話はありますか。
あります。首の無い騎手の亡霊は、日本では戦国時代から「首なし騎馬武者」「首無し武者」として言い伝えられてきました。アイルランドの首なし妖精デュラハンなども古くから伝えられています。
首なしライダーと併せて覚えたい言葉・用語
都市伝説(としでんせつ)
近い時代に生まれて広まった噂話。出どころをたどれることがまれ。
首なし騎馬武者(くびなしきばむしゃ)
戦国時代から言い伝えられてきた、馬に乗る首なしの亡霊。
デュラハン(でゅらはん)
アイルランドの首なし妖精。古くから伝承に語られる。
首なし暴走族(くびなしぼうそうぞく)
福岡県英彦山の山道を集団で爆走するとされる話。